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オイルパンの交換の方法・漏れの対処法とヒーターの特徴

更新日:2024年04月12日

オイルパンについて、構造と仕組み、交換方法とオイル漏れ対策、またオイルパンヒーターの特徴などを解説します。エンジンオイルは車の血液で、エンジンにとって無くてはならない物です。そのようなエンジンオイルの機能を発揮させる、オイルパンの耳寄りな情報を紹介します。

オイルパンの交換の方法・漏れの対処法とヒーターの特徴

オイルパンの構造と仕組みについて

エンジンオイルは「エンジンの血液」と呼ばれ、エンジンを滑らかに動かすための潤滑油として、またエンジンが発生した熱を吸収することでエンジンを冷却するといった役割を持ち、エンジンにはなくてはならない物です。

このエンジンオイルを機能させるための部品に「オイルパン」があります。オイルパンはエンジンの潤滑や冷却などに使用するエンジンオイルを溜めておく部品で、現在市販されている車のほとんどに取り付けられています。

ではこのオイルパンはどのような仕組みでエンジンオイルを機能させているでしょうか。その働きや構造については、ごく一般的なドライバーにはあまり知られていないでしょう。

そのようなオイルパンについて、構造と仕組み、交換方法とオイル漏れ対策、またオイルパンヒーターの特徴などを解説していきます。

オイル循環システムとオイルパン

エンジンオイルにはエンジン内の「潤滑」と「冷却」の他、シリンダーとピストンとの間の「気密保持効果」や燃焼によって発生するカーボンスラッジなどのエンジンの汚れを取り除く「清浄作用」、またエンジン内部の腐食を防ぐ「防錆防食効果」があります。

これらの機能を十分に発揮させるためには、エンジンオイルを常にエンジン全体へと循環させておく必要があります。そのための装置がオイル循環システムです。オイルパンはこのシステムの一部として使用されます。

オイルパンはエンジンの下部に取り付けられている

現在の量産市販車のほとんどに採用されているオイル循環システムでは、オイルパンがエンジン最下部のクランクケースに、底から蓋(ふた)をするような形で取り付けられています。

オイルパンの内部には「サンプ」と呼ばれるくぼみあります。サンプはエンジンオイルを溜めておくためのくぼみで、オイル交換時などにヘッドカバーのオイル注入口から入れたオイルが、エンジン内を通って流れ落ちオイルパンへと溜まる仕組みになっています。

オイルパンのオイルをポンプで汲み上げて循環させる

エンジン下部のオイルパンに溜められたオイルは、「オイルポンプ」によって汲み上げられます。オイルポンプには「オイルストレーナー」という濾過器(ろかき)が設置され、汲み上げる際にオイルを濾過します。さらにその後、オイルは「オイルフィルター」という濾紙(ろし)式のフィルターを通ってからエンジン全体へと行き渡ります。

エンジン内を巡ったオイルは、再びエンジン下部のオイルパンへと流れ落ちていきます。流れ落ちたオイルは再度オイルポンプによって汲み上げられ、オイルストレーナーやオイルフィルターでごみを取り除いてからエンジン内へと送られます。

このように、オイルパンに溜められたオイルをポンプによって循環させるシステムを「ウエットサンプ式」といいます。ウエットサンプ式は、現在市販されているほとんどの車のエンジンのオイル循環システムに採用されています。

オイルパンにオイルを溜めないドライサンプ式

オイルパンで常にオイルを溜めておくウエットサンプ式に対し、オイルパンに流れ落ちたオイルを溜めずに、全てポンプにより回収してエンジン内を循環させるシステムを「ドライサンプ式」といいます。

ドライサンプ式は、オイルパンへと流れ落ちたオイルを「スカベンジポンプ(回収ポンプ)」によって強制的に回収します。回収されたオイルは専用の「オイルリザーバータンク」に溜められ、それを「フィードポンプ(供給ポンプ)」によってエンジン内へと送り込み、オイルを循環させます。

このように、オイルパンのサンプに常にオイルを溜めておく「ウエット(ぬれた)」な方式をウエットサンプ、サンプにオイルを溜めない「ドライ(乾いた)」な方式をドライサンプといいます。

