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ダウンサイジングターボの欠点・日本のメーカー|燃費/耐久性

更新日:2024年12月21日

ダウンサイジングターボについて、その成り立ちや魅力、性能と欠点などを解説します。地球温暖化が大きな社会問題とされる中で開発された、地球環境にやさしい低排出ガスと低燃費、さらに力強い走りを両立させたエンジン、ダウンサイジングターボの耳寄りな情報を紹介します。

ダウンサイジングターボの欠点・日本のメーカー|燃費/耐久性

ダウンサイジングターボとは

日本の自動車ユーザーの間では現在、ダウンサイジングターボという言葉が流行しています。ダウンサイジングターボは2000年の初めごろから、ドイツの各自動車メーカーで盛んに開発が進められていた画期的なエンジン形式の一つで、ガソリンエンジンでは、2005年にフォルクスワーゲン社が、初めてダウンサイジングターボを搭載した車を販売しています。

しかし、このダウンサイジングターボとは一体どのようなエンジンの事を言うでしょう。ダウンサイジングターボの概念や定義、その構造といった物はなかなか複雑で、自動車のメカニズムに相当詳しい人ならともかく、一般の人にはカタログなどを読んでも今一つ理解しにくいでしょう。

そのようなダウンサイジングターボのメカニズムや、その美点と欠点、また気になる動力性能や燃費などについて解説していきます。

燃費を良くする方法の一つとして

ダウンサイジングターボとは、自動車エンジンの燃費性能を向上させるための方法の一つです。

ダウンサイジングターボは、従来よりエンジンの総排気量を小さくする(ダウンサイジング)ことによって、燃料の消費量を少なくし、その代わりにターボチャージャーなどの過給機を装着することで、以前の排気量のエンジンと同じ程度のパワーを発揮させ、力強い走行性能と優秀な燃費性能との両立を目的として、開発されたエンジンのことです。

大パワーを得るために開発された従来のターボエンジン

旧来の自動車用ターボエンジンは、ターボによってエンジンの最高出力や最大トルクを大幅に向上させ、最高速度や加速力など車の持つ動力性能をより高めて、ドライバーが思いどおりの走りを楽しめる高性能を得るために開発されました。

かつての日本でも多くのユーザーから、「もっとパワーのある高性能な車を」という要望が強かった1970年代後半から80年代には、こういった高出力を売りにしたターボエンジン搭載車が続々登場しました。

特に自動車用ターボチャージャーを製造している三菱などは、「フルラインターボ」を謳い文句にクロカン4WD車のパジェロから、軽自動車のミニカまで全車にターボエンジンを搭載し、ハイパワーをアピールしていました。

劣悪な燃費と低回転でのレスポンスの悪さが弱点

しかし、そのような従来のターボエンジンは、同じ排気量の自然吸気エンジンと比べてパワーアップされる分、燃費がひどく悪化するという問題がありました。

またターボチャージャーとはシャフトと呼ばれる軸で左右につながれた風車(タービン)の片方(排気タービン)を、エンジンから出される燃焼ガスの力を利用して回すことで、もう片方の風車(吸気タービン)を回して圧縮された空気をエンジンに送り込むことで、大きな出力を得るというシステムです。

そのためターボエンジンは、エンジンが高回転まで回っている時は大きなパワーが得られ、高性能ですが、逆に低回転域ではレスポンス(アクセルに対する反応)が悪く、通常の自然吸気エンジン搭載車よりも遅い車になってしまうという、大きな欠点がありました。

技術の進歩でターボの性能が進化

そこで1990年代に入るとターボチャージャー自体の性能が良くなり、低回転域からでも回すことのできるレスポンスの良いターボが登場し、ドイツのフォルクスワーゲンとアウディのスポーツモデルなどに搭載されました。

しかし、それでも高回転まで回さなければ本来のパワーが発揮できないという特性は変わらず、ターボエンジン最大の難点だった燃費の悪さは改善されませんでした。

ターボから排気量アップの時代へ

そこで、エンジンの高性能化にはシリンダーの数を増やし、排気量を拡大するのが最も有効という原点に立ち返り、それまで総排気量1600ccの直列4気筒エンジンは、2500ccのV型6気筒エンジンへ、2000ccの直列6気筒エンジンは3500ccのV型6気筒、もしくは4000ccのV型8気筒エンジンへと多気筒化、大排気量化されていきます。

