アンダーステアの特徴とオーバーステアとの違い・対策方法
更新日:2024年06月19日
アンダーステアの特徴
FF車(フロントエンジンで前輪駆動の自動車)を運転していて高速でコーナーに侵入した際に、コーナーがきついカーブでハンドルを切ってアクセルを踏んでいるのに、自動車が進行方向へと曲がらずに、曲がりたい方向から外側へと膨らんでいく「怖い」経験をされたことは無いでしょうか。これがアンダーステアの状態です。
このままアンダーステア状態で、ハンドルをいっぱいに切ったまま、無理にアクセルを踏み続ければ、コーナーを曲がれずに自動車は外側へと膨らみガードレールへと突き進んでしまいます。あるいは対向車と正面衝突してしまうか、そのままコースアウトしてしまうことでしょう。
アンダーステア状態を続けるFF車が道路の外側にあるガードレールへと突っ込む前に、曲がれない「恐怖に逆らわず」にドライバーが素直にアクセルを緩めれば、自動車は再び進行方向へと進み始めます。アンダーステアのメカニズムを説明致しましょう。
アンダーステアのメカニズム
コーナーを高速で曲がろうとするアンダーステア状態の自動車は、進行方向とは真反対の外側に広がろうとする「遠心力」を受けます。FF車の前輪駆動輪のグリップ力よりも、外側へ向かう遠心力が上回ってしまうと、自動車は外側へと膨らんでしまいます。これがアンダーステアのメカニズムです。
もしアンダーステア状態に陥ってしまった場合は、慌てず素直にアクセルをオフしましょう。すると、エンジンブレーキで自動車の荷重は前輪駆動輪へと移動し、荷重移動でグリップ力を取り戻した前輪駆動輪は、まるでグリップというで爪で地面を捕らえたかのように、自動車はぐいぐい進行方向へ曲がれるようになります。
ただし、アンダーステア状態でフロントに荷重移動させるフットブレーキの使用は、注意が必要です。高速回転を続ける駆動輪をフットブレーキで急激ロックさせると、自動車は不安定な挙動を得るので、制御困難な危険状態に陥ってしまうでしょう。
バイク
2輪で走行するバイクの駆動輪は後輪ですが、ブレーキングとハンドリングで荷重移動を変化させる4輪自動車の走行特性に加えて、2輪バイクを操るライダーの態勢によって積極的に荷重を変化させる走行を楽しめるのがバイクの特徴です。
起伏の激しい峠のRコーナーで、荷重移動のために進行方向ギリギリへとバイクを傾けたハングオン態勢で、高速走行の醍醐味を楽しむライダーを見かけたこともあるでしょう。
軽くてパワーのある2輪バイクの場合、コーナー速度とアクセルバランスによる荷重の変化が顕著に表れるので、バランスを崩したバイクの転倒は即重大な事故に直結します。走り好きなライダーならば外側に膨らむアンダーステアと、内側に曲がり過ぎるオーバーステアの両方の「怖さ」を経験した人も多いでしょう。
もう一つ2輪バイクにおける最大の特徴は、軽いボディに搭載されたパワーのあるエンジンから繰り出される加速のパワーでしょう。
FF車
FF駆動車の最初のFはフロント(FRONT)エンジンのF、次のFはフロント駆動輪のFを意味しています。FF車はフロントにあるエンジン配置によって、フロントヘビーの状態にあります。また、FF車は駆動輪が前輪ですので、フロント荷重を利用したグリップ力は理にかなっていると言えますが、重いフロントは遠心力の影響を受けるのでアンダーステアが強い傾向にあります。
しかしながらFF車の特徴として、後輪へのドライブシャフトが無いので自動車の室内空間が広く取り易いことと、アンダーステアはアクセルを緩めることで回避できる理由で安全性が高いことから、多くの自動車に採用されている方式であることも納得ができるでしょう。
CX5
