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メーカー別の可変圧縮比エンジンの仕組みの比較|日産/ホンダ

更新日:2024年02月08日

日産自動車が2016年8月に可変圧縮比エンジン「VC-T]を発表し、2018年の実用化を目指しています。次世代のパワーユニットに成りうる可変圧縮比エンジンについて、アトキンソンサイクルエンジンとの違いや、可変圧縮比エンジンのメリットについて紹介します。

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これまで搭載されてきたエンジンの歴史

自動車の歴史は、とても古くて最初の自動車が誕生したのは1769年、なんと200年以上前の事です。我々に馴染みの深いガソリンエンジン自動車が誕生したのは1886年、130年以上前のことでした。

日本での自動車の生産が本格化したのは、第二次世界大戦後の1950年代半ばからの高度経済成長期からでした。これまでに色々な機構やシステムが開発され、自動車の技術は飛躍的な進歩を遂げています。

可変圧縮比エンジンを紹介する前に、国産のガソリンエンジン自動車に搭載されてきたエンジンの歴史を振り返ってみます。

2ストロークエンジン

2ストロークエンジンとは、ピストン1往復2工程で混合気の吸入から燃焼後のガスの排気までを行う内燃機関です。2工程で一連の動作をするため、2ストロークエンジンという呼び名になりました。

上昇工程で新気の吸入と混合気の圧縮を行い、下降工程で爆発した混合気でピストンが下がり、クランクシャフトへ力を伝え、同時に排気するという仕組みのエンジンです。

2ストロークエンジンは、1950年代から日本国内に登場した軽自動車に多く採用されたエンジンでした。ただ、時代の流れには逆らえず、厳しくなっていった排気ガス規制の前に、姿を消していきました。現在は、草刈り機のエンジンなどで使われています。

4ストロークOHVエンジン

4ストロークエンジンは、ピストン2往復4工程で混合気の吸入から燃焼後のガスの排気までを行う内燃機関です。4工程で一連の動作をするため、4ストロークエンジンという呼び名となりました。

吸入工程で混合気を吸入し、圧縮行程で混合気を圧縮し、燃焼行程で点火された混合気が膨張しピストンを押し下げ、排気工程で燃焼後のガスを排気管へ押し出します。OHVエンジンのOHVとは、オーバーヘッドバルブの略で、インテークバルブとエキゾーストバルブがシリンダーヘッド上に備えられたエンジンのことです。

OHVエンジンの特徴としては、次の特徴があります。

・構造が単純で、低コストで作り上げることができ、耐久性に優れている。

・カムシャフトをシリンダーブロックに配置する構造なので、エンジンの高さを抑えることができ、エンジンをコンパクトに作り上げる事ができる。エンジンの高さを抑えることで、車両の低重心化が図れる。

OHVエンジンのデメリットとしては、構造上、高回転に不向きな点です。

4ストロークOHCエンジン

OHCエンジンのOHCとは、オーバーヘッドカムシャフトの略で、インテークバルブとエキゾーストバルブを作動させるカムシャフトがシリンダーヘッド上にあるエンジンです。次に紹介するDOHCエンジンと区別するために、SOHC(シングルオーバーヘッドカムシャフト)エンジンと呼ばれています。

OHVエンジンと比較して、動弁機構の部品点数を少なくでき、動弁部品の慣性重量を減らすことができるため、比較的高回転・高出力向きなエンジンと言えます。ほとんどの自動車メーカーがOHCエンジンを採用していました。

4ストロークDOHCエンジン

DOHCエンジンとは、ダブルオーバーヘッドカムシャフトの略で、インテークバルブを動かすためのカムシャフトと、エキゾーストバルブを動かすためのカムシャフトをシリンダーヘッド上に配置したエンジンです。DOHCエンジンには、次の特徴があります。

・高回転化、高出力化が容易に図れる:シリンダーヘッド上に2本のカムシャフトをレイアウトすることで、バルブタイミングやバルブリフト量の自由度が増し、高回転高出力化が容易に図れる。

・可変バルブタイミング機構との相性が良い:現在、ほとんどの自動車メーカーが採用している可変バルブタイミング機構との相性がよく、エンジンの低回転域と高回転域でバルブタイミングを変更することによって、低燃費と高出力を兼ね備えることができる。

現在、各自動車メーカーが採用しているアトキンソンサイクルエンジンは、DOHC+可変バルブタイミング機構を取り入れたエンジンの進化系とも言えます。次に、アトキンソンサイクルエンジンについて紹介します。

アトキンソンサイクルエンジンとは?

アトキンソンサイクルは、4ストロークエンジンが基礎となっています。基本的な考え方は、圧縮比より膨張比を大きくとって、熱効率を向上させるという理論をもとに、1882年に開発されました。アトキンソンサイクルのアトキンソンとは、開発者の名前に由来します。

開発当時は、4ストロークエンジンの「燃焼行程」のみピストンのストローク量を多くとるために、構造が複雑となり実用化には至りませんでした。

以下のトヨタ公式動画を参考にしてください。

なぜアトキンソンサイクルは実用化できたのか?

