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フェード現象の対策の仕方・事故・ベーパーロック現象との違い

更新日:2024年10月15日

フェード現象は教習所でペーパーロック現象と並び重要なブレーキトラブルとして学習しているはずです。しかし峠道を走っているとフェード現象の事を何もわからないといった走り方をしている人見かけます。そこでもう一度フェード現象について復習して安全運転に役立てましょう。

フェード現象の対策の仕方・事故・ベーパーロック現象との違い

フェード現象の対策の仕方

フェード現象という言葉をご存知でしょうか。車の安全走行を脅かす現象にはペーパーロック現象、スタンディングウェーブ現象などがありますが、このフェード現象はブレーキの安全に関わる現象です。

走行中にいつもよりブレーキを多用する下り坂で、段々とブレーキが効かなくなったらそれはフェード現象です。そこでフェード現象に陥った時にどう対処すればよいのか、フェード現象が起きる原因とその時ブレーキには何が起きているのかを解説していきます。

フェード現象とは

フェード現象はブレーキを多用した時に起きる現象です。特に怖いのは長い下り坂でブレーキを使い続けるとブレーキを踏んでも効きが悪くなり、仮に急カーブがあれば事故に繋がりまねません。

フェード現象は、ブレーキの構造により起こる症状で、ブレーキを踏んで熱を持つとブレーキパットの性能を発揮できる温度を超えてしまいブレーキパットからガスが発生します。このガスがパットとローターの間に挟まれて、パッドとローターを引き離そうとする作用が発生しブレーキが効かなくなる現象です。

ブレーキの構造

全ての乗り物のブレーキは、運動エネルギーを減少させるために摩擦抵抗を起こし熱エネルギーに変換して制動作用を起こします。例えば車のブレーキには、ディスクブレーキとドラムブレーキがありますが、ディスクブレーキはブレーキパットでディスクを挟み込む事で摩擦抵抗を起こし、ドラムブレーキはドラムの中のブレーキシューが開いて中からドラムを押し付けて摩擦抵抗を起こします。

ブレーキをかけると、どのような乗り物でも熱変換を起こすのでその放熱対策が重要になります。ディスクブレーキは放熱性に優れていますが高価なのが難点で、トラックなどの大型車にはドラムブレーキを使用しています。しかしドラムブレーキは放熱性が悪いことが弱点です。

ブレーキを使えば熱を多く発するので、その熱によりブレーキパットが適正の制動力を発生させる許容温度を超えてしまえばフェード現象に陥る事になります。

エンジンブレーキ

最近のAT車で通常の街乗りでは、エンジンブレーキのことは考えずに運転しますが、山道などの下り坂ではエンジンブレーキとの併用で、坂道を下るのが基本です。

ブレーキを多用しているとブレーキパットに過度な発熱をもたらし、ブレーキパットの適正な制動力が得られなくなります。そこでエンジンブレーキを併用して坂道を下ればブレーキを多用しなくても車は減速するので、ブレーキパットの過度な発熱を抑えることができると共に、発熱したブレーキシステムの放熱する時間も取ることができます。

エンジンブレーキは車を完全に止めるブレーキではありませんが、坂道などで車速が上がり過ぎないようにして、フットブレーキのアシストとしてブレーキの使い過ぎを抑制することができますから、エンジンブレーキは非常に重要になります。

エアブレーキ

エアブレーキはトラックやバスなどの大型車に搭載されているブレーキシステムです。エアブレーキは空気を圧縮させてその力によってブレーキを作動させます。エアー圧縮した力は非常に強力なので、大きなトラックやバスには有効なブレーキシステムです。

普通乗用車では、ブレーキを掛ける力は油圧を利用していますが、エアーブレーキと油圧との違いは、ブレーキを作動させる媒体が油圧と空気の違いです。エアブレーキはドラムブレーキに使われていますが、ブレーキの使い過ぎによるフェード現象は油圧式でもエアー式でも同じように起こります。

