【車種別】ハードトップの車・特徴・オープンカー
更新日:2024年06月11日
ハードトップの特徴と車のボディタイプについて
春先の天気の良い日や、陽気の涼しげな晩秋など、気温や湿度がちょうど良く過ごしやすい季節になると、誰もがドライブに出かけたくなります。
特に開閉式ルーフを装備した、オープンの車のオーナーには、移ろいゆく季節を眺め、心地よい風を感じながら運転を楽しめるとあって、ドライブをするには待望の季節です。
自動車デザインの世界で脚光を浴びるハードトップ
自動車の世界では、今、「ハードトップ」という言葉が話題となり、注目を集めています。ハードトップとは言葉のとおり「固い屋根」という意味で、このようなオープンを装備したスポーツカーのオーナーには非常に興味深い物だといいます。
また、ハードトップはオープンカーのみでなく、自動車デザインの歴史において極めて重要な意味を持つ言葉のひとつで、現代の自動車デザインにおいても大変重要なアイディアとして注目されています。
このようなハードトップについて、その成り立ちや魅力、車の特徴、またハードトップやオープンカーなどを解説していきます。
ハードトップと車の屋根の形状
現在の自動車では、乗員がおさまる室内スペースには、当然ながら、前後に強固なガラス製のウインドウ(窓)と丈夫なルーフ(屋根)を持っています。また、左右には開閉式のサイドウインドウがついたドアが装備され、このため、外部から完全に密閉された空間を実現していますが、かつての車は決してそうではありませんでした。
自動車は、車体の形状によってツーシーター・スポーツやクーペ、セダン、ステーションワゴンなどのタイプに区分されていますが、これらはみな自動車が誕生する以前に主流だった馬車から由来した名称です。
最も単純な車のタイプがフェートン
馬車の中で最も簡潔なタイプは、馬を操る馭者と、その隣にもう一名が乗車可能な二人乗りの馬車です。
そこに、何とか雨露がしのげるかしのげないか程度の、簡単な布製の折りたたみ式屋根が付いただけの物を「フェートン」といい、これが、後に自動車が誕生した黎明期において最も基本的な形として引き継がれました。
自動車のフェートンは、屋根なしの車体に、テントみたいな布製の幌屋根をかぶせただけの車です。フロントウインドウ以外には左右のドアに窓はなく、走行中は開きっぱなしの車体側面から雨や風がどんどん室内に入ってくるというハードコアな車で、これが現代のオープン・スポーツカーの原点です。
ハードトップとソフト
ハードトップとは、こうした車の屋根の形状を区別する言葉としても使われています。その違いは、フェートンや現代のオープンスポーツなどに使われる布製の幌屋根を、「ソフト」と呼び、それ以外の金属やFRP(強化プラスティック)、カーボンファイバーといった堅牢な材質の屋根を「ハードトップ」といいます。
ですが、それだけではなく、自動車の世界におけるハードトップとは、車のデザインを始めとする設計思想に関して大変重要な意味を持つ言葉として存在しています。
ハードトップと車のボディタイプ
フェートンと同じ馬車から由来したボディータイプに、クーペとセダンがあります。
セダンとは「箱馬車(はこばしゃ)」を意味し、フェートンみたいな幌屋根ではなく、しっかりとした造りの天蓋(てんがい)付き馬車で、左右には窓付きのドアがあります。
このセダン型は、現代の自動車と同じ密閉された空間を持つ馬車で、室内が風雨や雪にさらされるのを避け、また、四人が座ることのできる対面式の座席が装備されており、乗員が快適に過ごせるようになっています。
クーペとは、フランス語で「切る」という意味の言葉で、このセダン型を半分に切った形状の、二人乗りの馬車のことです。クーペは、二人の乗員のために快適な室内空間が与えられた豪華な車です。また、セダン、クーペ共に馬を操る馭者席は、密閉された車体の外部に設置されています。
