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ツインスクロールターボの構造と資格・車種別の評判|BMW

更新日:2024年11月12日

ツインスクロールターボについて、その構造と仕組み、車の魅力や、また車種別の評判などを解説します。低回転でのレスポンスが悪い、ターボ特有の「ターボ・ラグ」を解決するために、排気ガスの流入経路を分割して干渉を防ぐ、ツインスクロールターボの耳寄りな情報を紹介します。

ツインスクロールターボの構造と資格・車種別の評判|BMW

ツインスクロールターボの構造について

地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの排出削減を目的に、車のエンジンの総排気量を小さくする「ダウンサイジング化」が、欧州を中心に世界の自動車メーカーで盛んに行われています。

こうしたエンジンのダウンサイジング化に伴う、車の走行性能の低下を防ぐため、かつて1980年代に流行した、ターボ―チャージャーの装着によるパワーアップ技術が、再び注目を集めるようになりました。

従来のターボエンジンの欠点を補う画期的な技術

そういった、車の動力性能を向上させるために使われる、ターボチャージャー技術の一つに「ツインスクロールターボ」と呼ばれるシステムがあります。

このツインスクロールターボは、自然吸気エンジンに比べてレスポンス(アクセルに対する反応)が悪いという、ターボエンジン車が持つ問題を効果的に解決できるとして、自動車メーカーのみならず、ユーザーの間でも大きな話題となっています。

では、このツインスクロールターボとは、一体どのような方法でパワーとレスポンスの向上を実現しているでしょうか。ユーザーにとっては車の燃費と同じくらい、力強い走行性能は車選びの重要なポイントとなっています。

そのようなツインスクロールターボについて、その構造や仕組み、車の魅力、また車種別の評判などを解説していきます。

エンジンは多くの空気を吸い込むほどパワーが出る

車のエンジンは内燃機関(ないねんきかん)と呼ばれ、エンジンの内部で燃料と空気を燃やすことでエネルギーを発生し、車を走らせます。

そのため、車のエンジンは、一度にできるだけたくさんの空気と燃料を燃やすことで、より大きなエネルギーを発生させることができ、エンジンのパワーアップが実現できます。

エンジンは常に吸気と排気を繰り返している

エンジンの仕組みをシンプルに説明すると、通常はエンジンの吸い込む力を使って内部に空気を取り込んみ(吸気)、取り込んだ空気と燃料を(圧縮)し、圧縮した空気と燃料に点火して爆発させることでエネルギーを発生させ(膨張)、その結果発生した燃焼ガスを外へ排出します(排気)。

つまりエンジンは、常にエンジンの力によって空気を吸い込んだり、排気ガスを外へ吐き出したりを繰り返しています。これを「自然吸気(NA:Natural Aspiration)」といいます。

これに対し、より多くの空気をエンジン内に取り込むことができるように、エンジンへの吸気をエンジンの力のみでなく、エンジンが吐き出す排気ガスの圧力を利用して、エンジン内に空気を強制的に押し込む装置(過給機)が開発されます。これがターボチャージャーです。

ターボチャージャーとは

ターボチャージャーの構造は、シャフトと呼ばれる軸で左右につながれた二つの風車(タービン)が、それぞれかたつむりによく似た、ハウジングという部屋の中に収められています。

ターボチャージャーの仕組みは、まずエンジンから出た排気ガスを、片方のハウジング(エキゾースト《排気》ハウジング)に送り込むことでタービン(エキゾーストタービン)を回します。

そして、その力でシャフトで繋がれたもう片方のタービン(コンプレッサー《圧縮》タービン)を回すことで、ハウジング(コンプレッサーハウジング)内に空気を取り込んで圧縮し、その圧縮された空気を強制的に押しこむことで、より多くの空気をエンジン内に送り込み、強力なパワーを発生させます。

元は航空機から生まれたターボの技術

ターボチャージャーは、元は、かつて主流だったレシプロエンジンを搭載した、航空機の技術から生み出された物です。

飛行機が高高度を飛行する場合に、低空時よりも空気が薄くなることから、エンジンの出力が低下してしまうため、過給圧を加えることでエンジン内により多くの空気を送り込み、パワーダウンを防ぐために開発されました。その技術が、後に自動車用エンジンの出力向上のために応用されます。

自動車用ターボチャージャーの問題点

このようにターボチャージャーとは、エンジンが吐き出す排気ガスの圧力を利用することで、タービンを回し、それによって圧縮された空気を、エンジン内に強制的に押しこむことで大きな出力を発揮させる装置です。

