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回生ブレーキの特徴と仕組み・効率と回路|自転車/電車

更新日:2024年09月12日

ハイブリッド車や電気自動車など、電気モーターを搭載した乗り物に装備されている回生ブレーキを利用することで、走行燃費の向上のみならず、ブレーキパッドの寿命延命にも役立っています。エネルギー問題には欠かせない回生ブレーキにまつわるお話です。

回生ブレーキの特徴と仕組み・効率と回路|自転車/電車

回生ブレーキの特徴

最近では、ハイブリッド自動車や電気自動車など、自動車にも電気モーターが搭載されています。電気モーターが搭載された自動車には回生ブレーキが備わっていて、走行中にアクセルをオフする、あるいはアクセルを緩めると、回生ブレーキが作動すると同時に電気を発電してバッテリーへ充電することが可能です。

他にも回生ブレーキが利用されているものは?

回生ブレーキは、電気モーターを搭載する電車、エレベーターなどでも古くから利用され、最近では、電気自転車や電動バイクにも備わっています。モーターが発電機として回転する際の抵抗がブレーキとして作用し、回生ブレーキと呼ばれます。回生ブレーキと同時に電気が発電され、バッテリーを搭載することで、電気エネルギーが回収でき、再利用されます。

ガソリン車でも搭載されているパッド式ブレーキやドラム式ブレーキでは摩擦熱として放出されてしまっていたエネルギーですが、回生ブレーキでは、廃棄されていたエネルギーを回収して、再利用できる点で大きく異なります。

回生ブレーキの仕組み・システム

「ブレーキ」は、動いている物体の動きを止めようとする動作を表します。また、「回生」とは生き返ることや、よみがえることを意味します。

ブレーキしてエネルギーを再利用する回生ブレーキとは、そもそも、どんなブレーキなのでしょう。この回生ブレーキを説明するために、まずは電気モーター(電動機)の仕組みについて説明しましょう。

電気モーター(電動機)と回生ブレーキ

電気モーターの基本的な中身は、コイルによって巻かれた鉄心と、それを取り巻く磁石になる物です。日本の小学校では、コイルを巻いた鉄心に電流を流すと、電磁石になるという実験を行いますが、電気モーターはこれを応用した仕組みで、N極、S極を上手く切り替えることで電気モーターは回転をし続けることができます。

また逆に、電気モーターの軸を回すと、電気モーターは電気を発生する発電機になります。通常は、バッテリーに充電された電気を使用して、電気モーター(電動機)を駆動して電気自動車は走行します。また、アクセルをオフ、あるいはアクセルを緩めると、慣性力を持った物体の自動車はそのまま運動(走行)を続けようとします。

つまり、タイヤが惰性走行することで、タイヤの回転が電気モーターの軸を回し、この時の回転抵抗がブレーキとなり、回生ブレーキと呼ばれます。回生ブレーキで発生した電気は、バッテリーへと充電されます。

回生ブレーキシステム

回生ブレーキによって発電された電気エネルギーは、バッテリーが無ければ充電されるどころか、過電圧となって電気回路を壊してしまうか、単なる熱エネルギーとなって放出されてしまうでしょう。ですから、回生ブレーキのシステムにバッテリーは不可欠です。

また、バッテリーが満タンの場合も、それ以上に充電するためのバッテリーが無いのと同じ状態になります。ですので、プリウスなどのブレーキシステムには、ドライバーのアクセルオフ時の状態やブレーキの踏力に応じて回生ブレーキの大きさを制御する、あるいは回生ブレーキを使用しないようにする制御システムが搭載されています。

また、実際にハイブリッド車のプリウスを運転してみてわかることですが、ドライバーが意識せずとも、回生ブレーキは自動的に制御されていて、ガソリン車と同じような感覚で運転できることが優れた点です。新型プリウスでは、より応答性の向上が感じられます。