これは自動車のエンジンは小排気量であっても、高回転まで回せば回すほど燃料を消費するという事実に対し、多気筒化して排気量を拡大すれば、エンジン回転数が低くても十分な出力が得られ、エンジンをあまり回さないことで、実用面での燃費の向上につながるという理由から、各自動車メーカーによって実施されます。

このような大排気量V6エンジンは、コンパクトカーから大型セダン、スポーツカー、ミニバンに至るまで多くの車に搭載されていきます。

直噴エンジンの登場で燃費もパワーも向上

ガソリン直噴エンジンは、従来のエンジンに空気を送り込むためのパイプ(インテークマニホールド)に設けられた穴(ポート)から燃料を噴射するのではなく、シリンダーヘッドに取り付けたインジェクター(燃料噴射装置)によって、シリンダー内部に直接燃料を噴射する(直噴)燃料供給方式を採用したエンジンのことです。

これは1996年に三菱自動車が発売したGDI(Gasoline Direct Injection)エンジンが、電子制御式では世界初として、大いに宣伝されます。(機械式ガソリン直噴エンジンは、1954年登場のメルセデス・ベンツ300SLが世界初となります)

直噴化によって薄い燃料でエンジンを動かせる

直噴エンジンのメリットはまず、シリンダー内部に直接燃料を噴射することで、空燃比(A/F:エンジン内で燃焼させる空気と燃料との比率)を20:1~55:1という薄い燃料で点火して燃やす、リーンバーン(希薄燃焼技術)が可能となるため、その分燃料を節約できます。

気化熱の作用で圧縮比が上昇しパワーアップする

次に、従来のエンジンみたいにガソリンと空気を混ぜた混合気ではなく、ディーゼルエンジンと同じでシリンダー内でピストンが空気のみを圧縮し、そこに気化した燃料を噴射することによって、気化熱の作用で燃料が周囲の熱を吸収し、シリンダー内で圧縮される空気の温度を下げる効果があります。

その際、気体は温めると膨張し冷やすと収縮するという原理により、シリンダー内の温度を下げることで内部の空気の密度が下がり、その分ピストンによって強い圧縮力を掛けることができます。

圧縮力が強くなると、同じ燃料でもより大きなエネルギーを発生させることができ、つまりエンジンの熱効率が高まることで、低燃費とパワーアップが実現します。

各メーカーから直噴エンジン搭載車が続々登場

このように電子制御によるエンジン直噴化技術の登場によって、エンジンの熱効率が改善し、燃料消費量を少なくして燃費を良くすると同時に、エンジンの出力を向上させることができ、その後は日本のメーカーはもちろん、ドイツやアメリカ、フランス、韓国など世界各地の自動車メーカで研究が進み、多くの直噴エンジン搭載車が販売されることとなります。

地球環境への配慮からダウンサイジングターボが登場する

1997年12月に開催された「地球温暖化防止京都会議(COP3)」によって、先進国に対して地球温暖化の原因物質とされる、温室効果ガスの削減目標が定められたことから、世界の各自動車メーカーは、排気ガスによるCO₂の排出を低減するため、自動車の燃料消費量を減少させることが強く求められることとなります。

また原油価格の高止まりや、化石燃料がいずれ枯渇するといった懸念もあり、これまでにない地球規模での省エネルギー化が促進され、また日本では長引く経済不況による個人消費の低迷といった影響もあり、自動車においても経済的で燃費性能の良い車が、広く望まれるようになります。

CO₂削減と燃料消費量減少のため排気量を縮小

それまで車の安全性と快適性、高い走行性能を実現した上での燃費の向上を目的として、エンジンの多気筒化と排気量の拡大、直噴化による燃料消費量の減少と、熱効率の向上を進めてきた自動車メーカー各社は、販売車両の環境問題への適応を推し進めるために、それぞれの開発目標を大幅に方向転換することになります。

まずCO₂の排出低減と燃料消費量を減少させるため、エンジンの排気量を縮小します。そのため摩擦抵抗が増える多気筒エンジンをやめて、従来の大排気量V6エンジンは姿を消し、代わりに総排気量1800cc以下の4気筒エンジンまたは3気筒エンジンが登場します。

