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リトラクタブルヘッドライト・ダブルライトの特徴と規制

更新日:2024年03月27日

リトラクタブルヘッドライトについて、その成り立ちや特徴、車の魅力、またデュアル(ダブル)型の特徴や法的な規制などを解説します。車の顔がどれも同じだった1930年代、斬新かつ前衛的なカーデザインを実現するために生まれた、リトラクタブルの耳寄りな情報を紹介します。

リトラクタブルヘッドライト・ダブルライトの特徴と規制

リトラクタブルヘッドライトの特徴について

車のヘッドライト(前照灯:ぜんしょうとう)は、走行中に進行方向を明るく照らして、ドライバーの視界を確保するためのパーツで、車体の前方に取り付けられています。

ヘッドライトは、車の夜間走行を可能にする装備として、また、道路を走行中に、他の車や歩行者などに対して、自車の存在を知らしめることで安全を確保する、自動車には必要不可欠な部品です。

かつて一世を風靡したリトラクタブルヘッドライト

このようなヘッドライトの種類として、「リトラクタブルヘッドライト」と呼ばれる装置が存在します。リトラクタブルヘッドライトは1930年代の車に初めて採用され、その独特の仕組みやオリジナリティーにあふれた多くのタイプが存在し、1970年代から80年代後半にかけて、世界各地でブームともいえる、盛り上がりを見せたことで知られています。

そのようなリトラクタブルヘッドライトについて、その成り立ちや特徴、車の魅力、またデュアル(ダブル)型の特徴や、法的な規制などを解説していきます。

ボディに収納(引き込み)可能なヘッドライト

リトラクタブルヘッドライトとは、自動車(主に四輪車。ごく稀に二輪車でも装備された事例があります)に装備されている、格納式(かくのうしき)のヘッドライトの事です。

リトラクタブルとは、英語で「(中に)引き込む」という意味の言葉です。そのため、リトラクタブルヘッドライトは、引き込み可能なヘッドライトという意味になります。

これは飛行機の着陸装置であるLanding Gear(ランディング・ギア)、いわゆる「脚(きゃく)」が、大昔には胴体または主翼の下部に固定されていた「固定脚(こていきゃく)」から、第二次世界大戦時に飛行中の空気抵抗を減らすため、脚を主翼の中に収納できる「引込脚(ひきこみきゃく:Retractable legs)」へと進化したのと同じです。

引き込み機構の違いから多くの種類がある

リトラクタブルヘッドライトとは、夜間の視界を確保するためのヘッドライトを、昼間など必要のない時は、車体の一部に「引き込んで」収納することができるヘッドライトの事です。

リトラクタブルヘッドライトには、その収納(引き込み)機構に多くのタイプが存在し、その独創的でユニークな発想から、現在でもマニアといった人達が存在し、注目を集めています。

また、そのリトラクタブル機構の違いから、それぞれ異なる名称がつけられており、ヒドゥンヘッドライト、コンシールドヘッドライト、ポップアップ式、セミ・リトラクタブル式といった多くの種類があり、マニアを始めとした人々を大いににぎわせています。

カーデザイナーを悩ませてきたヘッドライトの存在

車のヘッドライトにリトラクタブル機構が誕生した背景には、それぞれ社会的な事情や、車としての機能性など多くの理由がありますが、最初はおそらく、自動車のボディーデザインに、従来とは異なる多様性を求めた結果、生まれた物と考えます。

自動車のみでなく工業製品の開発においては、外観デザインを決めるデザイナーと、機能を具現するために研究を続けるエンジニアとの間に、しばしば意見の対立が起きるといいます。

それは車の開発においても顕著で、ユーザーにアピールする、スタイリングの美しさを求めるカーデザイナーと、あくまで性能の向上といった機能性を追求する、エンジニアとの間に摩擦が生じ、特に自動車の技術がまだ発展途上だった時代には、双方が要求する内容に折り合いがつかず、時には激しくいがみ合うこともあったといいます。

デザインの自由度を奪っていたヘッドライト

そうした中で、特にデザイナーたちを悩ませてきたのが、「ヘッドライトをいかに取り付けるか」という問題で、カーデザインにおける大きな制約のひとつだったと言われています。

現在の自動車では、車体を構成する部品の製造技術が、従来とは格段に進化したことから、ヘッドライトもボディの形状に合わせて、非常に複雑に成形された部品の量産が可能となり、デザイナーにとってはデザインの自由度が大幅に広がりました。