近年、高いデザイン性に力を注いでいるマツダが販売するCX5は、2012年の発売以降、現在もを誇るクロスオーバー系SUV車で、軽量でありながらも街乗りには十分なボディ強度を誇るモノコック構造に加えて、磨きをかけてより進化したSKYACTIVEエンジン技術をコラボした高い燃費性能が目を引きます。
また、他のSUV車に比較しての低重心特性から「世界のドライバーに運転を楽しんでもらいたい」というコンセプトを搭載して、マツダならではの自動車に仕上げた点も、2017年のフルモデルチェンジでより一層のを予感させます。
一方でマツダCX5は、FF駆動方式(2WD)ですので、フロントヘビーなアンダーステア特性を持つ車種と言えます。4WD仕様車も基本的にはフロントヘビーのFFと同じアンダーステア傾向の自動車の特性を持ちます。
アンダーステアとオーバーステアの違い
進行方向から外側に膨らむアンダーステアに対して、オーバーステアは内側へと向かう状態になります。オーバーステアの特徴を持つ自動車として、RR駆動のポルシェがあげられるでしょう。RR駆動車は、後輪駆動でエンジンはリアに配置されています。一方フロントにはエンジンなどの重量物がなくトランク収納になっていてとても軽いのが特徴です。
RR駆動のポルシェは軽いフロントのノーズは向きが変え易い一方で、ステアリングで曲がるという自動車の概念は根本から覆されます。リアのエンジン荷重でトラクションを増した後輪のアクセルを踏み込むと、オーバーステアのフロントノーズに対して、リアは遠心力に振り回されるようにクルマのお尻が流れます。
ポルシェはオーバーステアのフロントとパワフルなアンダーステアのリアを併せ持ったクルマです。高速走行で乗りこなすにはクルマの荷重移動が必要で、オーバーステアが強いとスピンしてしまいます。
アンダーステアの対策方法
アンダーステアのメカニズムは、タイヤのグリップ力が遠心力に負けることで起きるのですから、アクセルを緩めることで荷重がフロントへと移動すれば、タイヤのグリップ力が遠心力を上回りクルマは進行方向へと曲がり始めます。
高速でカーブに進入してから「曲がらない」というアンダーステアに陥ったら、素直にアクセルを緩めましょう。「曲がれ」という精神的な無理な運転は重大事故へとつながってしまいます。また、アンダーステアからの回避は、クルマの挙動を不安定にするフットブレーキではなく、アクセルオフを行いましょう。
アクセルオフで荷重を得たフロントタイヤが、アンダーステア状態にあったクルマを進行方向へと引っ張ります。
アンダーステアの原因
アンダーステアの原因として、クルマの荷重が大きく影響します。フロントヘビーのFF駆動車に電子式やメカ式のヘリカルLSD(俗にいうノンスリ)を搭載したとしても、全く荷重を失ってしまった駆動輪ではカーブを高速で曲がることはできません。これは、電子制御デフを搭載した4輪駆動のランエボでさえも、荷重なしでは高速で曲がることが難しいことを意味しています。
アンダーステア状態のクルマはアクセルを緩めることで、エンジンブレーキの作用によってフロントへ荷重が移動したFF車や4輪駆動車は、駆動輪がタイヤのグリップ力で地面を捕らえるように、クルマが進行方向へと曲がり始めます。
また、コーナー直前で強くブレーキングすることで、クルマは進行方向となる前輪に大きな荷重を得ることが可能になり、クルマが面白いように曲がることを体感できるでしょう。
ドリフト中はアンダーステアなのか
通常グリップ走行を行うクルマは、アウトコースから侵入したカーブの手前のブレーキングで十分に減速して、インコースを通って徐々に加速してアウトコースへと抜けていきます。
一方ドリフト走行は、駆動輪の回転数を落とさないで、駆動輪を滑らせながらカーブを高速で走り抜けるドライビングテクニック。ドリフト中のクルマがアンダーステアかオーバーステアかは、運転する自動車の構造特性によって異なります。
駆動方式とアンダーステアの傾向