環境と技術の両方で問題を露呈した日本メーカーの直噴エンジン

またエンジンの直噴化については、低燃費を目的とした希薄燃焼を採用した場合、燃料の燃え残りである煤(すす:カーボン)が発生しやすく、排気ガス中に有害物質であるNOx(窒素酸化物)やPM2.5などの微粒子物質が増加するため、排出ガス規制へ対応するには専用の触媒装置が必要という問題が発生します。

さらに直噴化によって発生した煤は、エンジン内の各部に付着して、故障などさまざまなトラブルを引き起こす原因となり、日本の自動車メーカーでは、直噴エンジンが急速にラインナップから外されていきます。

ドイツでは直噴技術の研究が進みダウンサイジングターボが登場する

しかし、日本の状況に反してドイツの各自動車メーカーは、環境問題への適応に向けた排出ガスの低減と燃費性能の向上を目標に、直噴エンジンの研究開発に力を注ぎます。そして2005年に登場したのがフォルクスワーゲンによる最初のダウンサイジングターボ、総排気量1400ccの直列4気筒、過給機付きガソリン直噴エンジン「1.4TSIツインジャージャー」でした。

このエンジンは直噴化に際して希薄燃焼を採用せず、通常燃焼を行うことで煤による有害物質の発生を抑え、なおかつ直噴化によって熱効率を上げることで燃費を向上し、さらに過給機によって従来の排気量のエンジンと同等の出力を得ようした物です。

2400ccと同等のパワーに1600cc並の低燃費を実現したTSIエンジン

1.4TSIツインチャージャーには燃焼ガスの圧力で稼働するターボチャージャーと、エンジンの駆動力を使用して稼働させるスーパーチャージャーの二種類の過給機が装備されています。

これはエンジンが低回転域ではスーパーチャージャーが作動し、回転の上昇に伴いターボチャージャが作動して両方を同時に併用し、さらに高回転域ではターボチャージャーのみとなることで、エンジンが低速域から高速域まで力強い走りを可能にしています。

このダウンサイジングターボシステムによって、1400ccという小排気量ながら、最高出力は170馬力と従来の2400ccエンジンと同等の高出力を発生し、またカタログ燃費では1ℓ当たり14.0㎞という1600cc自然吸気エンジン並の低燃費を実現しています。

その後欧州各メーカーでダウンサイジングターボが一気に流行する

フォルクスワーゲンによるTSI(直噴ダウンサイジングターボ)エンジンの発売以降、同じグループのアウディを始め、メルセデス、BMWといったドイツの各自動車メーカーから、直噴技術を利用したダウンサイジングターボ・エンジンが次々に登場し、やがて多くの車種にラインナップされていきます。

また2014年頃から、日本でもようやく日産、スバル、トヨタ、ホンダといったメーカーから、同様のダウンサイジングターボが登場し始めます。

このようにダウンサイジングターボが搭載された車は、優れた環境性能と優秀な燃費性能に加え、力強い走りを実現しているとして、今、自動車業界で最も注目を集めています。

ダウンサイジングターボの欠点は

ダウンサイジングターボは、エンジンの直噴化技術とターボチャージャーによる出力向上機能を掛け合わせた、高度なエンジン制御技術によって実現した新世代のエンジンです。

ダウンサイジングターボは排気量を縮小することでCO₂排出量を抑え、燃料消費量を減少させながら、従来の大排気量エンジンと同等のパワーと、小排気量ならではの低燃費を達成したエンジンとして、ドイツの自動車メーカーによって開発され、多くの車に搭載されています。

その後日本の自動車メーカーでもラインナップされ始めたダウンサイジングターボですが、現在、この画期的とされたエンジンに重大な欠点があるとの指摘がされています。

それはダウンサイジングターボ搭載車が、カタログデータに掲載されている燃費の数値と、実際に走行した時の燃費の数値に大きな差があり、ダウンサイジングターボはユーザーが想像していた程には燃費が良くないという物です。

車の使用状況によって大きく変化するダウンサイジングターボの性能

ダウンサイジングターボがなぜ、カタログ値に比べて実際の燃費が落ちてしまうのかというと、その理由は、ヨーロッパに比べて日本では、なぜダウンサイジングターボの開発が進まなかったのかという、それぞれの国においての自動車を取り巻く環境の違いによって説明できます。