車の設計思想の違いを表すクーペとセダン
自動車のクーペとセダンとの違いを単純に説明すると、座席が4つある車の場合、クーペが、操縦席を含め前部座席の乗員を優先したタイプなのに対し、セダンは、後部座席を快適に過ごせるよう設計された車です。
とはいえ、これはあくまで相対的なボディータイプの区分で、それほど厳密な物ではありません。実際はもっと複雑で、車の設計思想には多くのバリエーションが存在します。その設計思想のひとつが「ハードトップ」で、車のデザインをよりスタイリッシュに見せるためのアイディアとして、古くから存在し、現在も再び注目を集めています。
フィクストヘッドクーペとドロップヘッドクーペ
ハードトップと呼ばれる車は、クーペとセダンの両方に存在していますが、自動車の設計思想におけるハードトップの成り立ちとして、より分かりやすいクーペタイプを元に説明します。
車の屋根の形状を表す言葉として、柔らかい材質で作られた物を「ソフト」、金属やFRPなど固く丈夫な材質の物を「ハードトップ」と呼ぶことから、ハードトップとは、ツーシーター・スポーツなどのオープンの車ではなく、固定された屋根を持つ「クローズドボディ」の車に分類されます。
そして、クーペと呼ばれるボディタイプの車には、固定された屋根を持つ「フィクストヘッドクーペ」と、開閉式の屋根を持つ「ドロップヘッドクーペ」の二種類が存在しますが、いずれも、車のボディタイプとしてハードトップではありません。
イギリスで生まれたクーペを分類する言葉
フィクストヘッドとドロップヘッドというクーペの分類は、イギリスで生まれた言葉で、かつてはよく使われていました。では、それぞれのタイプの特徴について説明します。
フィクストヘッドクーペとは
フィクストヘッドクーペとは、本来、オープンの車として開発されたスポーツカーに、完全固定式の屋根を備えたタイプの車をいいます。フィクストとは英語で「かぶせる」という意味で、フィクストヘッドとは「ヘッド(頭)をかぶせる」、つまり、オープンタイプのスポーツカーに屋根をかぶせてクーペとした車を意味します。
しかも、この場合の屋根とは、開閉式の(屋根)や脱着式のとは異なり、あくまで完全に固定された屋根を持つ車です。そのため、オープンスポーツカーに脱着式のや、開閉式のを装備した車は、単にオープンスポーツカーに屋根を取り付けた車であり、フィクストヘッドクーペでもなければハードトップ車でもありません。
フィクストヘッドクーペはハードトップではない
また、フィクストヘッドクーペはハードトップ車とも異なります。フィクストヘッドクーペとは、あくまで「オープンスポーツ」を堅牢な屋根を持つクーペに改良した車を意味します。
現代の車でいうと、ツーシーター・オープンスポーツのボクスターを、固定された屋根を持つファストバッククーペへと改良した「ポルシェ・ケイマン」や、同じ成り立ちの、初代BMW・Z4クーペといった車がこれに当ります。いずれも「フィクストヘッドクーペ」であって、ハードトップではありません。
ドロップヘッドクーペとは
これに対し、ドロップヘッドクーペとは、最初から開閉式の屋根を装備した車として、開発されたクーペを意味します。例えば1956年の「ベントレー S1 コンチネンタル ドロップヘッド クーペ 」や、1971年から2001年まで存在した、「ロールスロイス・コーニッシュDHC(ドロップヘッドクーペ)」、「ジャガーXK120・DHC」などがそれに当たります。
現代の車では、「ロールスロイス・ファントムDHC」や「ベントレー・コンチネンタルGTC」などがあり、いずれもイギリス車です。
これらドロップヘッドクーペの特徴は、フィクストヘッドクーペみたいなスポーツカーをベースにした性能追求型の車ではなく、オープンスポーツカーのような開閉式のを持ち、スポーティーな雰囲気を備えつつも、より快適性を重視したラグジュアリーなクーペです。
ハードトップって一体どんな車?