フェード現象の防ぎ方

フェード現象を防ぐにはスピードを出し過ぎないようにすることです。長い下り坂になる前にスピードを抑えてAT車であれば、レンジを3または2に入れます。マニュアル車であれば3速や2速にギアチェンジをします。

車にスピードが乗らないようにエンジンブレーキを使い、ブレーキを長く踏まないように注意します。ブレーキを踏んだら走行風で冷やしながら次のブレーキを踏むようにし、ブレーキを踏みっぱなしにしないようにしましょう。ブレーキを踏んだまま長い下り坂を下れば、あっという間にフェード現象に陥る事になります。

ブレーキにはブレーキディスクを挟み込むディスクブレーキ方式と、ドラム内のあるブレーキシューを内側から押し付けるドラムブレーキ式とに分かれますが、どちらのブレーキシステムもフェード現象の防ぎ方は同じとなります。

フェード現象の前兆

フェード現象が起きる前には、予兆が必ずあります。ブレーキを多用して坂道を下るとブレーキのの素材であるレジン(有機物)の焼ける匂いがしてきます。何か焦げ臭いにおいが車内に入ってきたのならば、フェード現象の予兆です。また焼ける匂いと共に、ブレーキを段々と奥まで踏まないと制動できなくなります。

このような予兆が現れたらブレーキを冷却しなければブレーキが効かなくなってしまいます。ブレーキが効くうちに安全な場所に停車して、だいたい常温になるまで約30分ほど休ませるのがよいでしょう。

種類別フェード現象の事故

地上を走る全ての乗り物には必ずブレーキが装着されています。その種類別にかかわらずフェード現象が発生した場合の事故は、非常に悲惨な物となりますが、意外に多く発生しているのが現状です。それぞれの乗り物のフェード現象にならないための注意点についてみていきます。

自転車

自転車でフェード現象の起きる可能性は、少ないでしょう。それは重量が軽い事と普通の自転車のリムブレーキの場合、ディスクブレーキとは材質が違うのがフェードが起きにくい理由でしょう。

しかし自転車の中にもロードバイクなどにはディスクブレーキを装着している車種もあります。こういった自転車はやはりブレーキパッドが熱を持ちフェード現象が発生する可能性があります。自転車だとエンジンブレーキがありませんから、一度フェード現象になれば非常に危険となります。自転車は止まるという機能を失い暴走し大事故に繋がるでしょう。

バイク

バイクのブレーキは、ディスクブレーキが中型、大型バイクを中心に使用され、小型バイクにはドラムブレーキが多く使用されています。その理由としてはバイクの重量に関係しており、重い物を止めるにはより強いブレーキが必要になるからです。しかしそれに伴い発熱も多くなります。そこで放熱性の高いディスクブレーキが、中型以上のバイクに使われています。

バイクで長い下り坂を下っている時に、ブレーキを多用するとブレーキが熱を持ちます。そのままブレーキをかけ続けると、ブレーキパットが熱の許容量を超えてフェード現象を起こします。

バイクで下り坂走行中にフェード現象が起きれば、スピードが速いので死に至るほどの事故に繋がる恐れが高くなります。バイクは車と違いボディーが体なので、バイクのブレーキが効かなくなり、何かに衝突すればその衝突エネルギーは体にもろにかかる事になるでしょう。

車のフェード現象は、車体が重い分ブレーキを多用し続ければフェード現象になる可能性が非常に高くなります。特にバスやトラックでは車重が重いのに加えて放熱性の悪いドラムブレーキを採用していますから、下り坂でのブレーキの多用は行ってはいけません。

下り坂でブレーキがフェード現象を起こせば、車はスピードをグングン上げていき、カーブを曲がり切れずにガードレールに衝突するでしょう。車体が重いトラックなどの車両は、軽々とガードレールを突き破り、転落する危険が非常に高くなります。

