ディスチャージヘッドランプの交換の方法・寿命と症状
更新日:2024年08月10日
ディスチャージヘッドランプ構造
ディスチャージヘッドランプは従来のハロゲンランプより非常に明るく省電力で長寿命と言われています。その秘密は、従来のハロゲンランプが細いフィラメントに通電させて発光させているのに対し、ディスチャージヘッドランプは、放電させることで発光させています。
ディスチャージヘッドランプを発光させるためには、ハロゲンランプと違い、多くのパーツが必要です。ディスチャージヘッドランプの電球に当たる部分はバーナーと呼ばれ、その中にはキセノンガスが入っておりバルブ内の電極間で放電させています。原理は蛍光灯と同じでメタルハライドランプの一種です。
ディスチャージランプは、バッテリーの直流電流を交流電流に変換させるバラストと、電圧を数万ボルトまで昇圧するイグナイターが不可欠です。最近はバラスト内にイグナイターが組み込まれているので、バラストとバーナーだけで点灯します。
バラスト
ディスチャージヘッドランプを発光させるために欠かせないバラストですが、いろいろなワット数が存在します。例えば30、35、50、60、75Wなどが挙げられます。ワット数が上がれば発光する能力が上がり、ディスチャージヘッドランプは明るくなります。
純正のバラストは、35Wが一般的となっています。しかし明るさに物足りない人は、バラストのワット数を55Wに交換しています。欠点としてバッテリーへの負荷が大きくなることと、光が強い分熱量が増すので、純正のバルブの定格が低いと、熱の影響や車両配線の仕様により不安定になる事があります。
バーナー
ハロゲンバルブのような白熱球は、電球の事をバルブと呼びますが、ディスチャージヘッドランプは発光させる部分をバーナーと呼びます。
バーナーには10種類以上の形状や規格がありますので、バーナーを取り換える時には車検証で年式や型式を調べる必要があります。
ディスチャージヘッドランプのバーナーを選ぶ時にケルビン(K)という言葉をよく耳にしますが、このケルビンは明るさを指すのではなく色温度を指しています。ケルビン数が上がると青味がかった色となり、逆に低くなると黄色みがかった色となります。
ディスチャージヘッドランプの交換の方法
ディスチャージヘッドランプを交換する場合は、ハロゲンバルブの交換とは少し違います。それは20,000Vの高電圧がかかる部品を外すので、知識が無ければ命に係わる重大事故に繋がるからです。それはスタンガンより高電圧なのでその威力は想像がつくでしょう。
実際、ディスチャージヘッドランプ搭載車種は取扱説明書にバーナーの取り換え手順の説明はありません。そこには修理工場に連絡とあるはずです。
しかしディスチャージヘッドランプの交換は、基本と作業手順さえ守れば、それほど難しい物ではありません。
注意点
ディスチャージヘッドランプのバーナーを交換する場合の注意は、高電圧のかかる部分なので、バッテリーのマイナス端子を外して作業をするようにします。
取り外しは無理な力を掛けなくても全て外せるようになっているので、もし力が必要であれば、作業手順が間違っています。新しいバーナーを取り付ける時には、ディスチャージヘッドランプのユニットにバーナーを確実に挿入してピンで留めます。取り付け時にガタがあると光軸が出ないばかりかガラス管の熱で、ユニットを破損させる危険性があります。
バーナーをディスチャージヘッドランプのユニットに取り付けできれば、あとはイグナイターソケットを元のようにはめます。この時に確実に取り付けていないとアーク放電が漏れて、車体を損傷させ、最悪は火災へとつながる危険があるので確実に行いましょう。
ディスチャージヘッドランプの寿命
ディスチャージヘッドランプの寿命は、ハロゲンランプより長い事で知られています。それはフィラメントを持たないことが理由ですが、ハロゲンランプより5倍ほど長い2,000時間以上と言われています。例としてディスチャージヘッドランプを1日30分点灯させたとして、およそ6年間以上使用できることになります。
ディスチャージヘッドランプは点灯時に非常に負荷がかかるので、ライトのオンオフを繰り返すと、寿命を短くさせるので注意が必要です。
ディスチャージヘッドランプのユニット
