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2017年08月31日

生活保護の場合の車の扱い・車の所有・運転は可能?|名義変更が必要?

生活保護を申請する際に、手持ちの車を手放さないといけないのか。そんな疑問をもつかたのために、生活保護の基本的な考え方から車の取り扱いの基準について説明しています。また、すでに車のローンがある場合や、車の更新を考えている場合の扱いについても説明しています。

生活保護の場合の車の扱い・車の所有・運転は可能?|名義変更が必要?

生活保護の場合の車の扱い

生活保護の場合の車の扱い・車の所有・運転は可能?|名義変更が必要?

資産保有には限度がある

生活保護は、生活保護法という法律に基づいて行なわれており、その第4条において、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」と定められています。

資産の活用とは?

この条文でいう「資産の活用」とは、原則として売却を意味します。売れるものはすべて売ったうえで、それでもなお生活が成り立たないときには生活保護を受ける前提です。厚生労働省の事務次官通知では、「最低生活の内容としてその所有または利用を容認するに適しない資産は、原則として処分させ、最低限度の生活の維持のために活用すること」とされており、次の項目が例外として示されています。

(1)処分よりも保有のほうが生活の維持及び自立の助長に実効があるもの

(2)近い将来において活用されることがほぼ確実であって、かつ処分するよりも保有のほうが生活の維持及び自立の助長に実効があるもの

(3)処分することができないもの

(4)売却代金より売却経費のほうがたかいもの

申請後には資産調査が行われます

生活保護の申請をする際、同時に資産調査の同意書を提出しなければなりません。この同意書を根拠として、近隣市町村にある金融機関や、申請者が勤めている職場に対して県や市の福祉事務所が、本人や家族名義の預貯金等について照会をかけ、本人が申告した内容の「裏」をとります。

この時点で、車の保有がみつかれば、後述する理由がないかぎり申請は却下されることになります。

車の所有・運転は可能?

生活保護の場合の車の扱い・車の所有・運転は可能?|名義変更が必要?

原則として車は処分指導の対象

さきに紹介した原則から言えば、車の保有は認められないことになります。中古車店やディーラーが市中にたくさんありますから、一般的に車の処分が困難であるとは考えにくく、また、車の売却で得る代金よりも経費のほうが高くつくような年式は、そうそうないからです。

とはいえ、さきの例外には「処分するよりも保有しているほうが生活維持及び自立の助長に実効があり」「近い将来活用されることがほぼ確実」という規定がありました。これが実務ではどう解釈されているのでしょうか。

自動車の所有・運転が認められるケース(1)

厚生労働省の通知では、車の取り扱いについて「自動車による以外に通勤する手段がまったくないか、もしくは通勤がきわめて困難である」場合に、車の保有・使用が認められるとされています。通知では、次のようなケースが想定されています。

(1)障害者が自動車により通勤する場合

(2)公共交通機関の利用がいちじるしく困難な者が、通勤に利用する場合

(3)公共交通機関の利用がいちじるしく困難な勤務先への通勤に、利用する場合

(4)深夜勤務等の業務に従事している者が、通勤に利用する場合

ただし「自動車の処分価値が小さく、通勤に必要な範囲の自動車と認められるものであること」とされており、いくら通勤用であっても、3ナンバー車などの高級車は保有を認められないでしょう。どの程度の車なら認められるかは、生活保護を行う県や市の福祉事務所との協議となります。また、「当該勤務収入が、自動車の維持費を大きく上回ること」も条件とされていますから、車を所有するためだけに、あえて公共交通機関のない場所に引っ越したり、勤務先を変更して生活を不安定にすることは、考えないほうがよさそうです。

自動車の所有・運転が認められるケース(2)

おおむね6か月以内に、就労により生活保護から脱却することが確実に見込まれる者であって、保有する自動車の処分価値が小さい場合については、県や市の福祉事務所は処分指導を行わなくともよいとされています。

出典: https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/d... | https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/d...

ただし、この場合も維持費を払えない場合は、すみやかな処分指導を行うこととされており、また、車の使用については認められません。

つまり、失業等で一時的に生活保護になった者で、6か月以内に再就職等で生活保護脱却の見込みがある者については、車の処分まではさせなくてもよい。生活保護期間中の使用については、事故をおこした際の賠償責任等の問題があるから(事故の相手につぐなえないことをわかっていて使用を認めた責任が、行政側に発生するから)、生活保護期間中は、使用はおあずけにしなさい、ということです。

車の運転は認められるか

これまでにみたとおり、車の保有・使用は、あくまでも限定的に認められるものであり、使用にかかる経費は、自動車保険料含めて保護費からやりくりできることが前提です。公共交通機関などが利用できない状況での通勤・通学・通院といった、生活の維持に必要な場合にのみ、認められるといってよいでしょう。

名義変更は必要か?

生活保護の場合の車の扱い・車の所有・運転は可能?|名義変更が必要?