下り坂でのフェード現象が起きれば、自分だけの単独事故だけにとどまらず、対向車や民家などに多大な被害を及ぼしたり他人の生命を危険にさらす恐れが高くなります。

フェード現象から回復する方法

フェード現象が発生したら、慌てずにブレーキを冷却するために走行風を当てる事が重要です。ブレーキが効かないからとフットブレーキを強く踏めば状況を悪化させてしまうでしょう。

フェード現象が起き始めるとブレーキの効きが悪くなってきます。いつもよりブレーキを強く踏まなければ制動能力が得られなくなってきたら、迷わず道路が少し広くなった場所を見つけて停車しましょう。

ブレーキがフェード現象になると非常に高温になる事から、冷やさなければと考えて水をブレーキにかけることは非常に危険です。高温になってブレーキディスローターが熱で膨張しているところに水で急激に冷やされれば、歪んだり割れてしまう危険があります。

1.5トンの車を100km/hから完全停車させる時に発生する熱量は1.5Lのペットボトルの水を一瞬で沸騰させるほどです。ゆえにブレーキの冷却が非常に重要になります。

下り坂

車などを下り坂で走行している時にはブレーキを多用しがちです。下り坂を運転する場合は、ギアを低くして運転することが重要です。AT車に乗っていると常にDレンジに入れたままで、急な長い下り坂でもブレーキだけで下ろうとする人が非常に多く見られます。しかしそのような運転方法は非常に危険です。

下り坂ではギアを低いギアにして、下り坂の直線ではそのままブレーキを踏まずにエンジンブレーキで下ります。カーブの手前で少し強めにブレーキを踏んでスピードを落としてカーブに突入したらブレーキから足を離し、またエンジンブレーキのみで下るようにします。

下り坂ではブレーキを掛けるポイントをカーブの手前のみに絞り、直線ではブレーキを使わない運転を心がける事で、ブレーキにも適度に走行風が当たり放熱することができるので、フェード現象になりかけても直ぐに回復できるでしょう。

フェード現象とベーパーロック現象の違い

フェード現象とペーパーロック現象は全く違う現象です。フェード現象はブレーキパットに起きる現象であるのに対し、ペーパーロック現象はブレーキオイルに起きる現象です。

フェード現象ではブレーキのタッチはほとんど変わらずにブレーキが効く位置が奥になってきます。しかし、ペーパーロック現象はブレーキペダルのタッチがフワフワとした感じとなり、ブレーキペダルの踏んだ時の反応が無くなります。

ペーパーロック現象とは

ペーパーロック現象とは、油圧ブレーキのオイルが高温になりオイルの中に気泡が発生する事で、圧力がかけられなくなる現象です。ブレーキオイルの中に水分が含まれており、その水分が沸騰して気泡となります。

ペーパーロック現象はブレーキオイルの劣化で起きやすくなる症状で、ブレーキを酷使して熱を持てばペーパーロック現象が起きやすくなります。そこでペーパーロック現象を防ぐには、定期的なブレーキオイルの交換とブレーキの酷使をしないことです。

フェード現象とペーパーロック現象の関係

フェード現象とペーパーロック現象には密接な関係があります。フェード現象が発生する原理はブレーキの使い過ぎによる発熱が原因ですが、ペーパーロック現象も同じくブレーキの使い過ぎによる発熱が原因です。

フェード現象が起き始めたのにブレーキを使い続けると、ブレーキによる発熱がブレーキオイルを沸騰させてペーパーロック現象が起きます。

このようにフェード現象が発生してから、その熱が最終的にブレーキオイルに伝わる事でペーパーロック現象が起きるので、ブレーキの使い過ぎは非常に危険な操作となります。

どのくらいでフェード現象が起こるのか

フェード現象が起きるタイミングは車の重さ、車に使っているブレーキの種類で変わってきます。車重が重ければそれだけ早く熱がブレーキに蓄積されてフェード現象が起きるでしょう。その他ブレーキパットの素材にも関係してきます。