そのため、ターボ車では、エンジンからの排気ガスの圧力が強い高回転域(高速域)ほど、勢いよくタービンが回るため、強力なパワーを発揮し、力強い加速力を実現しますが、その反面、排気ガスの圧力が弱い低回転域(低速域)では、ゆっくりとしかタービンが回らないために効果を発揮できず、アクセルを踏み込んでも、加速するまでに時間がかかります。

ターボ車最大の欠点が「ターボ・ラグ」

このようなターボ車特有の性質を「ターボ・ラグ」といいます。昔のターボ車は、高速道路などでは気持ちよく加速して一気にスピードを出せますが、市街地など速度の低い道路ではとても反応が悪く、モタモタして思うように走ってくれないという、ターボ車の欠点として長く問題視されてきました。

ターボラグを少なくするには

ターボチャージャーは、自動車レースなど常にエンジンの回転数を高く保ちながら走行する場合では、より速く走るために強力なパワーを引き出せるとして、非常に有効です。

しかし、市販車の場合は、ドライバーは状況によりあらゆる速度域において運転を行うため、たとえ最高出力の大きな車でも、「ターボ・ラグ」がひどいと、その性能を生かすことができず、ただの「扱いにくい車」になってしまいます。

ツインスクロールターボとは、このターボ車の欠点である「ターボ・ラグ」の問題を解決するために、生み出された技術です。

低回転からでも効くターボは可能?

ターボ・ラグを少なくするためには、エンジンからの排気圧が小さい低回転域(低速域)でも、勢いよくタービンが回るようにする必要があります。

それにはターボチャージャーの形状を工夫して、排気ガスが送り込まれるエキゾーストハウジングの入り口の口径面積(穴の大きさ)と、ハウジングの中心軸から入口までの長さとの比(A/R)を小さくする方法があります。これをかたつむりの殻に例えると、殻の入り口の大きさの割に、渦を巻いた内部の面積が小さな殻(ハウジング)になります。

つまり、エンジンからの排気ガスがハウジングの入り口に入ってから、内部をとおり抜けて、エキゾーストパイプ(排気管)へと出ていくまでの時間を短くして、またハウジング内に入り込める排気ガスの量を少なくすることで、弱い排気圧でもタービンが回りやすくなり、低回転からでもターボが効くようになります。

その分パワーの頭打ちが早くなる

その代わりに、この方法では、ハウジング内に入り込める排気ガスの量が少ないため、エンジン回転数を上げて排気の圧力を高めても、すぐに排気ガスがハウジングの外へと出て行ってしまうため、いくらアクセルを強く踏み込んでもパワーがすぐに頭打ちとなり、ターボによるパワーアップがあまり発揮できません。

逆にエキゾーストハウジングのA/Rを大きくして、ハウジング内部の面積を拡大し、入り込める排気ガスの量を多くすると、低回転域ではあまりタービンが回らずパワーが出ませんが、高回転域では強い排気圧で、一度にたくさんの排気ガスが入り込み、より勢いよくタービンを回すことができ、大幅なパワーアップが期待できます。

低回転と高回転のどちらにも有効なターボ

そこでエキゾーストハウジングのA/Rを小さくすることなく、低回転域でのレスポンスを向上させ、なおかつ高回転域では十分に強力なパワーを発揮できるよう、開発されたのが「ツインスクロールターボ」の技術です。

ツインスクロールターボとは、ハウジングのA/Rを小さくする代わりに、エキゾーストハウジングの入り口を二つに分割することで、ターボの欠点であるターボ・ラグを少なくしながら、ターボエンジン本来の強烈な加速力を実現する装置です。

ツインスクロールターボには二種類ある

このツインスクロールターボには、二つのタイプがあり、一つは、二つに分けられた入口のひとつに開閉弁を設けて、エンジン回転数に応じて切換える、本来の「ツインスクロールターボ」と、もう一つは、分割された入口ごとに、エンジンからの排気ガスの流入経路を二つに分けた「ツインエントリーターボ」です。

ツインスクロールターボの仕組みとは

ターボエンジンの欠点であるターボ・ラグを少なくし、アクセルに対するレスポンスを向上させながら、ターボならではの強烈なパワーを両立させた、ツインスクロールターボの仕組みについて、本来のツインスクロールターボと、近年主流となっている、ツインエントリーターボの両方を比較して説明します。

ツインスクロールターボの仕組み

日本車として初めてツインスクロールターボを搭載した、マツダの二代目サバンナRX-7は、ロータリーエンジンの持つ低速トルクの弱さを補い、低回転でのレスポンスを向上させながら、ターボ本来の高回転での鋭い加速力を実現したとして、その性能を大いにアピールしていました。