ダウンサイジングターボが有効な欧州の車事情

ドイツをはじめとしたヨーロッパでは、車をアウトバーンなどの高速道路を使って、長距離移動をするという使われ方を良くします。またベルリンやパリ、ローマなどの都心部といった市街地においても、欧州では信号のない「ラウンドアバウト」と呼ばれる環状交差点が数多く存在し、車を停止させずにずっと走らせ続けることが多いという道路事情があります。

そのためヨーロッパでは、車が一定速度で巡航している時の燃費性能が最も重視され、その場合はエンジン回転数があまり上がらないため、ダウンサイジングターボの性能が威力を発揮し、優れた燃費性能を実現できます。

日本の道路状況では本来の燃費が発揮できない

しかし、日本みたいに信号が多く、渋滞などで発進と停止を頻繁に繰り返す道路事情では、いかにダウンサイジングターボといえども、スタート時には十分な力を発揮させるために、エンジンの回転数を上げねばならず、その結果、燃料消費量が増加し、カタログデータの数値よりもずっと燃費が悪くなってしまいます。

このように、日本とヨーロッパでは車の使用環境が大きく異なり、特に燃費に関しては、ダウンサイジングターボはその使い方によって、本来の性能と比べて大きく変化してしまうことが、日本のメーカーがドイツ車みたいに、ダウンサイジングターボの普及を進めなかった理由です。

発進時にもたつくというターボの弱点

また先程も説明しましたが、ダウンサイジングターボではこの他にも、発進時のエンジンの反応が悪いという欠点があります。現在のターボチャージャーは従来よりも性能が格段に進化し、走り出してしまえばどの速度域でも非常に力強い走行性能を発揮しますが、発進時だけは自然吸気のエンジンに比べてもたついてしまうという事実があります。

これはターボエンジンの特性上、避けられない弱点であり、たとえスーパーチャージャーを併用した場合であっても、根本的には解決できていない問題です。

今後の技術の進歩により、ダウンサイジングターボが持つこうした欠点もいずれは改善されると考えますが、現在のところはまだ未解決で、ダウンサイジングターボにとって避けられないウイークポイントとなっています。

ダウンサイジングターボの燃費性能について

ダウンサイジングターボの燃費性能について説明します。現在市販されている車の中で最も新しいダウンサイジングターボエンジンは、フォルクスワーゲン・ポロ・ブルーモーションに搭載されている、総排気量1000ccの直列3気筒TSI(直噴ターボ)エンジンと、BMW118iの1500cc直列3気筒直噴ターボです。

さらに注目のダウンサイジングターボとして、ルノー・ルーテシアの、何と総排気量900ccという小型の直列3気筒ターボがあります。こちらは直噴ではなく、従来のポート噴射式燃料供給装置付きのエンジンです。

このように、現在のダウンサイジングターボの最新トレンドは3気筒の直噴ターボで、総排気量1500cc以下のエンジンとなっています。

また日本車ではトヨタ・オーリスが搭載する1200cc直列4気筒D-4T(直噴ターボ)が、最も新しいダウンサイジングターボです。

最新ダウンサイジングターボの燃費性能を比較

気になるそれぞれの燃費性能を比較しますと、ポロ・ブルーモーションの1000ccTSIでは、最高出力95馬力、最大トルク16.3㎏.mで、カタログ燃費は1ℓ当たり23.4㎞です。

BMW118iの1500cc直噴ターボでは、最高出力136馬力、最大トルク22.4㎏.mと排気量が大きい分パワーにはゆとりがあり、カタログ燃費は1ℓ当たり18.1㎞となっています。

ルノー・ルーテシアのZEN(ゼン)というグレードに搭載されている、900ccの3気筒ターボエンジンでは、最高出力が90馬力、最大トルク14.3㎏.mという性能で、肝心のカタログ燃費はなぜか未公開となっています。

また日本製ダウンサイジングターボのトヨタ・オーリスはというと、この1200ccの4気筒ターボは最高出力116馬力、最大トルク18.9kg.mを発揮し、カタログ燃費は1ℓ当たり19.4㎞となっています。

クラスを越えた性能を誇る最新ダウンサイジングターボ

フォルクスワーゲンの最新1000ccTSIエンジンと、BMWの直噴3気筒ターボはどちらもカタログ数値では、排気量を越えたパワーと優秀な燃費性能を実現しています。

特にアクセルを踏み込んだ時の力強さを示す最大トルクの数値は、ポロの1000cc3気筒TSIでは従来の1500cc自然吸気エンジンを上回り、またBMWの1500cc直噴3気筒ターボでは、2500cc自然吸気エンジン並の最大トルクを発揮しています。

さらにルーテシアの900ccターボエンジンは、このような小排気量のエンジンにも係わらず、最大トルクが何と14.3㎏.mと、同じクラスで1500cc自然吸気エンジンを搭載する、トヨタ・ヴィッツRS・G'zの14.1㎏.mと同等の力強さを実現しているとは驚きです。

実際の燃費性能は?

