独立懸架式の仕組み・トライクキット取り付け方・サスペンション
更新日:2024年09月12日
独立懸架式の仕組みと構造について
車選びのポイントとしては、やはり走行性能と乗り心地が重要な要素です。燃費などの経済性や居住性などのユーティリティよりも、購入後の満足度に大きく影響します。
一方、自動車の操縦性や乗り心地を決めるのは、何と言ってもエンジンの性能とサスペンションの機能性です。特にサスペンションは、タイヤが路面をしっかりと捉えてエンジンによる駆動力を伝え、また、路面からのショックや振動を吸収する、人に例えれば手足の骨格や筋肉に当る重要な装置です。
車のサスペンションの中には「独立懸架式」という物があります。独立懸架式は、自動車が誕生した黎明期に多く使われ、馬車の時代から既に存在していた「車軸懸架式」から進化したサスペンションで、現在、ほぼ全ての車が採用しています。
このような独立懸架式サスペンションについて、その仕組みや特徴、搭載される車種、またトライクキットの取付け方などを解説していきます。
独立懸架式サスペンションとは
独立懸架式(インデペンデントサスペンション)とは、それまでの、左右についた車輪が車軸によってつながれ固定されていた車軸懸架式(リジットアクスル)とは異なり、走行中に、左右の車輪がそれぞれ独立して働き、車の動きを制御するサスペンションです。
車軸懸架式では、車輪が車軸によって固定されているため、例えば、走行中に路面の凹凸を越えるなどした場合に、片方の車輪の動きに直接、もう片方の車輪が影響を受けるため、車体が大きく揺れてしまい、速度が上がれば上がるほど振動や路面からの衝撃が強くなり、快適性や走行性能が悪くなります。
それに対し、独立懸架式では左右それぞれの車輪が別々に機能するため、路面のギャップなどを越えても車輪の動きが互いに干渉せず、車の姿勢をできるだけ水平に保つことができます。また同時に、タイヤが路面を捉える力が強いことから、乗り心地や走行安定性に優れています。
独立懸架式サスペンションの主な種類
現在の車に使われている、主な独立懸架式サスペンションは三種類あります。
それは、1930年代にはすでに存在し、独立懸架式を代表するサスペンションとして現在も使われている「ダブルウィッシュボーン式」と、それを元に、より合理的な仕組みを持つ「マクファーソンストラット式」、そして、ダブルウィッシュボーン式の高い機能性をさらに進化させた「マルチリンク式」です。
ダブルウィッシュボーン式
ダブルウィッシュボーン式は、1930年代の初期にアメリカのGM(ゼネラルモータース)によって初めて開発された、独立懸架式の王道と呼べるサスペンションです。
ダブルウィッシュボーン式は、自動車の衝撃吸収部品として、従来のリーフスプリング(板バネ)に代わりコイルスプリング(うずまきバネ)が誕生したのをきっかけに、乗り心地や走行性能をより高めたサスペンションとして開発されました。
A字型のアームで上下から挟み込み車輪を固定する
ダブルウィッシュボーン式の構造は、A字型をした二つのサスペンションアームが、そのA字の頂点を支点にアップライト(車輪を取り付ける部品。ナックルともいう)を、路面に対してほぼ水平に上下から挟み込むことで支えます。また、上下のアームをA字の足の部分で二か所、上下合わせて四箇所のリンク(四節リンク)で車体と接合します。
ウィッシュボーンとは「鳥の鎖骨」のことで、車輪を支えるA字のアームがその形に似ていることから付けられた名前です。この上下のサスペンションアームの上側をアッパーアーム、下側をロアアームと呼びます。
剛性が高く広範囲なセッティングが可能
ダブルウィッシュボーンは、上下のアームによって車輪がしっかりと支えられているため、サスペンションの剛性(曲げやねじれに対する強さ)が高く、走行安定性や乗り心地が優れています。
また、剛性の高さはスプリングやショックアブソーバーの性能を十分に発揮させ、エンジンからの駆動力を路面にしっかりと伝えることができ、ハンドリングやコーナーリング性能をより高めることができます。
さらに、ダブルウィッシュボーンは上下のアームの長さや取付位置を変更することで、ジオメトリー(トー角、キャンバー角など操縦性を決定するための重要な要素)の設定を広範囲に行うことができるため、セッティングの自由度が高く、走行性能や乗り心地などを車の性質に合わせて任意に変更することができます。
マクファーソン・ストラット
マクファーソン・ストラットは、1940年代にGMの技術者、アール・マクファーソン氏が開発した革新的な懸架装置で、現在まで世界的な主流となっているサスペンション方式です。
この方式は、スプリングとショックアブソーバーを組み合わせた衝撃吸収装置の上部と、車体とを接合するアッパーマウント部を、ダブルウィッシュボーンのアッパーアームの代わりに使用することで、同じ性能を非常に簡素でコンパクトな構造によって実現した画期的なサスペンションです。
このストラット式は、ダブルウィッシュボーンほどには広範囲なジオメトリー設定はできませんが、それでも、操縦性や走行安定性、乗り心地に優れているため、現在は市販量産車のほとんどに採用されています。
マルチリンク式
マルチリンク式は、ダブルウィッシュボーン式を元に上下のアームの代わりに複雑なリンク棒を複数組み合わせることで、さらに高次元での走行安定性と乗り心地の両立を実現したサスペンションです。
マルチリンクは、1982年のメルセデス190Eに初めて採用され、現在まで、高級セダンやスポーツカーなどを中心に使われています。
4輪独立懸架式を採用している車