4つのタイヤを持つクルマは、エンジン配置と駆動輪の特性によってFF駆動車、4輪駆動車(4WD)、FR駆動車、RR駆動車、MR駆動車の5つに分類できます。また、ドリフト走行とそれぞれのクルマの状態がアンダーステア傾向なのか、オーバーステア傾向なのかという疑問について考えてみましょう。
FF駆動車ドリフトのアンダーステア
フロントが重いFF車でのドリフトは、前輪さえグリップできれば、ハンドブレーキを引いてリヤを滑らせることでドリフト走行を行えます。FF車の場合、雪道でなければある程度の速度が必要で、コーナー手前で強くブレーキングすることで、荷重を受けた前輪はより大きなトラクションを発生することができ、ここでリヤをロックさせるとクルマは進行方向へ面白いように曲がります。
しかしながら前輪が荷重を失ってしまった場合は、遠心力に逆らえずに外側へと大きく膨らむアンダーステアに陥ってしまいます。また、常に負荷がかかる前輪タイヤだけが消耗が大きいというのも、FF駆動車の特徴です。
4輪駆動(4WD)のアンダーステア
FF車と同じにフロントヘビーな4輪駆動車は、コーナー手前のブレーキングで大きな荷重をフロントに得られると、強いグリップ力を得た前輪が地面に吸い付くように曲がり始めると共に、荷重の抜けたリアは遠心力に負けて、リアタイヤが流れ始めてクルマのお尻も流れ始めます。
タイヤの悲鳴のようなキーキー音を感じながら、高速走行でパワーのある4輪駆動車が繰り出す4輪ドリフトは迫力がありますが、一方でフロント荷重を失ってアンダーステア状態に陥ってしまった4輪駆動車は、アクセルを弱めてひたすら前輪のグリップ力の回復を待つしか方法はありません。
また、4輪が直進方向を向いて強力なトルクによるフル加速の高速走行から、急激なブレーキングで一気にフロント荷重を行った後、前輪デフを利かせながらゆっくりとアクセルオンすると同時に、サイドブレーキで後輪をロックすると、クルマは面白いようにノーズの向きを変えて曲がり始めます。
FR駆動車
FR駆動車はフロントにエンジン配置を持ちながら、リアの後輪が駆動輪となる構造を持つクルマです。FF車と同じにフロントヘビーなFR車ですが、トラクション専用になる後輪と、ステアリング(ハンドル操作)専用になる前輪との役割分担で、それぞれのタイヤの働きを専用化できる点が大きな特徴です。
駆動輪と操舵輪が一体でアンダーステア傾向が強いFF車に比べて、強い後輪のトラクションと、素直なステアリングフィーリングを伝えてくれる前輪によって、走り好きなドライバーに好まれるのがFR駆動車です。
FR駆動車も前輪のステアリングで曲がるにはフロントタイヤ荷重が必要になりますが、パワースライドする後輪のアクセルワークによるクルマの荷重移動と、前輪のステアリング操作をコントロールし易いFR駆動車は、ドリフト走行を楽しみ易いクルマだと言えます。
RR駆動車
ポルシェなどリアにエンジンを配置して後輪駆動のRR駆動車は、リアヘビーで後輪のトラクションを重視した構造からリアがアンダーステア傾向なのに対して、トランク収納だけという軽いフロントはオーバーステア傾向という二つの顔を併せ持つクルマだと言えます。
FR駆動車に比べてフロントのオーバーステアの傾向が強いポルシェを乗りこなすには、アクセルワークに加えて、コーナー手前のブレーキングによる荷重移動を意識した運転技術が必要でしょう。フロントの鋭いオーバーステア傾向と、パワフルなトラクションが生むアンダーステア傾向のリヤを併せ持つポルシェの魅力は、多くのドライバーを魅了しています。
MR駆動車
トヨタのMR2やMRSを始め、ホンダのNSXなどエンジンを中央に配置したミッドシップで後輪駆動のMR駆動車の前後の荷重バランスは均しく、MR車はグリップ走行でカーブを高速で走るために作られたクルマだと言えるでしょう。