しかし肝心の燃費性能では、ダウンサイジングターボの大きな欠点として挙げられているみたいに、カタログ数値よりも悪くなるという結果が出ています。

実際に日本の道路を走行した際の燃費は、ポロの最新TSIエンジンはカタログ値の23.4㎞/ℓに対して、何と14.8㎞/ℓと大幅に悪い数字が出ています。

BMWの直噴ターボは、カタログ値では18.1㎞/ℓとなっていますが、こちらはストップ&ゴーを繰り返す市街地走行では9㎞/ℓ程度、それ以外でも良くて15㎞/ℓと、予想以上に大きな差が出るという結果になりました。

日本の道路事情では本来の燃費性能を発揮できない

またルノー・ルーテシアの900ccターボの実燃費は、こちらは燃費に有利な5速マニュアルトランスミッションのみの設定で、15.35㎞/ℓという数字が出ています。これはトヨタ・ヴィッツの1000ccエンジンとCVT(無段変速装置)搭載車の14.96㎞/ℓと、ほぼ互角の燃費性能となっています。

やはり日本みたいな発進停止や加減速の多い道路環境の下では、ダウンサイジングターボの持つ本来の燃費性能が発揮できないのが事実です。

それは日本製のダウンサイジングターボでも同じで、トヨタ・オーリス120Tが搭載する1200ccD-4Tエンジンは、カタログ値の19.4㎞/ℓに対して実燃費は13.34㎞/ℓと随分悪くなっています。

ハイブリッド車との比較

では非常に優秀な燃費性能を持つとしての高い、ハイブリッドカーと比較してみましょう。トヨタのオーリスで比較しますと、ダウンサイジングターボ搭載のオーリス120Tがカタログ燃費で19.4/ℓ、実際の燃費が13.34㎞/ℓです。

これに比べて総排気量1800ccの自然吸気エンジンに電気モーターを組み合わせた、ハイブリッドシステムを搭載するオーリス・ハイブリッドの燃費は、カタログ値で1リットル当たり何と30.4㎞という驚愕の低燃費を実現しています。

市街地走行の燃費はハイブリッドと比較にならない

オーリス・ハイブリッドの実燃費は18.44㎞/ℓと、カタログ値に比べて低い数値となっていますが、これは欧州が主要市場となる同車のハイブリッドのセッティングが、アウトバーンなどの高速道路を快適に走行できるように、燃費よりも加速性能を重視しているからです。

このため市街地走行のみで比較した場合は、発進時にガソリンを一切使わない「EVモード」を備えたハイブリッドは、ダウンサイジングターボよりもずっと優れた燃費性能を持っています。

日本メーカーのダウンサイジングターボ搭載車について

ドイツ車に遅れて、近年ようやく登場してきた日本のダウンサイジングターボ搭載車を紹介します。

ホンダ

ホンダは2017年9月に、総排気量1500ccのダウンサイジングターボエンジン「VTECターボ」を搭載した、新型シビックを発売しました。新型シビックは世界クラスの「操る喜び」をテーマに開発された、ドライバーの意のままに操縦できる運転の楽しさがセールスポイントの車です。

大型化した大胆なボディデザインが魅力

新型シビックは6年ぶりに日本市場に復活させた意欲作で、新しいモデルはこれまでとは打って変わった堂々とした車体サイズを持ち、ボディバリエーションはクーペスタイルのセダンと、機能性の高いセダン風5ドアハッチバックがあります。また最高出力320馬力を誇る専用エンジンを搭載した、高性能モデル「シビック・タイプR」もラインナップされています。

かつてのシビックを知っている人には、とても同じ車とは思えない車幅が1.8mと大型化したそのスタイリングは、直線基調のアグレッシブなラインを多用した、前衛的とも言えるクールなデザインで、非常に目立つことは間違いありません。