ディスチャージヘッドランプは、高電圧を掛ければ点灯するというものではなく、点灯時に瞬間的に20,000V以上の高電圧をかける事で、点灯のきっかけを作り出します。この高電圧はどうしてもパーツにストレスを与えてしまうので、無意味なオンオフはディスチャージヘッドランプのユニットの破損に繋がります。
そしてもう一つ、電圧不足によるバラストへのダメージが考えられます。それはバッテリーが劣化して、供給される電圧や電流が少ないとバラストの昇圧する能力が多く必要になり、高負荷がかかります。この状況で使用し続けるとバラストの故障となります。
故障したバラストを新品に交換しても、根本的な電流や電圧が低い状態で使用すれば、バラストの故障が再発するので、オルタネーターやバッテリーの状態のチェックが必要になります。
症状
ディスチャージヘッドランプの寿命が近づくと、以前より暗くなってきます。通常の寿命が2,000時間と言われているのは、その2,000時間ぐらいで光量が新品の半分ぐらいに落ちるのでカタログではそう記載しています。
フィラメントのないディスチャージヘッドランプの光量が落ちてくる理由は、ガラス管内のキセノンガスが少しずつ漏れる事で、ガラス管内でアーク放電が安定しなくなることで暗くなります。
ディスチャージヘッドランプの交換の費用
ディスチャージヘッドランプが点灯しなくなった場合、大手カー用品店などでは気軽にバーナーの交換作業をして貰えます。バーナーには多くの種類があるので、店頭で自分の車に合った商品を購入すれば、オートバックスなどでは1台分3,000円(税抜き)で行ってもらえます。
ただし、ハロゲンバルブからディスチャージヘッドランプへの取り換えは40,000円~50,000円ほどします。またオートバックスなどでは、ディスチャージヘッドランプのキットも販売していますが、ネット販売より高額な商品が販売されているのが特徴でしょう。
ディスチャージランプの種類
ヘッドライトにはハロゲンランプ、ディスチャージヘッドランプ、LEDランプと現在はこの3種類が主流となっています。そのすべての種類は、同規格のランプを使用しており、H4やH11などがあります。
ディスチャージヘッドランプで注意が必要なことは、D2やD4のディスチャージヘッドランプには、その後ろにD2RやD2SRといったようにRやSが付いています。この2種類は取り付け方法やサイズは同じでも、Rはリフレクター用でSはプロジェクター用となるので購入の際は注意が必要です。
SにRも取り付けることができますが、配光が変わり車検に通らなくなりますから、必ず規格のディスチャージヘッドランプを取り付けるようにしましょう。
ディスチャージヘッドライトは蛍光灯の強力な物
ディスチャージヘッドランプは蛍光灯が点灯する原理と非常によく似た構造をしています。蛍光灯もガラス管内にガスが封入されており、やはり高電圧をかけて点灯させている事から、ディスチャージヘッドランプは蛍光灯に近いランプといえるでしょう。
しかしその明るさは蛍光灯より明るいので、身近なところでは、プールやスタジアムに使われています。しかしデメリットとして即時点灯と再点灯に時間がかかることが挙げられます。
車用のほうが点灯スピードは早いですが、車のディスチャージヘッドランプも点灯直後は青く光り徐々に白くなってくるように、ハロゲンバルブより即点灯しないところがデメリットでしょう。
ディスチャージヘッドランプオートレベリング
2006年1月1日以降に生産された車両で、メーカー出荷時にディスチャージヘッドランプが搭載された車種には、基本的に全車種にオートレベルリング機構が備わっています。
このオートレベリングは、荷物を積載した時や乗車定員の増減により車の傾きを車軸につけた車高センサーにより、その傾き具合でライトの光軸を自動で調整する機能です。
最近の車では、加速度センサーからの情報を専用のECUで算出して車体姿勢を感知してオートレベリングします。そのことにより車軸に取り付けるセンサーやハーネスが必要なくなり軽量化することができています。
手動で調整する必要がある場合
オートレベルングには初期設定というものがあります。例えば車高を落とした場合は、初期設定を行わないと車軸センサーが誤作動を起こし適正なライトの照射範囲が得られません。
オートレベリングは自動で光軸を調整して最適な状態にしますが、車高を落とした場合は、初期設定する事でシステムの誤認識された範囲が自動で補正されます。しかしこれは光軸の基準位置の初期化であって、保安基準に適合するわけではありません。
