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キャンバー角の調節方法・角は何度が良いのか・角の作り方

更新日:2024年10月04日

自動車が唯一接している4つのタイヤ、それらの取り付け角度によってタイヤの磨耗や走行性能に大きな影響をもたらすのがホイールアライメントです。今回はその中で車を正面に見た時のタイヤの角度「キャンバー角」の調整方法や最適な角度について書いてみました。

キャンバー角の調節方法・角は何度が良いのか・角の作り方

キャンバー角の概要

ホイールアライメントのキャンバー角とは、クルマを正面から見た時のタイヤの傾き角のことです。カタカナのハの字にタイヤが傾いていたら「ネガティブキャンバー」と呼び、その逆で逆ハの字に傾いていたら「ポジティブキャンバー」と呼びます。

キャンバー角をつけることによる効果はポジティブキャンバーだとハンドルの操舵力が軽減する効果があります。昔のようなパワーステアリングがない時代の車はポジティブキャンバーが主流でした。

ネガティブキャンバーは主にサーキットなどでコーナーを曲がる際キャンバー角が足りないとコーナリング中タイヤは横Gによる力でタイヤが横方向に接地面がずれ、直進時より接地する面積が減ってしまいます。これを防ぐためにネガティブ方向に角度をつけてコーナリング中にタイヤの接地面をより多く活用できるように用いられます。

キャンバー角の調整方法

では、そのキャンバー角はどのようにして調整するのでしょうか。現在の車にはさまざまなサスペンションの形式があります。そしてどれも異なる調整方法やそのままでは調整ができずに社外品のパーツや加工が必要な場合があります。

ただ、共通点としてキャンバー角の調整には必ず車体をジャッキアップする必要があり、正確に角度を計測するには専用の測定器や設備が必要になってきます。

また、キャンバー角を調整するとトー角(車を真上から見た状態でのタイヤの開き具合)も同時に変化してしまうので再調整が必要になります。面倒だからと言って再調整を怠るとタイヤの早期摩耗につながります。

ストラット式

まず一般的に多く採用されているストラット形式のサスペンションでの調整方法ですが、こちらの形式の場合残念ながら純正のままでの調整はできません。調整する方法として社外品のサスペンションに装着される部品があります。そのアッパーマウントと呼ばれる部品でキャンバー角が調整可能なものが装着されている場合は、そちらで調整が可能です。

また、もう一つがストラット形式のサスペンションを固定するボルトです。こちらも社外品でキャンバーボルトと呼ばれてるエンジンのカムシャフトのような形をしたボルト(ネジ部以外の棒状の部分がそのような形をしている偏心カム構造)を装着することによって純正のサスペンションでもキャンバー角をつけることができます。

ただし、こちらの部品の注意としてものによっては走行中ボルトの位置がずれて、キャンバー角がずれてしまう可能性があります。

ダブルウイッシュボーン式 マルチリンク式

主に高級車やスポーツカーに用いられるダブルウイッシュボーン式とマルチリンク式ですが、これらのサスペンション形式は純正のままでもキャンバーの調整が可能です。調整方法はサスペンションアームを締結しているボルト、ナットが偏心カムになっているのでナットを緩めてボルトを回せばキャンバー角を調整することができます。

また、ボルトには目盛りが付いており、それを参考にすると後々の調整においてあとどれくらい動かすかという目安になります。

ただし、長年雨風に当たるところなのでボルトが錆びて緩まない可能性がありますので、調整前に錆に浸透する潤滑スプレーを塗布すると調整がしやすくなります。

車軸懸架式(リジット式)

車軸懸架式のキャンバー角調整は調整箇所がないので調整をすることは純正では不可能です。
ただし一部の車種では社外品で車軸とホイールハブの取り付け部の間に数種類の厚さのシム板を挟むことによって、段階的にキャンバー角を付けることができます。

また、大掛かりな作業になりますが、車軸を一旦車から取り外して車軸を直接加工することによってキャンバー角をつけることができます。

ただし、この作業は特殊な技術と設備が必要になるので一般向けではありません。しかも、一度加工を施したら元に戻すことは不可能なので、元に戻すとなった場合は新たに新品の車軸や中古の車軸を手に入れて交換するしかありません。

