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直噴エンジンの仕組み・メリットとデメリット・カーボン除去対策

更新日:2024年09月10日

直噴エンジンについて、成り立ちや仕組み、メリットとデメリット、またカーボン除去対策などを解説します。従来のポート噴射式とは異なり、高圧インジェクターによって気化した燃料を、気筒内に直接噴霧する、画期的な技術を実用化した、直噴エンジンの耳寄りな情報を紹介します。

直噴エンジンの仕組み・メリットとデメリット・カーボン除去対策

直噴エンジンの仕組みについて

自動車がこの世に誕生してから、早くも120年余りの年月が経ち、自動車にたずさわってきた多くの優秀な技術者たちは、それぞれの時代に求められる性能の追求や信頼性の向上などに情熱をかけて懸命に取り組んできました。

その結果、現在では高性能な電気自動車や燃料電池車がすでに実用化され、環境にやさしく経済的な車として普及に期待が高まっています。

また、最新の自動車業界の動向としては、車を単なる移動手段ではなく人々の生活をいろいろな方面からサポートし、人生をより豊かにするためのスマートなツールとして、AI(人工知能)を搭載した学習能力を持つ車が提案され、近々実用化されるといいます。

直噴は歴史と共に積み上げられたテクノロジーの結晶

自動車のエンジン技術では、現在、世界の各自動車メーカーで「直噴エンジン」の普及が広まっています。直噴エンジンとは、燃料を効率よくエネルギーに変えることのできる技術として開発された物で、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンといった「内燃機関(ないねんきかん)」に使われる燃料供給システムとして、非常に長い歴史を持っています。

自動車工学において直噴エンジンは、過去にも多くの自動車メーカーによって幾度となく実用化され、普及が試みられましたが、これまではメーカーの期待どおりの実績を上げられず、市販された車はあえなく消滅してしまいました。

技術革新によってエンジンのスタンダードに

しかし、近年になって直噴エンジンの技術は急激に進化を遂げ、現在では、驚くことに、直噴エンジンが多くのメーカーでスタンダードとなっています。一体なぜ、自動車メーカーは直噴エンジンに注目し、これほどの勢いで普及を進めてきたでしょうか。

そのような直噴エンジンについて、成り立ちや仕組み、メリットとデメリット、また直噴エンジンのカーボン除去対策などを解説していきます。

直噴エンジンとは

現在の自動車業界で言われている直噴エンジンとは、ガソリンを燃料とする「ガソリン直噴エンジン」(ディーゼルエンジンは元来から直噴エンジンです)のことです。

ガソリン直噴エンジンとはその名のとおり、燃料であるガソリンをエンジン内部に直接噴射する燃料供給方式のことです。

従来のエンジンと何が違うの?

従来のガソリンエンジンと、ガソリン直噴エンジンとの違いは、燃料を噴射するインジェクターと呼ばれる部品が設置されている場所にあります。

それは、インジェクターがインテークマニホールド(エンジン内に空気を送り込むためのパイプ)に空けられた、燃料を送り込むための穴(ポート)に設置されているか(ポート噴射式)、エンジンの燃焼室内に燃料を直接噴射するために(直噴式)、インジェクターがシリンダーヘッド部に設置されているかの違いです。

従来のエンジンの仕組みとは

自動車のエンジンは、エンジン内で燃料と空気を燃焼させることでエネルギーを生み出す「熱機関(ねつきかん)」の一種で、その結果、エンジン内には燃料を燃やした後の「燃焼ガス(排気ガス)」が発生します。

燃料と空気の両方を圧縮するポート噴射式

従来の「ポート噴射式」ガソリンエンジンの仕組みは、まず、エンジンに空気を送り込む、インテークマニフォールドに空けられたポートから、インジェクターが燃料を噴射し、その結果、燃料(ガソリン)と空気が混じった「混合気(こんごうき)」を、エンジンが吸い込みます。【吸気】

そしてエンジン内部のシリンダーをピストンが上昇して、燃焼室内で燃料と空気(混合気)を「圧縮」し、圧縮された混合気に点火して爆発させ、エネルギーを発生します。【膨張】