回生ブレーキの効率

回生ブレーキの効果を、具体的な数字で効率を示すメーカーは、今のところありません。しかしながら、ハイブリッドカーや電気自動車で、実燃費を向上させるカギは、回生ブレーキの使い方に依存するでしょう。燃費の向上には、①発進時のエネルギー量、②走行時のエネルギー量、③減速時のエネルギー回収の効率とバランスが有効だと考えられますが、回生ブレーキが重要な理由について迫りましょう。

運動方程式とエネルギー

ニュートンの運動方程式F=ma(F:力、m:重さ、a:加速度)は有名ですが、F=maにより、急加速は「力Fを増大させる=大きなエネルギーが必要」ということを意味します。つまり、①発進時はゆっくりとした加速が、省エネに有効だと考えられます。また、アクセルオンはエネルギーを使う状態ですので、②走行時はアクセルをできる限りオンしない運転の持続が有効だと言えます。

そして、いったん走行しだしたら、③減速時の惰性によるエネルギー回収効率を高めることが、燃費向上につながると言えますが、抵抗のある回生ブレーキの効率化には、ある程度の速度が必要になります。

燃費向上には、できる限りゆっくりと最高速度に到達するよう加速すれば良いのですが、それだけではアクセルの燃料を節約するだけです。つまり、節約しながら、ある程度の速度に達したら、回生ブレーキによるエネルギー再利用が、燃費向上に大きく貢献すると言えます。

回生ブレーキの回路

回生ブレーキの回路は、モーター軸を回転させた時の抵抗(ブレーキ)によって発生した電気の回収(充電)と再利用ですが、バッテリーが満タンの場合や、過剰な回生電圧による回路損傷を避けるため、単に熱として放出する発電ブレーキとしての機能も伴います。また、回生ブレーキは、抵抗のある電気モーターを回転させる力が必要です。

これは、回転抵抗のあるモーターを惰性で回すのですから、ある程度の速度が出ないと電気は得られないということを意味します。つまり、低回転域での回生ブレーキでは、電力を得ることはできません。

自転車

自転車にも、電動アシスト機能が搭載されたものがタイヤメーカーのブリジストンや、オートバイメーカーのYAMAHA、家電メーカーのパナソニックなど、色々なメーカーが参入して、製造、販売を行っています。

電動自転車は、人がペダルをこぐにも、人力が必要ですが、それ依然に、人の力で自転車自体を起こす必要があり、バッテリーが切れた場合には、ただの重い自転車になってしまいます。

自転車のライトに学ぶ回生ブレーキ

ところで、回生ブレーキの例えとしてモーター型の「自転車のライト」の仕組みが良いでしょう。自転車のライトをタイヤに当てると、ペダルをこぐのが重くなりますが、回転を速めることで、ライトの明るさが強くなります。自転車のライトはモーターに直結していて、タイヤを回転させると、ライトに送られる、発電された電気はより強くなるので、ライトは明るく光ります。

必死にペダルをこげば光るライトも、止まれば消えるように、電動自転車を選ぶ際は「効率」が良いものを選びたいですが、具体的数字は、はっきりとわからない状況です。

でも、電動自転車選定のポイントとして、充電時間と走行できる距離のバランスが、ご使用用途に適したものかに加え、電動自転車自体の「軽さ」がとても重要な要素です。また、回生ブレーキ回路の故障リスクへの考慮も必要です。

価格、バランス、メンテナンス性など、ご自身の用途に適した電動自転車を選びましょう。

電車

大都市のほとんどの電車には回生ブレーキが導入されていて、その目的は電気の回収と再利用です。しかしながら、電車の回生ブレーキは、複数の電車が架線でつながっているので、電力が大きくなるという特徴があります。通常の電車の走行には1kwの家庭用エアコンの1000倍以上の電力が必要とされるほどです。

電車の回生ブレーキ回路は、架線から他の電車へ返却を行うには、車両側の電圧が高い必要があります。これは電気が電圧の高いところから低いところに流れる特性に基づきます。車両が高い電圧を得るには、モーターの発電する電力を高めることを意味しますが、これはブレーキ性能を低下させる、あるいは無効にすることを意味します(回生失効)。