しかし、1980年代までは、ヘッドライトといえば丸型や角型といった、ほぼ定められた形状の部品しか存在しなかったため、デザイナーたちは大いに頭を悩ませました。なぜなら、せっかく流れるように美しいスタイリングのボディをデザインしても、ヘッドライトの取り付け方一つで、その苦労が全て台なしになってしまうからです。

車はどれもみな同じ顔

画像は1935年のアメリカ車、キャディラックV12エアロクーペですが、このように大きなヘッドライトが、巨大なラジエーターグリルの左右に取ってつけたみたいにして設置されています。自動車の普及が始まった1900年から1930年代までは、どの車もこれとよく似たデザインを採用していました。

どのメーカーの車もみな、同じような顔つきをしていた1930年代の中頃、従来にはない斬新なデザインの車を作りたいと考えた人が現れました。それが世界初のリトラクタブルヘッドライトを誕生させることとなります。

世界初のリトラクタブルヘッドライト車

世界初のリトラクタブルヘッドライトを採用した車は、1935年に登場したアメリカの「コード812」という車です。デザインしたのは、当時、弱冠25歳という若者、ゴードン・ビューリグ氏で、ヘッドライトを左右の前タイヤを収めるフェンダーの中に収納する、リトラクタブルヘッドライトが装備されています。

また、ヘッドライトだけでなくラジエーターまでもが、エンジンルームの中へすっぽりと収められていて、巨大なボンネットの下に多数刻まれたフィンによって走行風を導き、エンジンを冷却する仕組みになっています。

注目のリトラクタブルヘッドライトの構造は、車内に設けられたハンドルをぐるぐると回して手動で開閉する仕組みになっていて、何とも安穏として微笑ましいですが、それでも、カーデザインの風潮に一石を投じた、記念碑的な車として大いに評価すべきでしょう。

空気力学の応用でカーデザインの常識が変わる

自動車の開発に、エアロダイナミクス(空気力学)が応用され始めたのは1920年代からで、1930年代の後半には「流線型」と呼ばれる、走行時に車体に当たる空気の流れを考慮したデザインの車が、各自動車メーカーから登場してきます。

とは言え、当時は実際の空力性能を配慮した車はなく、大昔にレオナルド・ダ・ヴィンチが語った「流線型は空気抵抗が少ない」という言葉を元にした、単なる想像上の空力的デザインでしかなく、現代みたいに風洞実験などを行わない、科学的根拠のない物でした。

しかし、1960年代に入ると、車の高性能化に伴う高速化を背景に、空気抵抗の少ないボディデザインが求められるようになります。そこで空気抵抗を減らすために、走行中に車体に空気が当たる面積を少なくするという考えから、ボディの先端部(ノーズ)を低く傾斜させた、「スラントノーズ」の車が流行し始めます。

日本車初のリトラクタブルヘッドライト

1967年に登場したトヨタ2000GTは、当時の流行に乗っ取り、より低くスラントしたボディを実現するために、日本車としては初のリトラクタブルヘッドライトが装備されます。これは空力性能の向上と共に、当時の安全基準に適合したヘッドライトの高さをクリアするために採用された物です。

さらにトヨタ2000GTでは、ボディの先端部にビルトインされた丸型フォッグランプが、独特の個性と美しさを放ち、非常に優れたデザインとして、現在も大変の高い車です。

その後1970年代にはフェラーリやランボルギーニといった、イタリア製高級スポーツカーや、アメリカ車のシボレー・コルベットスティングレーなどが、空力性能に配慮したより低いノーズ形状を実現するために、こぞってリトラクタブルヘッドライトを採用するようになります。

日本でリトラクタブルブームが到来した1980年代

1973年に起こった第一次オイルショック以降、社会の省エネルギー化を背景に、自動車においても、従来の高性能をのみを追求した時代から一転して、燃費の良い車が求められるようになります。すると車体の空気抵抗の減少が燃費の向上に効果を発揮するとして、世界の各自動車メーカーによる車の空力性能への追求が、ますますエスカレートしていきます。

その頃、排気ガスのクリーンさと燃費の良さで、世界を席巻し始めた日本の自動車メーカーは、1980年代に入ると、経済の発展に伴い、従来よりも高性能でデザインの良い車が欲しいというユーザーの希望に答えるべく、スポーティでスタイリッシュな車としてリトラクタブルヘッドライトを装備した車を次々に登場させます。

なんでもかんでもリトラクタブル

そのような日本製リトラクタブル車は、高性能スポーツカーのみにとどまらず、スペシャリティークーペや4ドアセダン、小型ハッチバックといった実用車に至るまであらゆる車種に採用されていきます。