さらに、再びシリンダー内をピストンが上昇して、爆発によって発生した燃焼ガスを外に排出します。【排気】

従来のエンジンではノッキングを起こしやすい

このように、従来のエンジンでは、ピストンが燃焼室内でガソリンと空気の両方を圧縮します。空気は圧縮されると熱を発生するという性質があることから、圧縮力が強すぎると、高温により混合気内のガソリンが自然発火し、エンジンが点火する前に爆発してしまう、デトネーション(異常燃焼)を発生させます。

その結果、シリンダー内でピストンが振動し、ガタガタと音を立てるノッキング現象や、エンジン内部の破損といった問題が生じます。

直噴エンジンの仕組みとは

これに対し、ガソリン直噴エンジンでは、ピストンが燃焼室内で空気のみを圧縮し、そこへシリンダーヘッドに設けられたインジェクターが燃料を噴射します。

気化した燃料を噴霧することで圧縮比が高まる

まず、エンジンが、インテークマニフォールドからシリンダー内へと空気を吸い込みます「吸気」。次にシリンダー内をピストンが上昇し、吸い込まれた空気を燃焼室内で圧縮します。【圧縮(第一段階】

そこへ、直噴エンジン特有の高圧インジェクターが、液体状のガソリンに高圧を掛けて、燃焼室内に霧状に噴霧します。その際、液体が気化された瞬間に周囲の熱を吸収する性質が働いて、シリンダー内の空気を冷やします。そのため、圧縮による高温で膨張した空気が凝縮され、さらに強い力で空気が圧縮されます。【圧縮(第二段階)】

高圧インジェクターで気化された燃料の噴霧により、シリンダー内の温度が下がった結果、より強く圧縮された空気に燃料を点火し爆発させることで、従来のエンジンに比べて大きなエネルギーを発生させることができます「膨張」。そしてピストンが再び上昇し、発生した燃焼ガスを外へ排出します。【排気】

空気のみを圧縮するためノッキングが起きにくい

このように、直噴エンジンでは、ピストンが燃焼室内で空気のみを圧縮するため、従来のポート噴射式エンジンみたいに、シリンダー内の高温による異常燃焼が起こらず、エンジン内の損傷の原因となるノッキング現象が発生しにくくなります。

さらに、ガソリンを燃焼室内に直接、霧状に噴霧することで、シリンダー内を冷却して空気の熱膨張を抑え、その分、より強い圧縮力を掛けた状態で空気に燃料を点火し、爆発させることから、同じ量の燃料でも、従来のエンジンに比べて大きなエネルギーを発生することができます。

直噴エンジンのメリットとデメリットについて

ガソリン直噴エンジンは、従来のポート噴射式エンジンとは違って、ピストンが燃焼室内で空気のみを圧縮して、そこに高圧インジェクターによって霧状にガソリンを噴霧し、爆発させるエンジンです。

そのため、燃焼室内の高温によって燃料が自然発火するデトネーション(異常燃焼)が原因となるエンジンのノッキング現象が起きにくいため、圧縮比を高く設定できるというメリットがあります。

圧縮比とは、燃焼室内でピストンが空気を圧縮する力の強さを意味し、圧縮比が高いほどエンジンの燃焼効率が良くなり、同じ量の燃料でもより強いエネルギーを発生させることができます。

ガソリン直噴エンジンには、具体的に次のようなメリットがあります。

メリット①燃費と出力の向上

直噴エンジンでは、燃焼室内で空気のみを圧縮するためにノッキングが起きにくいことと、燃焼室内に直接、高圧インジェクターにより燃料を気化させて噴霧することで、気化熱によってシリンダー内を冷却して温度が下がり、エンジンの圧縮比をより高く設定することができます。

また、圧縮比が高い分、それだけ効率よく燃料を燃やしてエネルギーを生み出せるため、少ない量の燃料でも十分なパワーを発揮し、低燃費とパワーアップを両立させることができます。

メリット②ターボによるダウンサイジング

直噴エンジンのメリットとして、現在、最も注目を集めているのは、その構造上、ターボチャージャーとの相性が抜群に良いことです。

前述のように、直噴エンジンでは空気のみを圧縮するため、デトネーションが起こりにくく、ノッキングによるエンジン破損といった問題が少ないことから、高い圧縮比の設定が可能です。

また、ターボチャージャーは、圧縮した空気をエンジンに送り込むことで、強力なパワーを発揮させるため、エンジンが高圧縮になりやすく、従来のポート噴射式エンジンでは、高温によるデトネーションの問題が発生し、それを避けるためには、通常よりも圧縮比を下げる必要があり、ターボによるせっかくのパワーアップ効果が、十分に発揮できませんでした。