ですので、電車の回生ブレーキ回路は、各車両が走行する環境設備によって、色々な工夫がなされてきました。その例を、大まかにご紹介しましょう。

電車の発電ブレーキ

直線直巻電動機は、高速域では高電圧が発生しますが、低速域では電圧が下がります。また、発電機の発生できる電圧は、発電機の回転数と磁界コイルの強さに比例します。しかしながら、変電所や架線を保護するので、上限電圧は決められています。従いまして、この上限圧を超える電圧は回生できず、捨ててしまう以外には方法はありません。

変電所や架線の上限電圧を超える電力は、回生できないことから、抵抗器へと回路を切り替えて、熱として放出して、大気中に熱エネルギーを廃棄します。これを、一般的には発電ブレーキと呼び、回生ブレーキと区別しています。発電ブレーキは熱として、エネルギーを大気に廃棄しますが、回生ブレーキはバッテリーに充電して再利用が可能です。

電車の電動機の発生電圧を一定にする

本来は、発電機の回転数によって、発電できる電力量は異なりますが、直流直巻回路は電機子チョッパ制御によって、腹巻電動機は界磁チョッパ制御によって、界磁コイルの電流を制御しして、発生電圧を一定に保つことを実現しています。これは、電動機の回転数と磁界の強さに発電電圧が比例するという特性を利用しています。

つまり、電動機は回転数が上がるほど、磁界の強さが強いほど、発電電圧は高くなるのですが、電車の速度が低下すると、電動機の回転数が下がりますので、発電電圧は低くなってしまいます。

ですので、磁界コイルの電流を上げることで磁界が強くなり、発電電圧を高くすることができます。また、電車の速度が速い場合には、逆に磁界コイルの電流を下げて、発電電圧を一定に保つようにするのが制御の狙いです。

電車ではなく、変電所の電圧を制御する

最近の電車は、さらに省エネ性を高めた回生ブレーキシステムを採用しているものがあります。上述のように、これまでは、車両側の電動機の発生電圧を一定に保つ工夫がなされてきましたが、変電所や架線の上限電圧を超えての回生は行えませんでした。固定された架線の上限電圧を超えた場合は、発生電圧は抵抗器へと切り替わり、ただ熱となって廃棄されていました。

これに対し、固定だった変電所の電圧を制御するシステムが開発されました。複数の電車が走行することで、不安定になる車両側の電圧に対して変電所の電圧を変化させることで、今まで以上に回生ブレーキによる再利用の効率が高くなりました。その成果は、今までは捨てられてしまっていたエネルギーの最大80%の再生を実現したほどです。

また、もし電車に回生ブレーキが無ければ、エネルギーロスに加え、摩擦を伴う金属ブレーキ頻度の増大、ブレーキ交換頻度の増大がコストを押し上げます。

回生ブレーキの音の特徴

ハイブリッド車のプリウスを運転していると、いつ回生ブレーキを使用しているかは、走行中は、タイヤが拾うノイズ音によって、インジケーターなしで聞き分けることが難しい程の静音レベルの回生ブレーキ音ですが、電車に乗ると、大きな音の変化を聞き分け易いでしょう。

ガタンゴトンという架線のつなぎ音と共に、軽快に走行している電車は、減速と同時に、通常は回生ブレーキを利用して減速します。高速域では「ヒューン」というな音をしていても、低速になると「ブーン」というような鈍い音に変化してきて、速度がある程度遅くなると、回生ブレーキはOFFされて、静かになります。そして、「キー」という金属音もします。

「キー」という音は、金属の車輪と、金属のブレーキシューがこすり合っている音の特徴です。また、停止後に「プシュー」という音がするのは、圧縮空気を利用しているディスクブレーキを利かせている空気が抜ける時の音です。