このように、ドロップヘッドクーペとは開閉式のを持ちながらより快適なスポーティーかつラグジュアリーな車を意味し、また最初から開閉式の屋根を装備したオープンカーとしても開発されたクーペであることが最大の特徴です。
そして、このドロップヘッドクーペを改良して完全固定式のへと変更した車が「ハードトップ」です。つまり、ハードトップとは、このドロップヘッドクーペのスポーティーでラグジュアリーな雰囲気を残しつつ、耐候性に優れた固定式の屋根(ハードトップ)に改良した、デザイン性の高さと快適性を備えた車のことです。
このように、ハードトップ車とは、最低でも4人がゆったりと座れる座席を装備した室内と、ドロップヘッドクーペと同じスポーティーなデザインを持つ、軽快さと快適性の両方を兼ね備えたゴージャスな車です。
サイドウインドウにピラーがない車
ハードトップについて具体的なデザイン上の特徴は、サイドウインドウを前後に仕切る「Bピラー」がないことです。
ピラーとは、車のデザインを説明するのに使われる用語のひとつで、車の窓を仕切る柱を意味します。
Aピラーは、フロントガラスとサイドウインドウの間を仕切る、操縦席と助手席の斜め前にある柱で、Cピラーとはサイドウインドウの最も後ろで、リアウインドウとの間を仕切る柱のことです。Bピラーはその中間で、サイドウインドウを、前部座席と後部座席との間で仕切る柱です。
ハードトップとは、ドロップヘッドクーペのデザインを基本としているため、このBピラーが存在しないのが特徴です。Bピラーがないため、窓を全開にすると非常に開放感があるのが魅力です。
2ドアと4ドアがあるハードトップ
また、ハードトップには2ドアの他に、ドロップヘッドクーペのデザイン性をそのままに、セダンの実用性を兼ね備えた「4ドアハードトップ」も存在します。
4ドアハードトップでは、後部座席にもドアを備えたことで実用性が高いのに加え、2ドアよりも広い室内空間を持ち、後部座席の居住性と快適性が増したラグジュアリーな車です。
この4ドアハードトップの特徴を表した映像が、ジャン・リュック・ゴダールの映画「勝手にしやがれ」に登場しています。車は60年代のアメリカ車「オールズモビル」です。
ジャン・ポール・ベルモンド演じる主人公が、そのゴージャスな4ドアハードトップの操縦席に乗り込み、コンソールのボタンを指でチョンと押すと、たちまち前後のサイドウインドウが全て下ろされ、オープンカーさながらの開放感が得られるという場面で、車の持つ魅力を上手く表現した、とても良くできた映像です。
一時消滅するも復活を遂げたハードトップ
このように、ハードトップはアメリカや欧州を始め、かつては日本車でもトヨタ・クラウンや日産セドリック、グロリアといった多くの車に採用され、大流行しましたが、Bピラーがないことで安全性に問題があり、一時期には姿を消してしまいました。
しかし、2005年頃から「クーペスタイルの4ドアセダン」として4ドアハードトップが復活を遂げ、最近では「グランクーペ」「スポーツバック」といった新たな名称を得て、スポーティーでエレガントな車として、再びを集めています。
車種別ハードトップ車
ハードトップ車について説明します。
メルセデスベンツCLSクラス
ドロップヘッドクーペの雰囲気を持つ、サッシュレスドア(サイドウインドウにBピラーがない)を採用した4ドアハードトップとして、代表的な車が「メルセデスベンツCLSクラス」です。
初代CLSは2005年に登場しました。メルセデスを販売するドイツのダイムラーが、「4ドアクーペ」と呼ぶCLSは、正しく現代によみがえった、スポーティーでゴージャスな4ドアハードトップです。
デカダンスなスタイルが強烈な個性を放つ
その流れるように美しいボディデザインは、独特なインテリアと共に、従来のメルセデスでは想像できない、デカダンス(退廃的:たいはいてき)な雰囲気を漂わせ、発表された途端に人々の心に衝撃を与えました。
現行モデルは2011年登場の2代目で、初代よりは幾分おとなしいデザインになりましたが、それでも、各部の造形には趣向を凝らしており、独特の美しさと迫力のあるデザインが魅力の、4ドアハードトップです。
s660
ホンダの軽スポーツカーとして、大のS660はオープン・ツーシーターのスポーツカーで、そのアフターマーケット品として、ホンダ車のドレスアップでおなじみの「無限」から、脱着式のハードトップが販売されています。
標準が布製ソフトのS660は、高速走行時の騒音といった快適性などに問題があり、サーキット走行をするユーザーが多いこの車では、車体の剛性強化や騒音対策としてこちらのハードトップを希望している人が多いです。
S660は、あくまでもオープン・スポーツカーなのでハードトップではありませんが、サーキット走行などスポーティーな走りが楽しめる車として大変なです。
124スパイダー