一方で、オーバーステア傾向のフロントとアンダーステア傾向のリアのバランス特性を、アクセルオフやブレーキングの荷重移動で高次元でコントロールすることは物理的には可能でしょうが、あまりにもバランスの良すぎたクルマの構造はスピンを誘発しますので、ドリフトを楽しむことは困難と言えるでしょう。
スノボに見る荷重移動
雪の傾斜面を滑降するスノボ(スノーボード)に乗ると、「曲がる」と「曲がらない」を身をもって感じることができるでしょう。前側に身体を傾けるとスノボは行きたい方向へ気持ちよく曲がってくれるのですが、斜面の恐怖で身体がのけ反ると、荷重は自然と後側へと移動します。
「恐怖」に負けて、荷重が後ろに移動してしまった状態では、荷重の抜けたフロントをいくら操作しても、スノボは一向に曲がってはくれません。
クルマに例えると、前かがみの状態がFF駆動車のようなフロントヘビーの状態で、後ろに荷重が乗った状態がRR駆動車のような状態だと言えるでしょう。FF荷重ではぐいぐい進行方向へとスノボは曲がります。
しかし、RR荷重では進行方向へは上手く曲がりませんが、スノボのノーズだけは向きを変えることができます。ただ実際のクルマと異なる点は、タイヤとなる駆動輪がないことです。
クルマが曲がるとは?
クルマを運転していると、ハンドル(ステアリング)を切った方向にクルマは曲がりますが、曲がるという動作にはいくつかのメカニズムがあります。
ステアリングで曲がる
タイヤのついた車は、ハンドルを切れば当然のように曲がりますが、これはハンドルで操作された前輪タイヤが地面にグリップしているから曲がるので、スノボの例のようにフロント荷重が抜けてしまっている状態ではクルマは曲がることができません。
アンダーステアになる状態は、タイヤのグリップができない状態を意味しています。フロントヘビーなFF車や4輪駆動車の場合、高速で回転している前輪が遠心力に負けてグリップ力が弱まることでアンダーステア状態に陥ります。
アンダーステア状態を回避するにはグリップ力の回復が必須ですが、前輪にグリップ力を与えるにはアクセルをオフしてフロントに荷重を与えてあげることです。
荷重移動を利用する曲がり方
クルマのノーズが曲がり易い状態はオーバーステア状態と言えますが、FR車やRR車は後輪のアクセルワークでクルマのお尻を回してあげることで、クルマの曲がる方向をコントロールできます。アクセルをオフするとクルマの荷重はフロントに移動しますので、ステアリングを操作してスピンを回避できます。
フロントヘビーのFF車や4輪駆動車の場合は、サイドブレーキを意図的に引いて後輪をロックさせることで、フロントをオーバーステア状態にできます。雪道でサイドブレーキを引くと、後輪がノーズを中心に流れて、クルマを急激に旋回することができます。
また、アンダーステア傾向を回避する方法としてカウンターをあてる方法もあります。英語のcounterは反対という意味の言葉で、カーブ侵入直前に進行方向とは逆にステアリングを切って、即座にステアリングを進行方向に戻すことで、ヘビーなフロントを急激に進行方向へ旋回させる方法です。
クルマの特性を肌で感じてみよう!
前輪に荷重が乗ったクルマは、面白いほどに良く曲がる特性をもたらします。高速コーナーを駆け抜ける時の視覚や聴覚(音)、ステアリングを握る手やアクセルに触れる足から伝わる触感、温まったタイヤが放つ独特の臭い(嗅覚)など、身体の五感を通して伝わる刺激や興奮でクルマはドライバーを虜にしてしまいます。
どこか家電製品化してしまっている現代の自動車感の中で、クルマ本来が持つ魅力のトキメキを、ご自身の肌で感じてみましょう。
初回公開日:2018年04月18日
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