ターボがダウンサイジングによる出力低下を防ぐ

直噴エンジンでは、圧縮比を上げてもデトネーションが起きにくいため、ターボチャージャーの性能を十分に発揮させることができ、特にターボの効きが悪い低回転域では、直噴での、高圧縮によるトルクアップが実現し、あらゆる速度域で力強い走りが可能となります。

さらに高い圧縮比の設定と、ターボによる高回転での力強さから、小さな排気量でも十分なパワーを発揮させることができ、それにより、エンジンのダウンサイジング化が可能となり、パワーを犠牲にせずに、低燃費と排出ガスの削減が期待できます。

直噴エンジンのデメリット①コストが高い

ガソリン直噴エンジンには、メリットばかりではなくデメリットもあり、その一つが、直噴化によりエンジンの製造コストが高くなってしまうことです。

直噴エンジンに使用される高圧インジェクターは、インジェクター自体の構造が複雑で、またガソリンを霧状にするために必要な高圧ポンプや、制御するコンピューターなどが必要なためコストがかさみ、価格の安い車には搭載できません。

デメリット②エンジン内に煤(すす)が発生する

直噴エンジンでは、燃焼室内に直接、燃料を霧化して噴霧するその仕組みから、従来のポート噴射式に比べて、エンジン内に、燃料の燃え残りである「煤(すす:カーボン)」が発生しやすいという問題があります。

煤は、排気ガス中に黒煙を発生させ、PM2.5(粒子状物質)といった有害物質を増加させます。また燃焼室内の煤は、エンジンオイルによって回収されるために、オイルの汚れが激しく、結果的に交換時期が短くなります。

さらに、煤は燃焼室内に溜まって、故障などのトラブルを発生させる原因となります。特に、直噴エンジン特有の高圧インジェクターノズルに煤が付着すると、適正な燃料噴射ができなくなるため、燃費が悪化したり、パワーダウンやエンストなど不調の原因となります。

デメリット③希薄燃焼ではNOxが増加する

直噴エンジンでは、通常よりも空燃比(A/F:燃焼させる空気と燃料との割合)が薄い状態、燃料に対して空気の割合が多い「希薄燃焼(きはくねんしょう:リーンバーン)」が可能で、燃費の向上に有効だとして注目を集めました。

しかし、希薄燃焼を行うとさらに燃焼室内で煤が発生しやすいため、排気ガス中のNOxの量が増加し、環境性能が悪化してしまいます。また、希薄燃焼を行った場合は、従来の三元触媒では排気ガスの浄化ができず、NOx専用の触媒装置の追加が必要なために製造コストが増えます。

さらに、近年の排気ガス規制の強化により、希薄燃焼を採用した直噴エンジンでは規制をクリアできなくなったため、現在販売されている直噴エンジン車は、全て従来のストイキ燃焼(均質燃焼)を採用しています。

直噴エンジンのカーボン除去対策について

直噴エンジンでは、従来のポート噴射式に比べて煤(すす:カーボン)が発生しやすく、エンジン内にカーボンが溜まって、故障などのトラブルを発生しやすいことから、エンジン内に堆積(たいせき)したカーボンを除去する方法が推奨されています。

インジェクターノズルのカーボン除去方法

直噴エンジンのカーボン堆積で、最も問題なのが、直噴エンジンには欠かせない高圧インジェクターノズルの先端部に、タール、ピッチ、スラッジなどのカーボンが付着してしまうことです。

この高圧インジェクターノズルのカーボン汚れがひどくなると、エンジンがパワーダウンしたり、燃費やエンジンのかかりが悪くなる、アイドリングが不安定になる、排気ガスの質が悪化するなどのトラブルが発生しやすくなります。

インジェクターノズルの洗浄ならReSpec.