オイルを常に安定供給できるドライサンプ

ウエットサンプ式はオイルパンに常にオイルを溜めておく方式のため、車が高速でカーブを走行した場合などに遠心力でオイルパン内のオイルが傾くことで、ポンプによってオイルを吸い上げられなくなり安定したオイル供給ができなくなることがあります。

これに対し、ドライサンプ式では二つのポンプと専用のリザーバータンクを使用することで、タンク内に十分な量のオイルを確保することができ、エンジン内部に常に安定したオイル供給が可能となります。

ポルシェやフェラーリはドライサンプ式

また、ウエットサンプではオイルパン内のオイルが直接エンジンの熱にさらされるために、オイルの劣化が早いのに対し、ドライサンプでは熱による影響が少ないためにオイルの劣化が穏やかになるメリットもあります。さらにドライサンプではオイルパンの厚みを薄くしてエンジンの重心を下げることができ、車の操縦性を高める効果があります。

しかし、ドライサンプはウエットサンプに比べて構造が複雑で部品点数も多くなるため、製造コストが高くメンテナンスにも気を使うというデメリットがあります。

このような理由から、ポルシェやフェラーリ、日産GT-Rなどの高級高性能スポーツカーやレーシングカーにはドライサンプ式が採用されています。

オイルパンの交換方法について

オイルパンの交換方法について説明します。

オイル漏れの多くがオイルパンからの漏れが原因

オイルパンにオイルを溜めるウエットサンプの場合、エンジンの焼き付きなど深刻なトラブルの元となる「オイル漏れ」の原因が、オイルパンの問題によることが多いです。

走行中の車体底部への打撃によるオイルパンの破損や、オイルパンとクランクケースとを密着させるガスケットやドレンボルトなどの劣化によってオイル漏れが発生している場合は、オイルパン自体やそれらの部品を交換する必要があります。

オイルパンの交換方法

未舗装の悪路を走行した場合に、地面の石などにオイルパンを強く打ちつけて穴が開き、そこからオイル漏れが発生している場合はオイルパンを交換してオイル漏れを修理します。

平坦な場所で車をジャッキアップする

平坦な場所に車を置き、まずガレージジャッキとリジッドラック(通称うま)を使用して車体前方をジャッキアップします(リアエンジン車やミッドシップ車の場合は車体後方)。

オイルを抜く

ヘッドカバーのオイル注入口からポンプで吸い上げる(上抜き)もしくはオイルパンのドレンボルトを抜いて(下抜き)、中のエンジンオイルをすべて抜き取ります。

オイルパンの固定ボルトを抜く

オイルパンを固定する数十個のボルトと位置決め用のナットをすべて外します。ボルトとナットを外しただけではオイルパンとクランクケースの間の隙間を埋めて漏れを防ぐ「液体ガスケット」で強力に接着されているため、オイルパンは外れません。そこでオイルパンセパレーターとハンマーを使用して固まったガスケットをはがします。

固まったガスケットをはがしてオイルパンを取り外す

セパレーターの刃をオイルパン上部のガスケット部分に当て、そのままハンマーで叩いて刃を差し込みガスケットをはがしてオイルパンを取り外します。その際オイルパンとクランクケースとの接地面に傷をつけないように注意しましょう。

残ったガスケットをきれいに取り除く

オイルパンを外したら、まだ接合部に残っているガスケットをポリエチレン製のスクレッパーでこそぎ落としてきれいに取り除きます。

オイルパンに液体ガスケットをたっぷりと塗る

新しいオイルパンの接合面に液体ガスケットを塗ります。まずシリコンオフスプレーを使用して表面の油分を拭き取り、そこへ液体ガスケットをたっぷりと塗っていきます。取り付けボルトの穴は内側までしっかりとガスケットを塗ります。ガスケットの塗り方が少ないと隙間ができ、そこからオイル漏れを起こすのでしっかりと塗っておきます。