1500ccで2400ccと同等の高性能を実現

肝心のエンジンは総排気量1500ccの直列4気筒直噴ターボに、ホンダが誇る可変バルブタイミングリフト機構「VTEC」を搭載し、最高出力182馬力、最大トルクは22.4㎏.mという2400ccエンジン並の高出力を発揮します。また気になる燃費性能は1ℓ当たり18.0㎞という低燃費を実現しています。

この新型シビックは販売好調で、月間販売目標2000台のところ、2017年12月時点で累計販売台数が1万2000台を超えたといいます。価格は265万320円からとなっており、今、最も注目の国産ダウンサイジングターボ搭載車です。

トヨタ

トヨタが販売するダウンサイジングターボ搭載車のうち、販売面で大きな成功を収めたのが、総排気量2000ccの4気筒直噴ターボエンジンを搭載した高級セダン、クラウン・アスリート2.0Tです。

こちらは直噴と従来のポート噴射式燃料供給装置を併用したシステム「D-4ST」を搭載し、双方の良いところを生かした、走行フィーリングに優れた操縦感覚が魅力で、排気量を縮小したにも関わらず、正に高級車としてふさわしいパワーユニットとなっています。

クラウンを買うなら2.0Tが断然

アスリート2.0Tの最高出力は235馬力、最大トルクは35.7㎏.mと、グレードである3500cc自然吸気エンジン車の38.4㎏.mに迫る力強さを実現し、なおかつ燃費は1ℓあたり何と13.4㎞という、これも3500cc車の9.6㎞/ℓより40%もの低燃費を実現しています。

トヨタのクラウン・アスリート2.0Tは最新ダウンサイジングターボ搭載で、今、最も高級セダンです。

スバル

スバルは同社の水平対向エンジンをベースとした、総排気量1600ccの直噴ターボエンジンを搭載したスポーティワゴン、レヴォーグ1.6を2014年6月に発売しました。こちらは日本車初のダウンサイジングターボ搭載車となります。

スバルのアイデンティティである水平対向エンジンをベースにした、この直噴ターボエンジンは、最高出力170馬力、最大トルクは25.5㎏.mと、同じスバルの2500cc自然吸気エンジンと同等のスペックを持ち、燃費は1ℓ当たり17.6㎞と、2500ccの14.6㎞/ℓから20パーセント以上も向上しています。

このため、ダウンサイジングターボを搭載した1.6GT-Sアイサイトは現在、レヴォーグシリーズの中で最ものあるモデルとなっています。

ダウンサイジングターボの耐久性は

ダウンサイジングターボは、かつてのターボ車に比べて過給圧(ブースト圧)かなり高めに設定されています。例えばフォルクスワーゲンの1400cc、TSIツインチャージャーでは、アイドリング時から0.75bar(バール)の過給圧が掛けられ、最大で1.5barという高過給となっています。これは最高出力485馬力を誇る、初期の2008年型R35日産GT-Rの倍の過給圧です。

そのため、エンジン本体やターボチャージャーへの負担といった耐久性が懸念されますが、現在のところ、ダウンサイジングターボの耐久性に問題があるとの指摘は特にされていません。

車1台あたり20万キロ以上も走る欧州車

これはダウンサイジングターボに搭載されているターボが、低速域からアクセルに対する反応を良くし、力強い走りを実現するために、容量の小さなターボを使用しているためで、過給圧が大きくても圧縮された空気の流入量が少ないため、それほどエンジンに負担が掛かりません。

ダウンサイジングターボは、指定された粘度のメーカー純正オイルを、正規ディーラーが定めたサイクル(主に車検毎に)できちんと交換してあげれば、耐久性が不安になることはありません。

それは車一台当たりの平均走行距離が20万キロ以上と多い、ドイツを始めとした欧州で、ダウンサイジングターボが普及していることからも証明できます。

ダウンサイジングターボのメリット・デメリットについて

環境問題に適応した低排出ガスと低燃費を実現し、その上で大排気量車と同等の高出力を両立させる目的で開発された、ダウンサイジングターボの持つメリットとデメリットについて説明します。

税金面での優位性

ダウンサイジングターボのメリットとして、エンジンの排気量が小さいため自動車税が安くなることがあります。

例えばトヨタの高級セダン、クラウン・アスリートで比較しますと、総排気量3500cc(3456cc)のV型6気筒DOHC自然吸気エンジンを搭載した、最上級モデルでは排気量3001以上~3500cc以下の枠に適応され、税額は年間5万8000円です。