ブレーキパッドにも対応温度があります。同じ車重でも耐フェード性の高いブレーキパッドを使用すると、通常のブレーキパッドよりフェード現象の発生する温度が高い位置に設定されていますからフェード現象が起きにくくなります。

このようにどのくらいでフェード現象が起きるのかは条件により違うので、その時間や距離で表すことはできません。どのくらいで起きるかを心配するよりも、下り坂ではブレーキをなるべく使わずにエンジンブレーキ併用の運転を心がけるようにした方が良いでしょう。

耐フェード性とは

耐フェード性とは、フェードが始まる温度がいかに高い場所にあるのか、またフェード現象が起きた時と起きる前とで摩擦係数の変化がいかに少ないかによって決められています。

通常純正パッドはフェード現象が始まる温度を300℃~350℃に設定されているのに対し、スポーツパッドは400℃~700℃ぐらいになっています。またスポーツパッドはフェード現象が起きる前の摩擦係数を100%とした時にフェード現象が起きた時には60%~80%を維持するように作られています。因みに純正パッドは40~50%です。

フェード現象が起きやすい条件

フェード現象には、条件が重なった時に起きやすくなります。それはアップダウンの勾配が激しい直線が少ない道路で、人を多く載せていると重量も重くなり、そこに気温が高い事が加わるとフェード現象が起きやすくなるでしょう。

このようにフェード現象には、ブレーキの酷使の他に上記のような条件が揃うとより起こりやすくなる現象です。

雨だとフェード現象になりやすいのか

フェード現象は、ブレーキパッドか発熱する事で起きますが、雨の日にも同じようにフェード現象が起きます。雨の日のフェード現象をウォーターフェード現象といいます。

雨の日の高速道路を走っている時に発生する可能性が高くなります。それは一定のスピードでブレーキを踏むことが無くそのままインターチェンジで降りた時にブレーキが効かなくなる現象です。

雨水が、ローターとパットの間に入り込み水の膜を作る事で発生する仕組みです。高速道路ではノーブレーキで走行する事が多いので、ブレーキの水切りがされません。するとブレーキは水びだし状態になり、ブレーキパットとブレーキローターの間に水の膜ができ滑りが発生しブレーキの効きが大幅に低下します。

同じ症状として、タイヤに関する事でハイドロプレーニング現象がありますが、これと同じ原理がウォーターフェード現象です。

雨の日の運転方法

雨が降ると視界も悪くなり、道路は浸水し運転には非常に気を使い大変です。高速道路ではなるべくブレーキを使いたくないし、ゆっくり安全に走りたくなります。

そこで雨の日にウォーターフェード現象を起こさないためには、スピードを通常の半分に落とす事です。雨の日にスピードを半分に落とせば落とす前より半分の制動距離で済みます。この他にはブレーキをたまに踏んでパットとローターの間の水切りをしてあげることも重要です。

パットには熱で発生したガスを抜くための穴が無数に空いているので、冠水路を走るとパットに水が染み込み水浸し状態ですから、浸水で効きが悪くなったり、片効きになったり、グーといういやなブレーキ音がするときも あります。

フェード現象回避に特別な技術はいりません

フェード現象は車を運転していると非常に怖い現象です。しかし運転方法で回避する事が可能ですから、自分の運転を見直し下り坂でブレーキを多用しているようでしたら、直ぐに運転方法を見直しましょう。

車の事故でフェード現象による重大事故は非常に多く発生しています。特にトラックやバスなどはその被害も大きくなるので、ブレーキの使い方には注意が必要になります。

見晴らしの良い山道をドライブするのは非常に気持ちも良いです。ブレーキの使い方に注意して安全運転を心がけましょう。

初回公開日:2018年02月08日

記載されている内容は2018年02月08日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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