このツインスクロールターボは、エキゾーストハウジング内部全体を二つに分割し、その片方の入り口に電動式の開閉弁を設けることで、エンジン回転数に応じてハウジングに流入する排気ガスの量を切換える仕組みになっています。

開閉弁によって一つか二つかを使い分ける

つまり、エンジン回転数が低く排気圧が弱い時には、開閉弁を閉じ、片側のハウジング(プライマリーハウジング)にのみ排気ガスを流入させて、タービンを回しやすくしてアクセルに対する反応を良くします。

そして、エンジン回転数が高まり排気圧が強くなると、開閉弁を開き、もう片方のハウジング(セカンダリーハウジング)にも排気ガスを流入させ、流入量を増やし、勢いよくタービンを回すことで大きなパワーを実現します。

高性能だがコストが高く使われなくなった

このツインスクロールターボでは、二つに分かれたハウジングを電子制御で切換えることで、低回転から高回転まで滑らかなパワーを実現し、非常に扱いやすいターボ車に仕上げることができます。

しかし、この開閉弁付きのツインスクロールターボでは、ハウジング内に分割するための仕切りがあるために、同じ大きさの通常のタービンに比べると、高回転域での排気ガスの抜けが悪く、あまり大きなパワーアップは見込めず、また複雑な電子制御が不可欠なためにコストが高く、現在は使われなくなりました。

ツインエントリーターボの仕組み

従来とは違った新しい機構を持つ、ツインスクロールターボとして登場した、ツインエントリーターボは、現在、スバルWRXやランサーエボリューション、BMW、プジョーといった多くの車に採用され、また、最近流行の小排気量ターボ車では、定番のシステムとなっています。

排気干渉を防いで排気圧の力を有効に使う

このツインスクロールターボ(ツインエントリーターボ)は、ハウジング内への排気ガスの流入量を切換えるのではなく、排気ガスの流入口をそれぞれ別々に二つに分けることで、各シリンダーから排出される、排気ガスの干渉(排気マニフォールドの集合部で排気ガス同士がぶつかり合うことで《干渉》、排気圧が低下すること)を防止するシステムです。

ツインエントリーターボは、ハウジングへの排気ガスの流入口を完全に二つに分割することで、排気干渉を防ぎ、排気ガスの圧力を無駄なく効果的に利用することで、優れた低回転域でのレスポンスと、高回転域での鋭い加速感を両立させています。

車種別のツインスクロールターボの評判について

車種別のツインスクロールターボの評価について説明します。

BMWのツインパワーターボ

BMWは「ツインパワーターボ」と称して、直噴(ダイレクトイグニッション)と可変バルブタイミングリフト機構による、燃料供給システムと、ツインスクロールターボによる「二つの力」をアピールしています。ですので、ツインパワーと言ってもターボが二個ついているわけではありません。

BMW初のツインスクロールターボは、2005年に登場したE92型335iに搭載された、総排気量2,979ccの直列6気筒ターボエンジンからで、どの速度域からでも力強い加速感を実現する、優れたレスポンスと、最高出力306馬力という、4,000ccの自然吸気エンジン並の高出力で高い評価を得ていました。

BMWならではの走りと環境性能を両立

現在、BMWのツインスクロールターボは、最高出力136馬力の直列3気筒エンジンを搭載した118iから、最高出力560馬力のV型8気筒エンジン搭載のM6まで、ほぼ全てのラインナップに装備されており、BMWらしい軽快な走りと優れた環境性能を両立した、優秀なエンジンだと大変な評判です。

レガシィ

5代目レガシイに搭載されていた、総排気量2,000ccのDIT(直噴ターボ)エンジンは、スバルが得意とするツインスクロールターボ(ツインエントリーターボ)を搭載し、最高出力300馬力というハイパフォーマンスエンジンです。

こちらはトヨタ86やBRZに搭載されている、自然吸気の水平対向4気筒DOHC、FA型エンジンをベースにターボ―チャージャーを装着したエンジンで、水平対向エンジンならではのなめらかな回転フィーリングと、低重心がもたらす優れたハンドリング特性が高評価です。

残念ながら、モデルチェンジした6代目レガシイではターボエンジンは廃止されてしまいましたが、このエンジンはスバル車でも特筆した高性能エンジンとして、があります。

レヴォーグ

レヴォーグに搭載されているエンジンラインナップの中でも、最も注目すべきは、総排気量1,600ccの水平対向4気筒、直噴ターボエンジンでしょう。

こちらの1,600ccターボエンジンは、スバル初のダウンサイジングターボで、小排気量ながら最高出力は170馬力という、2,600cc自然吸気エンジン並のハイパワーを実現し、こちらも排気干渉を防ぎ、エンジンからの排気圧を有効に活用する、ツインエントリーターボを搭載し、低速から高速まで全域に渡って力強い走りを実現しています。