これに対しダウンサイジングターボを搭載した、総排気量2000cc(1998cc)のアスリート2.0Tでは、排気量1501以上~2000cc以下の枠に適応し、税額は年間3万9500円で何と1万8500円も安くなります。

ダウンサイジングターボは税金面でお得

他のダウンサイジングターボ車では、新型ホンダシビック(1496cc)やBMW118i(1498cc)では税額3万4500円/年、フォルクスワーゲン・ポロ・ブルーモーションやルノー・ルーテシアZEN(0.9)など、総排気量1000cc以下の車では、税額2万9500円/年とかなり安くなります。

低速域から力強い走りで運転がしやすい

ダウンサイジングターボは、ターボ特有の発進時のもたつきはありますが、いざ走り出してしまえば低速域からターボが効き始め、どんな速度域でも思い通りの加速力が得られ、運転が非常にしやすいというメリットがあります。

これは小型のターボチャージャーを搭載し、アクセルに対する反応に優れているためで、これは同じ排気量の自然吸気エンジンでは得られない、ダウンサイジングターボならではの魅力です。特に日本みたいに走行中の速度域が低い交通環境では、常に気持ちのいい走りが可能で、誰にでも非常に運転がしやすい車といえます。

ダウンサイジングターボのデメリットは

ダウンサイジングターボのデメリットは、やはりカタログ値よりも実燃費がかなり悪くなってしまうことです。これは発進、停止を頻繁に繰り返す日本の交通環境の影響によるもので、優秀な燃費性能が売りのダウンサイジングターボの性能を、十分に発揮できないためです。

自動車は小型車でも軽く1トンを超える重量物ですので、車を静止状態から走らせる際にはかなりの動力を必要とするため、発進時には多く燃料を消費してしまいます。そのため発進時にはモーターを使用し、ガソリンを一切使わないハイブリッド車は、市街地走行での燃費が非常に良くなります。

また高速道路においても渋滞が発生しやすく、またカーブやトンネルが多い日本では加減速が多いために余分に燃料を消費してしまい、一定の速度で走れることが少ないため、期待したほどには燃費が良くなりません。

運転の仕方を工夫すれば燃費が良くなることも

ダウンサイジングターボ車で高速道路を走る場合は、運転の仕方を工夫して、時速80㎞程度でできるだけ一定の速度で走る「省エネ走法」を実行してみましょう。またオートクルーズなどが装備されている車両では、速度を設定するだけで簡単に省エネ走法をすることができます。上手くいけば相当な好燃費が期待できるでしょう。

その他のデメリットは?

他にダウンサイジングターボのデメリットとしては、3気筒など従来より気筒数が少なくなったことでエンジンの回転バランスが安定しにくく、振動やエンジン音が大きくなってしまうこと、また直噴化に不可欠なインジェクターがカタカタというノイズを発生する、そして、やはり発進時にはターボ特有のもたつきがあることなどです。

しかし、これらはユーザーによってとらえ方に個人差があるため、あまり神経質にならなければそれほど気にならないでしょう。なによりダウンサイジングターボには優れた走行フィーリングという他に代えがたい魅力があることにぜひ注目しましょう。

ダウンサイジングターボは環境問題に適応した技術の結晶です

話題のダウンサイジングターボについて、その成り立ちや魅力、欠点、メリットとデメリットなどを紹介しました。

地球温暖化による異常気象などが大きな問題となっている現在、自動車の排気ガスに含まれるCO₂(温室効果ガス)の削減は、世界中の自動車メーカにとって早急の問題となり、そのために開発されたのが、自動車のエンジン技術を結集したダウンサイジングターボです。

地球環境に配慮した低排出ガスと低燃費、同時に力強い走りをも実現したダウンサイジングターボは、多くの技術者たちの努力の結晶といえる素晴らしいエンジンです。

日本では実燃費があまり良くないという残念な点もありますが、ダウンサイジングターボの最大の魅力は、あらゆる場面で気持ちのいい走りが可能な優れたドライブフィーリングです。あなたもぜひ一度試乗して、その素晴らしさを確かめてみましょう。

初回公開日:2018年03月01日

記載されている内容は2018年03月01日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

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