当時の日本のユーザーは「イタリアンスーパーカーみたいでカッコイイ」と大喜びで購入し、「高性能な車はおしゃれなリトラクタブルが常識」だとして、リトラクタブルヘッドライトの大ブームが巻き起こります。

急激に衰退したリトラクタブルヘッドライト

このように、80年代にはおしゃれでスポーティーな車の代名詞として、一気に大流行したリトラクタブルヘッドライトですが、1990年代に入るといくつかの致命的な問題点から、採用する車が急激に減少していきます。

リトラクタブルヘッドライトの問題点

リトラクタブルヘッドライトの欠点のひとつが、ヘッドライト収納時にはボディの空力特性に優れ、燃費の向上などが期待できますが、点灯するためにライトを引き上げた途端、大幅に空気抵抗が増加してしまうことです。これでは機能的なメリットが半減してしまいます。

次に衝突時の安全性に大きな問題があり、歩行者と接触した場合は突起物となり、被害者に致命的なダメージを与えることから、現在の法律では安全基準をクリアできません。

さらに、ヘッドライトの性能が大幅に進化し、ライトの小型化とカバーなど樹脂素材の加工技術が飛躍的に向上したことで、デザイン面においても採用するメリットが無くなりました。

もはや完全に消滅するも再び注目を集める

その他にも、リトラクタブル化で、車体先端の重量増加による操縦性への影響や、製造コストが増加するなど欠点が多いことから、日本車ではマツダRX-7、また外国車ではC5型シボレーコルベットの生産終了によって、リトラクタブルヘッドライトは完全に絶滅してしまいました。

しかし、リトラクタブルヘッドライトは、その独創的とも言えるアイディアや、機構のおもしろさから、現代になって再び脚光を浴び、中古車市場などでとなっています。

リトラクタブルデュアルヘッドライトの特徴

リトラクタブルヘッドライトは、ヘッドライトをボディの中に引きこんで収納するため、流行した当時は、ヘッドライトのサイズにある程度の制限がありました。そのため、従来の固定式ヘッドライトに比べて光量が少なく、道路状況によっては視界の確保にやや問題がありました。

そこで1981年に登場した3代目マツダ・コスモでは、非常に大胆なデザインの、4燈式リトラクタブルデュアル(ダブル)ヘッドライトが採用されています。画像を見ると分かりますが、デュアルライトとすることで、空力性能の向上と同時に夜間走行時に十分な光量を確保しています。

マツダ・コスモの当時のカタログには、世界最高レベルのcd値0.32という空力性能を達成したと、大きく宣伝されていました。

リトラクタブルデュアルへの改造の仕方

憧れのリトラクタブル車を手に入れたけれど、夜間の走行時にライトが暗くて不安という人には、対策としてデュアルヘッドライトへの改造が考えられます。といっても専用キットなどはありませんので、根気と気合をもって加工をくわえましょう。

は、オートバイ用のデュアルヘッドライトを流用する方法です。できるだけ小型の物を選択し、アルミ板などを使ってそれを固定するステーを自作し、純正のリトラクタブルユニットに固定できるよう上手く加工します。そうすることで、車検時などに必要な光軸調整が、純正のねじを使ってできるので安心です。

また、ヘッドライトの機械部分に水が入らないよう、内部を保護するカバーを新しいヘッドライトに合わせて自作する必要があります。寸法を計ってきちんと図面を書き、FRPなどの素材を使って作成します。

リトラクタブルライト搭載車の特徴について

リトラクタブルヘッドライトは1970年代の初め頃から、走行中にボディに掛かる空気抵抗を低減する目的で、イタリア車やアメリカ車など高性能を売りにした車に装備されました。その後、1980年代からは日本車でも大流行し、車のジャンルを問わず色々な車に採用され、を博しました。

リトラクタブルヘッドライトには、その収納の仕方により多くのタイプが存在し、現在、マニアの間で注目を集めています。

通常のリトラクタブル(引込)式の車

通常、リトラクタブルと呼ばれるのは、ボディラインと一体化した外側のカバーが上方へ開き、ヘッドライトが現れる方式で、ランボルギーニ・カウンタックやフェラーリ365GT4BB、シボレー・コルベット、ロータス・エスプリ、ポルシェ944などのスポーツカーに装備されています。

日本車ではマツダRX-7やトヨタMR2、三菱スタリオンなどのスポーツカーと、それ以外に上記のマツダ・コスモやホンダ・プレリュードといったスポーツクーペ、セダンのホンダ・アコード、マツダ・ファミリアアスティナ、日産パルサーなどハッチバック車といった、多くの車に採用されていました。