キャンバー角の角度は何度がいいのか

では実際にキャンバー角は何度がいいのでしょうか。

日常での使い勝手とサーキットでの効果に着目して2度、3度、5度に分けてそれぞれの効果とデメリットについて解説します。

2度

キャンバー角で2度というのは見た目上ではあまり変化が見られずほぼ直立に見えます。現に一般的な乗用車のキャンバー角の基準値で最大1度30分程度なので、そう考えると誤差の範囲と言ってもいいくらいでしょう。

2度なら日常の運転でも特に大きな影響はないですし、タイヤの偏磨耗も起きにくいでしょう。
ただしサーキットを走行する場合、履かれるタイヤや車種によってはキャンバー角が足りずに外側が偏磨耗してしまう可能性があります。

3度

3度までキャンバー角を付けると見た目上にも変化が現れて正面か車を見ると明らかにタイヤに角度が付いていることがわかります。日常の運転程度ではこの3度がクルマによっては偏磨耗の限界です。

サーキットにおいてはキャンバーをつけることによってコーナリングでよりタイヤの接地面をうまく活用できます。これによりコーナリングスピードの向上やタイヤの偏磨耗(外側)を抑えることができます。

しかし、3度もつけると今度は直進時にタイヤの外側が接地していない可能性があります。それによりブレーキ時のタイヤの接地面が少なくなることによる制動距離の増加や道路のわだちによるフラつきの原因につながります。

5度

キャンバー角が5度にもなると明らかにタイヤが傾いて見えます。ここまでくると日常の運転でも支障が出てきてしまい、タイヤの偏磨耗を促進させてしまいます。さらにタイヤの取り付け部分であるハブベアリングにも負担がかかってしまって寿命を縮めてしまいます。

そしてタイヤの接地面がさらに減る方向になるので万が一の急ブレーキで思った以上に制動距離が伸びて思わぬ事故につながる恐れもあります。また道路のわだちにハンドルが取られやすくなりフラフラした運転になりやすいです。

このように日常の使用ではキャンバー角5度は付け過ぎなのですが場所をサーキットに移した場合、車種によって(特に全高の高めなクルマ)はこのくらい角度をつけたほうがよりコーナリング性能が向上しラップタイムが速くなる可能性があります。サーキット走行においては5度というキャンバー角は試してみる価値はあるでしょう。

巷で聞く「鬼キャン」とは

巷で聞く「鬼キャン」ですが具体的に何度キャンバー角をつければ鬼キャンかという明確な基準はありません。街中で見かけるような明らかにタイヤの角しか接地していないようなクルマは鬼キャンと呼んでもいいでしょう。

鬼キャンのメリットは実際のところほとんどなくドレスアップやショーカーなどで太いホイールを収めるためや車高をギリギリ下げるためなど見た目を重視した印象が強いです。

とにかくタイヤの接地面がほぼタイヤの角しかないので万が一のブレーキでも制動距離が伸びます。また鬼キャンによる部品の早期劣化(特にハブベアリングや駆動輪ならドライブシャフトが当初の予想される基準値外の角度での使用なので早期に部品が消耗します。)が大きなデメリットになり、大変危険なので真似はしないほうがいいです。

サーキットでの理想のキャンバー角算出は?

サーキットでの理想的なキャンバー角の算出方法として目安となるのが走行後のタイヤの磨耗具合とタイヤ表面の温度です。タイヤの磨耗具合で外側が丸く削れている場合はキャンバー角が足りていないので調整して増やしてみましょう。

次にタイヤの表面温度ですが、タイヤの外側に行くにつれて温度が低なっていれば理想のキャンバー角となっています。これは直進時に外側はあまり接地していないので、走行風で冷やされることによって内側との温度差が生まれます。

目安としては内側より外側が10度くらい低いのが理想的です。

キャンバー角をつけるにはどうしたらいいのか

キャンバー角を実際につけるには前述したようにサスペンションの形式によってはキャンバーをつける事ができない、あるいは社外品のパーツを装着することによってキャンバーをつける事ができます。

ダブルウイッシュボーン式とマルチリンク式に関しては調整機構があるので純正のままでもキャンバーをつける事ができますし、車高調整式サスペンションやダウンサスを装着することによって車高が下がると構造上自然とキャンバーが付いてしまいます。

キャンバー角は車検でチェックされるのか

キャンバー角を調整するにあたって心配になるのが「車検」ですが、法規上でキャンバー角は何度以内でなければならないという明確な規定はありません。しかし、タイヤの車体からのはみ出しの規定としてホイールの中心を基準に前側30度、後側50度の範囲でタイヤが車体からはみ出してはならないという規定があるので自然とつけられるキャンバー角に限界があります。