新しいオイルパンを取り付ける

ガスケットを塗り終わったら速やかにオイルパンを装着します。長い時間放置すると液体ガスケットの表面が固まり始め、接合部の密着度が低下するので注意しましょう。まずオイルパンの位置決め用のナットを固定し、その後取り付けボルトを締めつけていきます。

オイルパンのボルト締め付けトルクは非常に弱く、8N・mという極低トルクで締め付けていきます。強すぎるとすぐにボルトが折れてしまい、かといって弱すぎると隙間ができてオイル漏れを起こします。

トルクレンチを使用して、適正なトルクでボルトを締め付けオイルパンを固定しましょう。締め付ける順番は対角線上に行います。詳しくは車種ごとの整備マニュアルに記載されています。

半日程度時間を置いてからオイルを入れる

オイルパンを取り付けたら、液体ガスケットが固まるまで半日程度時間を置きます。その後、注入口からオイルを入れて修理完了です。

液体ガスケット

液体ガスケットとは、シリコンを主成分としたペースト状のシール材です。液体ガスケットはチューブ式の容器に入っていて、必要量をオイルパンに塗布することでクランクケースとの接合部の気密性を高め、オイル漏れを防ぎます。

液体ガスケットはオイルパンの接合面に塗布した後、約2分程度で硬化が始まるため、すぐに取り付け作業を始めるのがポイントです。硬化後は耐油性に優れるため、オイルパンに溜まったエンジンオイルが漏れるのを効果的に防ぎます。

オイルパンからの漏れの対処法

オイルパンからエンジンオイルが漏れている場合の対策法について説明します。

ドレンボルトのワッシャーを交換する

オイルパンからのオイル漏れの一つに、オイルパンのドレンボルトからオイルがにじみ出てくるという問題があります。その場合はドレンボルトのワッシャーを新しい物に交換し、ボルト穴との気密性を高めます。

また、オイル交換を行った際はオイル漏れを予防するため、同時にドレンボルトのワッシャーを交換しましょう。

オイルパンヒーターの特徴

量産市販車の寒冷地仕様車などに装着されている、オイルパンヒーターについて説明します。

極寒の環境でエンジンを始動させるために

オイルパンヒーターとは、寒冷地仕様車などに装備されているオイルパン内のエンジンオイルを暖めるための装置です。

エンジンオイルは、外気温の変化でオイルの粘度(ねばり気)が変わるという性質があり、氷点下を下回るような極寒の環境では、エンジンが正常に始動しない場合があります。そこでオイルパン内のエンジンオイルをヒーターによって温めることで、エンジンを始動させやすくする装置がオイルパンヒーターです。

特に点火プラグを持たないディーゼルエンジンでは、燃焼室内の温度がある程度高まらないとエンジンの始動性が悪いため、オイルパンヒーターでオイルを暖めて始動を容易にします。

消防車では、外部コンセントから電源を繋いでオイルパンヒーターを作動させます。そうして事前にオイルを暖めて置くことで、火災発生時にはすぐにエンジンを始動させて出動できるようにしています。

オイルパンが破損した時の対処法について

オイルパンが破損した場合の対処法について説明します。

すぐにエンジンを停止させる

走行中に地面の障害物などにオイルパンをヒットして破損させ、オイルパンに穴が開いてしまった場合は、そこからダバダバと流れ出るようにオイルが漏れ出して、あっという間にエンジン内部のオイルが無くなってしまいます。

そのまま走行を続けるとエンジンが焼き付いてしまうため、オイルパンをヒットしたと感じたらすぐに安全な場所で車を停止させてエンジンを切り、車体下部の状態を見てオイル漏れがないか確認しましょう。

オイル漏れを発見した場合はすぐにロードサービスに連絡し、積載車で修理工場へと運び新しいオイルパンに交換しましょう。

オイルパンボルトの締め付けトルク

オイルパンを固定するボルトの締め付けトルクは非常に弱い8N・mです。強すぎるとボルトが折れてしまったり、また液体ガスケットが漏れてオイルパン内に落ち、故障の原因となるため注意しましょう。