ヒドゥン(コンシールド)式

1960年代から70年代のアメリカン・マッスルカーやポニーカー、ラグジュアリークーペに多く見られたのが、固定式のヘッドライトにカバーが装備され、通常は見えませんが、点灯時にはカバーのみが収納され、隠れていたヘッドライトが外に現れる、ヒドゥン(隠された)またはコンシールドと呼ばれる方式の車です。

このタイプには、マッスルカーのダッジ・チャージャーやマーキュリー・クーガー、ポニーカーのシボレー・カマロ、ラグジュアリークーペのリンカーン・コンチネンタルなどの車があります。

ポップアップ式

ヘッドライトが通常はボンネットと平行に真上を向いていて、点灯時にはそれが上前方に持ちあがる、ポップアップ式ヘッドライトを採用していたのは、ポルシェ928やランボルギーニ・ミウラなどのスーパーカーでした。

他には、80年代に登場したイギリス車のオープンスポーツカー、リライアント・シミターSS1という珍車(ちんしゃ)にも、このポップアップ式ヘッドライトが装備されていました。

セミ・リトラクタブル式

通常は、カバーによってヘッドライトが半分から四分の一ほど隠されていて、なにやら眠たそうな目をしているみたいなセミ・リトラクタブル式ヘッドライトを装備していたのは、1970年代のランボルギーニ・ハラマやフェラーリ・365GTB/4デイトナなどの、イタリアンGTカーで、こちらも点灯時にはカバーが収納されてヘッドライトが現れます。

日本車でセミ・リトラクタブル式を装備していたのは、いすゞ・ピアッツアや初代ホンダCR-X、Z31型日産フェアレディZなどです。

リトラクタブルヘッドライトへの法規制について

リトラクタブルヘッドライトについての法規制などを説明します。

リトラクタブルは禁止された?

日本車のリトラクタブルヘッドライトは、マツダRX-7の生産終了と共に消滅してしまいましたが、それは法律によって禁止されたのではなく、技術の進歩によってリトラクタブルにする必要性がなくなったからです。

このように、リトラクタブルそのものを規制する法律は存在しませんが、ただ近年、日本や欧州で厳重化している、車の衝突安全基準によって、リトラクタブルヘッドライトはボディから飛び出した突起物と見なされ、歩行者などと接触した場合に被害者に大きなダメージを与える危険性から、現状では安全基準をクリアできなくなっています。

オートリトラクタブルミラーの特徴について

オートリトラクタブルミラーとは、その名のとおり自動(オート)でドアミラーを格納、および展開してくれる装置です。これは、駐車後にドアをロックすると、自動的にドアミラーが格納され、ロックを解除すると、また自動的にドアミラーが展開するという物です。

この装置によって、パーキングなどで自動でミラーを格納してくれたり、また発進時に、ミラーを展開するのを忘れるというミスを無くします。

リトラクタブル式イグニッションキーとは

リトラクタブル式イグニッションキーとは、衣服のポケットなどに車のキーを入れる際、シリンダーに差し込むキーの先端部を、柄の中に収納できるという物で、キー自体がコンパクトになり携帯がしやすいというメリットがあります。

その反面、通常のキーよりもやや重くなるというデメリットもあり、また、ただ身に着けておくだけでドアロックの開閉や、イグニッションをオンにすることができるインテリジェントキー(スマートキー)の普及により、現在では採用が少なくなりました。

技術の進歩と共に登場したリトラクタブル

リトラクタブルヘッドライトについて、その成り立ちや特徴、車の魅力、またデュアル(ダブル)型の特徴や、法的な規制などを紹介しました。

自動車デザインにおける大きな制約として、ヘッドライトの取り付け方法が、長い年月に渡りカーデザイナーたちを苦しめてきました。そこで、車のデザインにもっと自由な発想を提案すべく、リトラクタブル式が登場します。

またリトラクタブルヘッドライトは、車の空力性能を向上させるために使われた、誰もが憧れるカッコイイ装備のひとつでした。

現代では絶滅してしまったリトラクタブルヘッドライトですが、それでも、そのユニークで個性的な仕組みの数々は、車好きのマニアの心を強く惹きつけ、再び大きな注目を集めています。あなたも独創的で奥が深い、リトラクタブルヘッドライトの世界をぜひ覗いてみましょう。

初回公開日:2018年04月11日

記載されている内容は2018年04月11日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

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