従来の車軸懸架式に代わり、走行安定性や乗り心地に優れたサスペンションとして登場した独立懸架式は、現在も多くの車に採用されいます。その中でも、前後4輪共に独立懸架式を搭載した車について説明します。
レーシングカー
モータースポーツに参戦するレーシングカーでは、サーキットごとに最適なセッティングを行う必要があることから、F1などのフォーミュラカーを始め、スポーツカーレースのプロトタイプレーシングカーなどは全て、4輪ダブルウィッシュボーンの独立懸架式を採用しています。
スポーツカー
日本製スポーツカーとして海外でものRX-7は、初代モデルは前がストラット式の独立懸架で、後はワッツリンクという車軸懸架式サスペンションが搭載されていましたが、二代目からは前ストラット、後マルチリンクの4輪独立懸架に変更され、さらに、三代目ではレーシンクカーと同じ4輪ダブルウィッシュボーン式独立懸架へと進化しています。
このように、スポーツカーではハンドリングやコーナーリング性能、直進安定性を高めるために4輪独立懸架が採用されています。
現在では、フェラーリのミッドシップモデルやランボルギーニは4輪ダブルウィッシュボーン、ポルシェ911は、前ストラット、後マルチリンクの4輪独立懸架です。
軽自動車
かつては軽自動車にも、前ストラット、後セミトレーリングアームの4輪独立懸架が採用されていましたが、現在は、ほぼ全ての車に前ストラットの独立式、後はトーションビームの車軸式という前輪駆動車ではスタンダードな方式が採用されています。
現在の軽自動車では、唯一ミッドシップ後輪駆動のホンダS660が、ポルシェ・ボクスター、ケイマンシリーズと同じ4輪ストラット式独立懸架を採用しています。
ミニバン
日本製ミニバンでは、現在、トヨタ・アルファード、ヴェルファイヤの現行モデルから、前ストラット、後ダブルウィッシュボーンの4輪独立懸架が採用されています。
独立懸架トライクキットの取り付け方について
普通免許で運転できるとしての三輪オートバイ、トライクにも独立懸架式サスペンションを搭載したキットが販売されています。
愛車のオートバイをトライクに改造するには、まずはこのキットを購入します。次にオートバイのリア部分を分解して、リアフェンダーやタイヤ、ドライブチェーン、スイングアームなどを取り外します。
スイングアームを取り外したら、そのピポット(車体との接合部)にトライクキットを合体させます。後はドライブチェーンやブレーキシステム、トライク用タイヤなどを装着します。
独立懸架式トライクキットを装着することで、従来の車軸懸架式トライクの難点だった走行安定性やコーナーリング性能、乗り心地が改善し、ツーリングを快適に楽しめます。
独立懸架サスペンションの特徴について
独立懸架式サスペンションの特徴について説明します。
ダブルウィッシュボーン
ダブルウィッシュボーン式は、上下のアームが水平に挟み込むことで車輪を支えるサスペンションで、剛性が高く走行安定性や乗り心地に優れ、また、アームの長さや取付位置などを変更することで広範囲なセッティングが可能で、車の性質に合わせて乗り味を変えることができます。
しかし、ダブルウィッシュボーンは部品点数が多いために重量が嵩み、搭載するには広いスペースが必要です。さらに、構造が複雑なため製造コストが高いのも難点です。
マクファーソン・ストラット
ストラット式は、スプリングとショックアブソーバーを組み合わせた衝撃吸収装置の上部を車体に接合する部分、「サスペンションマウント」を、ダブルウィッシュボーン式のアッパーアームの代わりとして使用することで、非常に簡潔な構造によって同じ性能を実現した画期的なサスペンションで、あらゆる市販量産車の世界標準です。
この方式では、ダブルウィッシュボーンほどのセッティングの自由度はありませんが、構造が簡単なため製造コストが安く、軽量で搭載するスペースも最小限で済むことも大きなメリットです。
マルチリンク
マルチリンク式は、ダブルウィッシュボーンの上下のアームの代わりに複雑なリンク棒を複数組み合わせることで、さらに高次元での走行安定性と乗り心地の両立を実現したサスペンションです。
この方式は、ダブルウィッシュボーンよりもさらに広範囲なセッティングが可能で、より高度なコーナーリング性能と乗り心地のバランスを実現可能ですが、構造が非常に複雑なためにダブルウィッシュボーンよりもさらに製造コストが高く、また、重量が重く搭載スペースも広くとる必要があります。
そのため、マルチリンク式は高級セダンやスポーツカーなど価格の高い車に採用されています。
独立懸架式は走行安定性や乗り心地に優れている
独立懸架式サスペンションについて、その仕組みや特徴、搭載される車種、またトライクキットの取付け方などを紹介しました。
自動車が誕生した黎明期には、馬車の時代から使われていた車軸懸架式のサスペンションが使われていましたが、乗り心地や走行性能の面で問題がありました。それを改善するために誕生したのが独立懸架式です。
独立懸架式は、従来の車軸によって車輪が固定された方式とは異なり、左右の車輪がそれぞれ独立して働くことで、タイヤが路面をしっかりととらえて車体を水平に保ち、乗り心地や走行安定性に優れています。
乗り心地と走りの良さは、車を購入する際の重要なポイントです。あなたも独立懸架式の特徴を知り、理想的な車選びをしましょう。
初回公開日:2018年04月18日
記載されている内容は2018年04月18日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。