特に社外のホイールやワイドトレッドスペーサーでホイールが車体(フェンダー)からはみ出している際、キャンバー角を付けることによって半ば強引に車体に収まっているようにしている場合は上記の法規に違反し車検が通らない可能性があります。

その場合はホイールを別のものに交換するまたはワイドトレッドスペーサーを取り外す(多くのワイドトレッドスペーサーは車検に合格しませんので車検の際は取り外す必要があります)などして車体からはみ出さないように改善する必要があります。

キャンバー角の計算方法

キャンバー角を調整して実際に何度ついたか確かめる方法は簡単な道具と測定を基にして計算することによって算出する事ができます。

まず用意するのが糸で糸をホイールの中心を通るように吊るします。(糸を吊るす際、糸がタイヤに当たらないようフェンダーと糸の間にテープなどを挟みます)この時糸に錘をつけると風になびいたりせず測定が容易になります。

糸を吊るしたら今度はスケールやメジャーを使ってホイール上端と糸の距離、ホイール下端と糸の距離、ホイールの距離(吊るした糸でホイールの上端から下端にかけての距離)を測定します。

これらの測定値を基に三角関数のsin-1を利用して計算することによって現在のキャンバー角の角度を算出することができます。

もっと手軽にキャンバー角を測定できる測定器

上記では糸とスケールを使用して測定値を基に計算してキャンバー角を算出していましたがいちいち測定の度に計算の必要があるので非常に時間がかかってしまいます。時には計算を間違えて混乱してしまうでしょう。

そこで便利なものとしてこちらのキャンバー測定器を使用すれば測定だけで計算の手間がかからずそのまま角度が算出できるので作業効率が一気に向上します。

しかしこちらの測定器はホイールハブにマグネットで取り付けて測定するのでアルミホイール装着車ではホイールがついたままの状態では測定ができない可能性があります。その場合はタイヤを外し、ブレーキディスクに直接貼り付けるような形にして測定することになります。

こちらキャンバー測定器ですが精度の高いものなら数万円するものもあります。簡易的に見たいのであれば数千円からでも入手は可能です。キャンバー測定器は水準器を使用していますので取り扱いは注意が必要です。

スマホで簡易的にキャンバー角を測定することも可能

専用の測定器を使用すれば正確なキャンバー角を測定する事が可能になる訳ですが何しろ安いものでも数千円、高いものに至っては数万円する高価な道具です。そして幾らキャンバー角が正確に測定可能とはいえ、そんな多い頻度で測定することはサーキットでのセッティング目的以外、あまり無いと言っていいでしょう。

そんな時に今の時代便利なのがスマートフォンで、Android、iphoneどちらの端末もキャンバー角を簡易的に測定できる角度計、水準器アプリが内蔵または無料でダウンロードすることができます。

測定の方法としてまずホイールのリム直径程の長さのある四角い木片または(金属の方が理想)を用意しホイールの中心を通るようにあてがいます。(この時スポークの形状で上手く当たらない時は少し回転してずらす)そしてその木片にスマホを押し当て角度を測定することで簡易的ですがキャンバー角の計測が可能です。

理想的なキャンバー角を追い求めて

ここまでキャンバー角の調整方法や計測方法、角度別の特徴について述べさせていただきましたが「実際の所理想的なキャンバー角はいったい何度なのか?」の答えは非常に単純です。究極な理想のキャンバー角は0度となります。

ここまで色々キャンバー角について書いて「結局0度が理想?」と思うのも無理ありません。ですが、もしタイヤが外部から横Gなどによるたわみが無いとした場合、一番タイヤの接地面が最大なのが0度なんです。

しかし、実際の所、タイヤは走行により変形するのでそれを見越してキャンバー角が必要になります。

そして一概に何度が理想という明確な数値は無く、車高の違いや重量、足回りの構造、タイヤのサイズ、種類が変わってくるだけで理想のキャンバー角は変わっていきます。大変ではありますが、裏を返せばそこがキャンバー角の奥深さでもあるのであなたもご自身のクルマの最適なキャンバー角を導き出してみてください。

初回公開日:2018年04月14日

記載されている内容は2018年04月14日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

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