勿体ない?回生ブレーキの原理

回生ブレーキの原理を理解する上で、電気エネルギーの存在は必要不可欠でしょう。ところで、電気を使用しないブレーキには、自動車の例では、エンジンブレーキやディスクブレーキなどのメカ式ブレーキがあげられます。まずはメカ式ブレーキを説明しましょう。

エンジンブレーキとディスクブレーキ

自動車のエンジンは、アクセルを踏むことで、燃料をより多く含んだ混合ガスをエンジン内で圧縮して点火して、その爆発力でピストンを動かすことで、回転動力を得ています。

エンジンブレーキは、燃料を送らない状態で、惰性で回転させる際のエンジン内の抵抗がブレーキになる仕組みです。でも、エンジン単体では、回転抵抗による摩擦熱が生じるだけです。また、抵抗を和らげているのがエンジンオイルです。

一方、ディスクブレーキは、回転する金属盤に、ブレーキパッドを直接こすることで、その回転をブレーキするものですが、ディスクブレーキでも摩擦熱が発生し、ブレーキパッドを消耗します。エンジンブレーキもディスクブレーキも、いずれも「熱」が生成されるだけですが、「熱」もエネルギーです。

エネルギー保存の法則と回生ブレーキ

物理の授業で、必ず学ぶのが「エネルギー保存の法則」ですが、物体が持つエネルギーには、運動エネルギー、位置エネルギーの「力学的エネルギー」の他に、熱エネルギーが存在します。エネルギーは消えてなくならないという保存法則にのっとり、運動エネルギーや位置エネルギーの工程にある摩擦で生じた熱は、熱エネルギーとなって大気に放出されてしまいます。

この失われてしまう熱エネルギーを電気エネルギーとして蓄えて、それを再利用しようという考えの下で生まれたのが回生ブレーキです。また、効率が悪いシステムとは、言い換えれば、熱エネルギーが多く発生するエネルギーロスが大きいシステムを意味しますので、効率の悪いシステムほど発熱を伴って熱放出します。

エネルギーを捨てずに再利用しましょうという、勿体ないの精神で生まれたのが回生ブレーキシステムです。

回生ブレーキの恩恵

電車のならず、ハイブリッド車や電気自動車の回生ブレーキで、私たちは知らず知らずのうちに受けている恩恵が他にもあります。フットブレーキで自動車を減速させる際、私たちはブレーキパッドが摩耗していると思うかも知れませんが、その力は油圧などを利用して、ブレーキパッドでは無くて、回生ブレーキを使用するように制御されています。

高速領域では、電気の回生に有効に働く回生ブレーキを利用するように、ドライバーが発生させたブレーキ踏力は、自動車にブレーキシステムを介して、最適に制御されます。これによって、メカ部品のブレーキパッドへの負担は減ることになり、ブレーキパッド寿命を延ばすという効果をもたらします。

メカと電気のコラボを利用して、エネルギー効率を高めよう

このように、電気モーターを搭載して回生ブレーキシステムを搭載した車両は、熱の発生を抑えて、エネルギーの損失を押さえると同時に、発電して電気エネルギーを貯蓄して再利用が可能になるというメリットがあります。さらに、最適制御でメカブレーキの寿命を延ばす大きな働きを持っています。

現在、私たち人類が使用するエネルギーは、古代生物の死骸などが変化した石油や天然ガスなどの化石燃料と、風力や太陽などの自然を利用したエネルギー、科学の力による原子力エネルギーがありますが、回生ブレーキなしでは、これらの効率化は望めないと言えるでしょう。

回生ブレーキは、ハイブリッドカーや電気自動車の燃費を高めるだけでなく、人類のエネルギー枯渇問題に大きく貢献します。ですので「充電満タンでは回生できない」ということを忘れずに、電気モーター搭載車両のフットブレーキをどんどん使って、エネルギーを再利用しましょう。

初回公開日:2018年03月07日

記載されている内容は2018年03月07日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

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