このダウンサイジングターボ搭載のレヴォーグは大変なで、レヴォーグを購入したユーザーのほとんどが選択しているといいますから、環境への配慮と高性能を両立させた、非常に評判の良いエンジンです。

フォレスター

今、世界中で大のスバルのSUV、フォレスターの高性能モデル2.0XT・Eyesightに搭載される、総排気量2,000ccの水平対向4気筒、直噴ターボエンジンは、最高出力280馬力、最大トルク35.7㎏・mという高い実力を持っています。

こちらのツインエントリーターボを搭載したエンジンは、現在流行のダウンサイジングターボとは異なり、それなりにエンジン回転数を高めることで本来の実力が発揮されるという、運転が楽しいスポーティーなエンジンだと評判が高いです。

さらに燃費はカタログ値で1ℓ当たり13.2㎞といいますから、これほどの高性能エンジンとしては良好な数字です。これならスバリスト以外にも注目度の高いエンジンでしょう。

新型ではターボはラインナップから外される?

フォレスターは2018年3月29日に、フルモデルチェンジされた新型が、アメリカのニューヨークモーターショーにてお披露目され、現地では秋には発売開始とアナウンスされています。新しいフォレスターでは、何とターボエンジンは廃止されるとの噂があり、乗るなら今が最後のチャンスでしょう。

ツインスクロールターボとツインターボの違いは

ツインスクロールターボと呼び方が似ている、ツインターボとの違いについて説明します。

ツインターボとは

ツインターボとはその名のとおり、ツイン、つまり二つのターボを使って過給する高性能エンジンの事で、直列6気筒やV型6気筒、V型8気筒といった多気筒エンジンに使われているターボシステムです。

例えばV6エンジンの場合では、左右のVバンクの3気筒ごとに一つずつターボを装着し、過給(エンジン内に空気を押し込む)を行います。このため、ひとつのタービンが6気筒全てのシリンダーを過給するのではなく、二基のタービンがそれぞれ半分の3気筒ずつを担当するため、負担が少なくなり、その分タービンを小型化することができます。

小型のタービンでは低い排気圧でも回しやすいため、低回転域でのレスポンスが向上し、また高回転域では二つのタービンの効果が最大限に発揮され、ツインターボならではの高出力を実現します。

全域でスムーズなツインスクロールターボ

これに対し、ツインスクロールターボでは使用するタービンは一つのみで、エキゾーストハウジングの入り口を二つに分割し、エンジンから流入する排気ガスの経路をそれぞれ二つに分けることで、排気干渉による排気圧の低下を防ぎ、効率よく過給を行うシステムです。

ツインスクロールターボでは、排気圧を有効に活用することでレスポンスを向上させ、低回転から高回転までスムーズで力強い走りを実現しています。

ハイパワーとレスポンスのどちらを取るか

これら二つのターボの大きな違いは、ツインスクロールターボがアクセルに対するレスポンスの向上を重視しているのに対し、ツインターボはあくまで高回転域での最高出力の向上を目的としているところです。

そのため、ツインターボがレーシングカーや、ハイパフォーマンスなスポーツカーなどに搭載されるのに対し、ツインスクロールターボは小型車のダウンサイジングターボや、セダンやステーションワゴンなどのグランドツーリングカーに搭載されています。

ちなみにBMWのM6シリーズでは、ツインスクロールでツインターボという、この車に想定されるあらゆる場面で、高性能を追求したエンジンとなっています。

ツインスクロールターボはエンジン技術の結晶

ツインスクロールターボについて、その構造と仕組み、車の魅力や、また車種別の評判などを紹介しました。

ツインスクロールターボとはツインターボと異なり、一つのタービンを使ってエンジンに空気を押し込んで、パワーアップと同時に低速域でのアクセルレスポンスを向上させ、日常的な扱いやすさを実現したエンジンです。

それはタービンを回す排気ガスの流入経路を二つに分割することで、排気干渉を防いで、エンジンからの排気圧を有効に活用し、低速から高速までスムーズで力強い走りを実現する、実用的なターボエンジンです。

ツインスクロールターボは、現代の小排気量エンジンには定番といえる、地球環境にやさしい高性能エンジンとして注目を集めています。あなたもエンジン技術の粋を集結した、素敵なツインスクロールターボをぜひ体験してみましょう。

初回公開日:2018年04月11日

記載されている内容は2018年04月11日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

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