124スパイダーは、日本のマツダが生産し、イタリアのフィアット社が世界へ向けて販売しているツーシーターのオープン・スポーツカーで、同社のマツダ・ロードスターの兄弟車として多くの部品を共用しています。
この124スパイダーに、カーボンファイバー製のを装着した「アバルト124GT」が、2018年3月のジュネーブ・モーターショーにて発表され、大きな話題を呼んでいます。
残念ながら、日本市場への導入予定はないとの事ですが、こちらもハードトップではなく、オープン・スポーツカーに脱着式の堅牢なを装着した車です。
開閉式ハードトップオープンカー
リトラクタブル式(開閉式)の堅牢なを持つ車を、「クーペカブリオレ」や「電動式ハードトップを装備したオープンカー」などと呼びますが、いずれもハードトップ車ではありません。ですので、電動リトラクタブル式を持つオープンカーを紹介します。
メルセデスベンツSLK
電動開閉式ハードトップの元祖が、「メルセデスベンツSLK」です。SLKの「K」とは、ドイツ語の「Kurz(クルツ)」の頭文字を取った物で、「短い」という意味です。これは、メルセデスを代表するゴージャスなオープンカー「SL」の、ボディサイズを短くしたモデルという意味です。
現行型は2011年登場の3代目で、電動開閉式の「パノラミックスカイルーフ」を装備したとして注目を集めます。こちらはガラス製の天井を備えた開閉式ハードトップで、ボタン一つでガラスの透過性を変えられるという新技術を採用しています。
その仕組みは、開放感あふれる透明ガラスの状態から、スイッチ一つで蛍光灯に似た乳白色の明るい屋根に代わるという驚きの装備で、SLKの持つラグジュアリーな魅力を高めています。
マツダロードスターRFの電動開閉式ルーフの仕組み
マツダが販売する、のオープン・ツーシーターのスポーツカー「マツダ・ロードスター」には、開閉式メタルを装備したRF(リトラクタブルファストバック)がラインナップされています。
このRFの特徴は、従来の電動開閉式メタルにおいて、の収納時にはトランクルームが狭くなり、実用性が大幅に低下するという欠点を解決したところです。
ロードスターRFは従来とは異なり、からテール(尾部)までなだらかな傾斜を持つ、ファストバック型とすることで、トランクルームの荷物スペースを犠牲にすることなく、を格納できるようになっています。
RFでは、ファストバック形状となった部分に折りたたまれたがすっぽりと収まり、トランクルームに一切干渉しないことで、標準のソフト車と同じゆとりある荷室を実現しています。
ロードスターRFの開閉の仕組み
その開閉の仕組みは、まずファストバック部全体が上方に持ちあがり、同時に後方へと移動します。すると座席直後の収納スペースが現れます。そこへが折りたたまれながら収納スペースへと収まり、最後に、再びファストバック部が元の位置に戻って完了です。
を閉める際は、再びファストバック部が後上方へと移動し、次に、収納されていたがせり上がって展開し、再度ファストバック部が元の位置へと戻ります。その間、わずかに13秒で、しかも、ボタン一つで全ての動作を行います。
通常のセダンとハードトップセダンとの違いについて
通常のセダンとハードトップセダン(4ドアハードトップ)との違いは、サイドウインドウにBピラーがあるのか、ないのかの違いです。
通常の4ドアセダンは、サイドウインドウを全て開いた時に、前後のドアの中間にBピラーという柱があり、前後の座席を分けているのに対して、ハードトップセダンではこのBピラーがなく、窓を全開にすると非常に開放的なのが特徴です。
1980年代後半ごろまでの、多くの日本車で、このセダンとハードトップという二種類のボディータイプが、同じ車種で設定され、ユーザーはどちらかを選べるようになっていました。
ハードトップはスポーティーでゴージャスな車
ハードトップについて、その成り立ちや魅力、車の特徴、またハードトップやオープンカーなどを紹介しました。
ハードトップとは、自動車デザインにおけるアイディアのひとつで、車をスポーティーに見せることができるとして、多くの車に採用され、かつては日本車でも大流行しました。
ハードトップは、ラグジュアリーなオープンカー「ドロップヘッドクーペ」を改良し、固定式の屋根とした車を意味し、そのデザイン性の高さと快適な室内空間が魅力の、ゴージャスな車です。そして、現在、再びハードトップが脚光を浴び、注目を集めています。
また、オープンスポーツカーに堅牢な屋根を装着した車や、電動開閉式メタルの車のことをハードトップと呼びますが、これらは厳密にはハードトップではなく、単なるオープンカーです。
あなたも車選びの対象として、素敵なハードトップにぜひ注目してみましょう。
初回公開日:2018年04月14日
記載されている内容は2018年04月14日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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