ではなぜ、現在アトキンソンサイクルエンジンが実用化できているのでしょうか。現代のアトキンソンサイクルは「ミラーサイクル」と呼ばれるシステムになります。

ミラーサイクルとは、アトキンソンサイクルの理論を、吸気バルブの「早閉じ」または「遅閉じ」することによって実現しました。吸気バルブの閉じるタイミングをずらし、吸入空気量を減らして実質的圧縮比を下げ、吸い込んだ混合気を無駄無く効率良く使うことができるシステムです。

このミラーサイクルは、1993年10月にマツダが市場に投入した、ユーノス800のKJ-ZEMエンジンに採用されました。ミラーサイクル採用は、量産車としては世界初でした。

また、ホンダはミラーサイクルを使わず、アトキンソンサイクル理論を忠実に再現したエンジン「EXlink」を家庭用ガスコジェネレーション用として、2013年に実用化しました。

以下のホンダ公式動画を参考にしてください。

メーカー別の可変圧縮比エンジンの仕組みの比較

では、次に各自動車メーカーが開発している、可変圧縮比エンジンの仕組みについて紹介していきます。

日産

日産は、2016年8月に可変圧縮比エンジンの「VC-T」を開発し、2018年の実用化を目指すと発表しました。

通常のレシプロエンジンでは、ピストンの上死点は固定です。これは構造上仕方ないのですが、日産が開発した可変圧縮比エンジンは、クランク機構をマルチリンク化することによって、ピストンの上死点を変化させることができ、圧縮比を8から14へ自在に変化させます。

高効率を求めるエンジン低回転域・中負荷時には、高圧縮側へ制御し、ハイパフォーマンスを必要とする高回転・高負荷域の時には、低圧縮側へ制御します。

ホンダ

ホンダは、先程も紹介したようにアトキンソンサイクル理論を忠実に再現した「EXlink」という高膨張比エンジンを開発し、ガスコジェネレーションシステムに使用しています。

自動車用エンジンとしては、VTEC(可変バルブタイミングリフト機構)と電動VTC(連続可変バルブタイミングコントロール機構)を併用するミラーサイクルエンジンを一部車種に搭載しています。可変圧縮比エンジンの構想もあり、特許を出願しています。

トヨタ

トヨタも、吸気バルブの遅閉じを使ったアトキンソンサイクル理論のエンジン、いわゆるミラーサイクルを採用したエンジンを搭載しています。VVTi-E(バリアブル・バルブ・タイミング・インテリジェント・バイ・エレクトリック・モーター)というシステムを使用し、吸気バルブをコントロールし、低燃費化と高出力化を両立しています。

実は、トヨタ自動車も可変圧縮比エンジンの特許を出願したようで、エンジン部品の一つであるコンロッド(コネクティングロッド)の長さを変えることによって圧縮比を変化させる、可変圧縮比エンジンの内容で出願しました。

日立

日立というと、電化製品をイメージされる方が多いでしょう。実は、日立というメーカーは、自動車部品も手掛けています。

先程紹介した、日産の可変圧縮比エンジン「VC-T」の肝になるハーモックドライブという部品を日立が開発しました。この部品を作動させる事によって、リンクを動かし、ピストンのストロークを変化させ、圧縮比を可変させる仕組みです。

マツダ

マツダのエンジンと言えば、スカイアクティブです。スカイアクティブGでは、圧縮比14というガソリンエンジンのこれまでの常識を覆す、高圧縮比を実現しました。可変圧縮比エンジンの構想があるかどうかは不明です。

先程少し触れましたが、マツダは1993年にミラーサイクルエンジンを世界に先駆け量産車に搭載しました。ただ、世の中に受け入れられず2000年にはカタログから姿を消しました。ですが、2007年に登場した3代目デミオにミラーサイクルエンジンが再び搭載されました。

可変圧縮比エンジンとHCCIの違いは?

次世代のエンジンと注目の可変圧縮比エンジンですが、もう一つ注目されるエンジンが「HCCI」エンジンです。

現在、各自動車メーカーが採用しているミラーサイクルエンジンは、圧縮比より膨張比に着目し、吸気バルブをコントロールして吸入空気量を減らし、より効率良く膨張エネルギーを取り出します。高効率を求められる場面、高出力を求められる場面でバルブタイミングを変化させているので、可変圧縮比エンジン(可変膨張比)に近いエンジンと言えます。

HCCIエンジンは、考え方がディーゼルエンジンに似ています。次に、HCCIエンジンについて紹介します。

HCCIとは?

HCCIとは、Homogeneous・Charge・Compression・Ignitionの略で、予混合圧縮着火システムといいます。簡単に説明すると、あらかじめ燃料と空気を混ぜた混合気を圧縮し自己着火させるという事です。

ディーゼルエンジンは、高圧縮した空気に軽油を噴射し、圧縮された空気の熱により軽油が自己着火、膨張しピストンを押し下げます。圧縮して自己着火させる所が、HCCIと似ています。HCCIエンジンも、可変圧縮比エンジンと同様に実用化が困難だと言われていました。ですが、マツダがスカイアクティブXというエンジンを開発し、HCCI技術を応用した「SPCCI」という技術を採用しました。

可変圧縮比エンジンの燃費の良い理由は?

可変圧縮比エンジンは、従来のレシプロエンジンより大幅な燃費向上が期待されています。先程紹介した日産の可変圧縮比エンジン「VC-T」は低・中回転域の低負荷時は、高圧縮にし効率を上げ、中・高回転域の高負荷時には低圧縮にしてターボチャージャーとの相乗効果で、最適なパフォーマンスを発揮します。

つまり、どの回転域でも常に最高のパフォーマンスが発揮できるので、燃費が向上するという事です。日産の可変圧縮比エンジン「VC-T」は、燃費27%改善に成功しています。

可変圧縮比エンジンは世紀の大発明!

今回は、可変圧縮比エンジンについて紹介しましたが、いかがでしたか。

自動車の技術は、すごい勢いで進歩しています。特に近年では、低公害・低燃費・先進安全に向けた技術開発が進んでいます。可変圧縮比エンジンの実用化は、「世紀の大発明」「夢の技術」とも言われています。

可変圧縮比エンジンの市場への投入を待ちわびながら、次なる新技術に期待しましょう。

初回公開日:2017年12月01日

記載されている内容は2017年12月01日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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