そこで、インジェクターノズルを特殊な洗浄液と超音波洗浄技術を使用した、ReSpec.を行うことで、汚れのひどいインジェクターをきれいに洗浄し、インジェクターを交換せずに、新品と同等の性能を取り戻すことができます。

ReSpec.は超音波洗浄のみでの料金は、インジェクター1本あたり3,400円で、また、洗浄に加えて性能テストレポートの発行サービスを利用した場合は、1本あたり4,200円です。

直噴エンジンへのガソリン添加剤の役割と効果

直噴エンジンの性能低下などのトラブルを解消するとして、エンジン内部の洗浄を目的とした「ガソリン添加剤」が販売されています。

OH+PRODUCTSのガソリン添加剤GA-01

OH+PRODUCTSのガソリン添加剤、GA-01は、強力洗浄効果で直噴エンジンに溜まったカーボン汚れをキレイに洗浄し、本来の高性能を取り戻します。

GA-01の特徴はその優れた洗浄効果です。特に直噴エンジンではカーボンが堆積しやすい、ピストンヘッドのひどい汚れをキレイに洗浄してくれます。使い方は至ってカンタンで、ガソリンを満タンにした際に、給油口から入れるだけという手軽さです。

たった2回の給油時にGA-01を使用するだけで、汚れの溜まったエンジン内部をスッキリと洗浄し、直噴エンジン本来のパワーや燃費性能など、新車時と変わらない性能へとよみがえらせます。

価格は150ml入り2本セットで3,888円です。

直噴エンジンのメンテナンス方法について

直噴エンジンのメンテナンスのポイントについて説明します。

吸気系の汚れには要注意

直噴エンジンに多いパワーダウンや、燃費性能およびエンジン始動性の悪化、排気ガスの汚れなどのトラブルの原因は、エンジン内で発生した煤によるカーボンの堆積です。

これらエンジンのカーボン汚れを洗浄するために、インジェクターノズルの超音波洗浄や、ガソリン添加剤による、シリンダーやピストンヘッドの洗浄を行いますが、このような方法では対処できないのが、燃焼ガスの吹き返しによって生じる「吸気系へのカーボンの堆積」です。

ビルシュタインR-2000カーボン洗浄システム

インテークマニホールドから吸気バルブまでの経路は、従来のポート噴射式エンジンでは、インジェクターによって噴射されたガソリンによって、自動的に洗浄されます。

ところが、インテークマニホールドから吸気バルブまでの間を、空気のみが通る直噴エンジンでは、その効果はありません。このような吸気系にカーボンがたまると、エンジンが燃焼に必要な空気を十分に取り込むことができず、異常燃焼を起こしたり、極端にパワーが落ちるなど故障の原因となります。

そこで、ビルシュタイン R-2000 カーボンクリーン エンジン洗浄システムを使用して、吸気系に溜まったカーボンを除去します。こちらは専用の機材をエンジンの燃料系統に接続することで、エンジンをアイドリングさせながら、特殊なクリーニング液を循環させてエンジン内部の洗浄を行います。

カーボンクリーニングの価格は、4気筒エンジンの場合19,000円です。

直噴エンジンに合うオイルと交換時期は?

直噴エンジンでは燃焼によって煤が発生しやすく、エンジン内に溜まった煤はエンジンオイルによって取り込まれるため、従来のエンジンよりオイルが汚れやすくなります。

そのため、直噴エンジンではオイル交換のサイクルを早めにすることが推奨され、5,000㎞走行毎に行うのが良いとされています。

また、使用するオイルは、煤を取り除くために洗浄剤が多く添加されたメーカー純正の直噴エンジン専用オイルをします。

ダウンサイジングターボで注目の直噴エンジン

直噴エンジンについて、成り立ちや仕組み、メリットとデメリット、また直噴エンジンのカーボン除去対策などを紹介しました。

燃料をエンジンの燃焼室内に直接噴射する、画期的な燃料供給システムを備えた直噴エンジンは、従来のエンジンと比べて高い圧縮比を設定できることから、燃焼効率に優れたエンジンで、低速域から高速域まで力強い走行性能に加え、優秀な燃費性能を実現しています。

また直噴エンジンはノッキングが起きにくく、高圧縮が可能なことから、ターボチャージャーとの相性が非常に良く、エンジンの排気量を減らし、気筒数を少なくした最新技術、「ダウンサイジングターボ」として、欧州を始め、日本の自動車メーカーでも普及が進んでいます。

直噴エンジンは、自動車の長い歴史の中で積み重ねられてきたエンジン技術の結晶です。あなたもぜひ一度、最新の直噴ダウンサイジングターボ車に試乗して、実際に体験してみましょう。

初回公開日:2018年04月12日

記載されている内容は2018年04月12日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

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