生活保護を申請した本人が継続して利用する場合

生活保護をうける本人が、申請のための資産隠しとして車の名義変更をした場合は、生活保護法第85条により罰せられます。生活保護法第85条には「不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する」とあり、また、悪質な場合は、刑法第246条により罰せられます。いわゆる「詐欺罪」です。刑法第246条は「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する」と定めており、資産隠しを目的として車を名義変更し、役所を騙して生活保護を受給した場合も、これにあたります。

生活保護申請のため本人が手放す場合

生活保護を受けるために本人が車を手放すための名義変更は、問題ありません。但し、友人や知人に対して、これからも使わせることを約束して名義変更(譲渡)を行うような場合は、資産隠しとして認定される可能性があります。

車の購入は認められるか

生活保護の場合の車の扱い・車の所有・運転は可能?|名義変更が必要?

すでに保有・使用を認められていることが条件

車の購入については、すでに保有・使用が認められていることが条件です。その車が使用に耐えない状態となっていることが前提であり、そのため、通知では購入ではなく「更新(=買い替え)」と表記されています。また、通勤・通院に必要な範囲のものであり、保護費のやりくりによって生じた預貯金の範囲で確実に維持していけるものであることも、条件とされます。また、生活保護申請の際に隠していたタンス預金等、不正な資金ではないことの調査を行うこととされています。

事前の福祉事務所の承認が必要

車の更新にあたっては、生活保護を行う県や市の福祉事務所の事前の同意が必要です。さきほども触れたタンス預金等の隠し資産によるものではないことの調査が、この時点で行われます。調査の結果、問題なければ更新が認められます。買い換えたいからといって、車の販売店や中古車店と先に交渉して、トラブルを起こすことのないようにしましょう。

ローンを組んでいる場合、ローンを組む場合

生活保護申請前にローンを組んでいる場合

ローンで車を購入している場合は、まず資産の活用の原則から、通勤等で車の保有・使用が認められない場合、車を処分してローンの返済にあて、その残額を、月々の生活保護費から返済することになります。

車の事例ではありませんが、住宅ローンを組んでいる者の生活保護申請については、ローン完済前の住宅を保有したままの生活保護受給は原則として認めないこととされています。車のローンについても、同様に解釈されます。

ローンをこれから組む場合

厚生労働省の通知によれば、「結果として生活にあてるべき生活保護費からローンの返済を行うこととなり、原則として生活保護の適用は行うべきではない」とされていますので、ローンは組めないということになります。

すでに生活保護受給前から所有しているクレジットカード等は、継続して利用できますが、新規に車を購入するにあたりローンを信販会社に申請しても、本人の資力が審査される時点で、申請がとおらないことになります。

ここで少しでも有利になろうと、生活保護受給者であることを隠したり、むかしの勤務先にまだ勤務しているといったウソをつくことは、犯罪になりますので、しょうじきに申告するようにしましょう。

自転車等の取扱い

自動車に関することが今回の記事のメインですが、生活保護における自転車や公共交通機関の取り扱いについても、簡単に説明します。なお、小中学校の通学に必要な費用については、教育扶助というかたちで追加支出されますが、就労に関するものは経費として認められる範囲を示すものであり、あくまでも本人のやりくりによってまかなうのが前提です。

就労に必要なものの取り扱い

就労(通勤)に必要な自転車や原動機付自転車(原付)については、「就労に必要不可欠であり、かつその購入によって収入が増加することが認められるとき」は購入を認めてよいとされています。

通学用自転車の取り扱い

通学に際し他の交通機関がなく、その地域のほとんどすべての学童が通学に自転車を利用している場合には、購入を認めてよいとされています。また、学校の指導によりヘルメットの着用が義務付けられている場合は、ヘルメットの購入費も支出されます。

通学用定期券の取り扱い

通学のために交通費を要する場合は、年間をつうじて最も経済的な手段・経路をとらせることとされており、公共交通機関のうち最も安価なものを選定し、1か年定期券や6か月定期券といった、最も割引率の高い定期券の購入費用が支給されます。

ここで問題は、1年間の定期券代が、自転車の購入費用を下回る場合は、自転車が「最も経済的な手段」ではないため、自転車の購入費用は支出されないということです。

基本的に車の所有は困難

いっけん、車と直接関係のなさそうな自転車や公共交通機関の話を持ち出しましたが、読んで気づかれたとおり「最も経済的な支出であること」という原則があり、その範囲で生活保護は支給されます。車の保有・使用についても、それが合理的であり、働いて収入を得るために必要かどうかが問題となります。この点を理解すると、県や市の福祉事務所に行ったさい、説明をうけてもまごつくことは少なくなるでしょう。

まずは行政に相談を

生活保護が本当に必要だと思われる状況になったときは、まず生活保護を担当する県や市の福祉事務所に相談するようにしましょう。そのうえで、車の保有・使用が認められるかどうか、話をもちかけてみることです。すでに紹介したとおり、車の保有・使用については、一定の基準が示されており、それに基づいた指導が行われます。

愛車を手放すのはつらいかもしれませんが、だからと言って隠したりウソを申告するのはもってのほかです。後々のトラブルをさけるためにも、冷静に判断するようにしましょう。

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