オイルパンを取り付ける際はトルクレンチを使用して、適切なトルクでボルトを締めつけて固定します。

オイルパンの修理費用の目安

オイルパンを修理する際にかかる費用の目安について説明します。

オイルパンの部品価格は約10,000円

オイルパンを交換する際の費用は、オイルパンが約10,000円、液体ガスケットが1,000円の部品代がかかります。また同時にオイル交換をする場合はエンジンオイルを購入する代金が必要です。

エンジンオイルの必要量は搭載されるエンジンによって異なり、総排気量の大きなエンジン程大量に必要です。エンジンオイルの必要量は、総排気量1,400ccの小型車で3.5ℓ、2,000ccで4.5ℓ程度です。また、3,000cc以上の大排気量エンジンでは6~7ℓという大量のエンジンオイルが必要です。

さらにターボエンジンや高性能自然吸気エンジン搭載車は、通常に比べてオイル消費が激しいために、エンジンオイルの必要量が多くなります。

オイルパンの交換工賃は高い

正規ディーラーなどでオイルパンを交換する場合は、作業時間が長いために工賃は高くつきます。

交換に掛かる工賃は、通常は約10,000円程度ですが車種によって異なります。自動車整備の工賃は作業時間の長さに比例するため、車体の構造によりオイルパンにたどり着くために他の部品を取り外さなければならない場合は、その分工賃が高くなります。

オイルパンの漏れ止め方法

オイルパンからオイル漏れが発生した場合の、漏れを止める応急処置の方法について説明します。

オイル漏れ止め剤を使用する

オイルパンのクランクケースとの接合部付近から、エンジンオイルが滲みだしている程度の少量のオイル漏れの場合は、オイルパンを交換修理しなくても漏れを止める方法があります。

それは「エンジンオイル漏れ止め剤」を使用する方法です。このオイル漏れ止め剤はエンジンオイルに混ぜて注入することでオイルパンの接合部に被膜を作り、劣化した液体ガスケットの機能を回復させることで漏れを防ぎます。漏れ止め剤の効果を発揮させるには、同時にエンジンオイルの交換が必要です。

しかし、オイル漏れ止め剤の効果が表れるのは使用後に300~500km以上走行してからですので、即効性はありません。またあくまで応急的な処置のため、ガスケットの劣化が酷く破損してしまっている場合は効果が期待できません。このエンジンオイル漏れ止め剤の価格は非常に安く、1,000円程度から購入が可能です。

エンジンオイル添加剤を使用する

エンジンオイル添加剤は、オイルの粘度を上げて性能を向上させるためのカーケミカルです。オイル添加剤はエンジン内の金属部分に被膜を作ることで、オイル漏れを防止します。そのため、現在使用中のエンジンオイルにそのまま注入して使用できるのがメリットです。

エンジンオイル添加剤は3,000円程度で購入できるので、オイルパンの交換に比べてずっと安い費用でオイル漏れ対策が可能です。

しかし、エンジンオイル添加剤は効果があまり長続きしないため、オイル漏れの根本的な解決にはなりません。そのためオイル漏れを発見したら、症状がひどくならないうちに早めの部品交換がです。

オイルパンはエンジンオイルを機能させる重要部品

オイルパンについて、構造と仕組み、交換方法とオイル漏れ対策、またオイルパンヒーターの特徴などを紹介しました。

エンジンオイルは人間の血液と同じで、エンジンにとってなくてはならない物です。エンジンオイルはエンジンの潤滑や冷却の他に、清浄作用や防錆防食効果といった大切な役割を担っています。そのエンジンオイルを機能させるための重要な部品がオイルパンです。

オイルパンはエンジンの最下部に設置され、エンジンから流れ落ちるオイルの受け皿となります。また、オイルポンプによってエンジン内部にオイルを送り込むために、オイルパンには常にオイルが溜まっています。そのためオイルパンの損傷はオイル漏れの大きな原因となり、発見した場合はすぐに交換が必要です。

オイルパンの交換は作業時間が長く、整備費用が高くつきます。そのため自分でやれば相当に安くなるので、ぜひ挑戦して愛車を賢くメンテナンスしましょう。

初回公開日:2018年05月10日

記載されている内容は2018年05月10日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

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