そこで車高を変化させた場合は、手動で光軸を調整して保安基準に適合させる必要があります。
オートレベリングの初期設定は、メーカー指定の専用ツールや診断装置が必要になるので、専門の整備工場で行うようにします。
ディスチャージヘッドランプの価格の目安
ディスチャージヘッドランプの価格帯は、かなりバラつきがあります。中国製などでは4,000円程度で購入できる商品もありますが、耐久性に問題があるのであまりおすすめしません。ディスチャージヘッドランプを交換するのであれば、10,000円から20,000円の間の商品を選ぶと良いでしょう。
ハロゲンランプからディスチャージヘッドランプに交換している場合は、バラスト単体とディスチャージヘッドランプキットを比べた時に、価格がほとんど変わらないことから、バラストなどのキットもそっくり替える方が後々の故障を考えた時に安全でしょう。
ハスラー
ハスラーのディスチャージヘッドランプはプロジェクター用のD4Sになります。D4S,D4R共用のバーナーを購入したら、プロジェクター用にするためにガラス管についてるシェードを取り外す必要があります。
取り換え手順は、ライトの裏蓋を回して外すと四角いバラストが見えるので、反時計回りに回して外します。
バラストを外せばピンでバーナーが止まっているので、それを外してバーナーを抜き取ります。抜き取り終わったら、新しいバーナーを入れる前に空焚きを行います。これは点灯不良の確認と表面の油分を焼くためです。
そのまま空焚きをせずに取り付けると、不良で点灯しなければ作業が2度手間になります。また、油分がユニット内で蒸発してレンズ内部を曇らす原因となるでしょう。あとは取り外しの逆の手順で行えば完了です。
ディスチャージヘッドランプは高電圧を発生させるので、安易な方法で交換しないようにして下さい。
ディスチャージヘッドランプの球切れの症状
ディスチャージヘッドランプの球切れはハロゲンバルブと違い、いきなり切れることはありません。通常点灯時には青い色から白く変化するのですが、寿命が来ると、赤紫色に点灯してから白く変化します。このような状態になったら寿命ですから、球切れになる前に交換をしましょう。
ヘッドライトが片側だけ付かなくなった場合は、バーナーが不良なのかバラストが不良なのかを確認する必要があります。それはバーナーを左右入れ替えて点灯させると良いでしょう。入れ替えて点灯すればバラストの故障ですし、入れ替えても点灯しなければバーナーの故障と分かります。
ハロゲンランプと球切れの違い
ハロゲンバルブの球切れは突如起こる事が当たり前です。それは走行中にも起こる現象で、夜間にいきなり片側のヘッドライトが切れると暗くなり運転に支障が出てきます。
ディスチャージヘッドランプは突然ライトが付かなくなることは、非常に稀です。必ず球切れの前に前兆現象が起こりますので、事前に前兆をとらえて交換をしていれば、ハロゲンバルブのように夜間走行中の突如ライト切れに見舞われる心配がありません。
ただし純正品は良いのですが、ハロゲンバルブからディスチャージヘッドランプに交換した車両では、取り付け不備やバラストの耐久性の問題でいきなり点灯不良になったり、ちらつきが起きたりする事があるので、コンバージョンキットを装着する際は、信頼のあるメーカーから購入して、専門ショップにて取り付けするようにしましょう。
ディスチャージヘッドランプは安易に交換しないこと
今回はディスチャージヘッドランプの交換方法についてご紹介してきました。交換方法が取扱説明書に記載されていないのは、非常に高電圧で作業に危険を伴うからです。取り替え方法は、基本を忠実に守り安全対策をしていれば非常に簡単に交換できます。
寿命とその症状を知れば、切れる前に整備工場で交換もできますから、ハロゲンバルブのように自分でメンテナンスしなくても済みます。
しかしどうしても自分でディスチャージヘッドランプを交換する際は、安易に行わず必ず専門家の指導のもとで交換作業を行うようにしましょう。20,000V以上の高電圧がかかる部品を交換するという事を忘れないようにして下さい。
初回公開日:2018年03月24日
記載されている内容は2018年03月24日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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