圧縮比の計算方法・ターボ・燃費との関係|ディーゼル/RX8
更新日:2024年06月14日
圧縮比の計算方法・求め方について
車やオートバイを購入する前に、メーカーが作成したカタログなどをチェックしていると、その車両の性能諸元表(性能を数値化した表)の中に、「圧縮比」という項目を必ず目にします。「圧縮比」は、車が好きな人なら一度は耳にしたことがあるでしょう。
「圧縮比」とは、車に搭載されたエンジンの性能を表すのに、大変重要な意味を持つ言葉の一つです。この「圧縮比」によって、車がどのような走り方をするのか、その走行フィーリングなどをおおむね知ることができるという、上手な車選びをするためのポイントの一つとして、非常に興味深い物だといいます。
それでは、この「圧縮比」とは一体、具体的にどのような意味があるでしょう。これは、たとえ車好きの人でも、専門的な知識が豊富でなければ、その意味を正確に知る人はそれほど多くないでしょう。
そのような「圧縮比」について、その秘密や数値の求め方などを解説していきます。
エンジンの性質を決める重要な要素
「圧縮比」とはエンジンを設計したり、性能を改善したりする場合に、いかに大きな力を出せるかを検討するために必要な数値として、非常に重要な要素の一つです。
「圧縮比」は、熱エネルギーを元にしてそれを動力に転換して使用する、あらゆる「熱機関(ねつきかん)」、つまり「内燃機関」および「外燃機関」においてその「内燃室(ないねんしつ:燃焼室+シリンダー)」の容量が、最も大きくなる時と、最も小さくなる時との比率を表す数値をいいます。
「圧縮比」とエンジンの出力
例えば車のレシプロエンジンなどでは、上部のシリンダーヘッド内の「燃焼室(ねんしょうしつ)」で起こる爆発エネルギー(熱エネルギー)によって、ピストンがシリンダー内を上下に往復運動を繰り返し、それがクランクシャフトを回して回転エネルギーへと変換し、動力源として使用します。
上死点と下死点との間をピストンが往復する
ピストンによる上下運動のうち、ピストンが上から下へと下がる行程を「膨張(ぼうちょう)」といい、これによってシリンダー内部に空気を吸い込みます。その際、ピストンが最も下にまで下がったところのポイントを「下死点(かしてん:bottom dead center《BDC》)といいます。
下死点に達したピストンは、そこから今度は吸い込んだ空気を、上部の燃焼室へと向かって押し上げていきます。これを「圧縮(あっしゅく)」といい、ピストンがシリンダーの上限いっぱい(燃焼室のすぐ下)まで上がったポイントを、「上死点(じょうしてん:top dead center《TDC》)といいます。
圧縮比が高いほど高出力のエンジンに
「圧縮比」とは、エンジンの内燃室の容量(燃焼室の容量+シリンダーの容量)が、このようにピストンが下死点に来たとき(最大)と、上死点に来たとき(最小)との比率を表す数値です。
つまり「圧縮比」は、ピストンがシリンダー内に吸い込んだ空気を燃焼室へと押し上げる(圧縮する)際に、どれだけ強い圧力が掛けられるかを示す数値のことで、「圧縮比」の値が高いほど、それだけ爆発による大きなエネルギーを生み出すことができます。このため「圧縮比」が高いエンジンほど、より大きな馬力が出せるエンジンとなります。
圧縮比の計算方法
圧縮比(compression ratio《CR》)の計算方法は、内燃室の容積(燃焼室+シリンダー)を燃焼室の容積で割ることで算出できます。
エンジンのシリンダーおよびシリンダーヘッドを含む、内燃室(ないねんしつ)全体の容積を計算するには、シリンダーヘッドの内部である「燃焼室」の容積と、ピストンが上死点(TDC)から下死点(BDC)までシリンダー内を移動した容積を合計します。
圧縮比(CR)=(Vc+Vs)÷Vc
このピストンが上死点から下死点まで移動する距離を「ピストン行程(こうてい:stroke《S》)といいます。このことから、ピストンがシリンダー内を「ピストン行程(S)」分だけ目一杯の距離を移動した際の、シリンダー容積を「行程容積(stroke volume《Vs》)といいます。
またピストンが上死点(TDC)一杯まで上がった際、ピストンの頭頂面とその上部のシリンダーヘッドの燃焼室壁面との間にすきまができます。これを「すきま容積(clearance volume《Vc》)」または「燃焼室容積」といいます。
つまり圧縮比の計算式は、
CR(圧縮比)=(Vc+Vs:すきま容積+行程容積)÷Vc(すきま容積)
となります。
Vsは排気量を求める計算式で
ちなみにVs(行程容積)の計算方法はエンジンの排気量を求める方法で行います。シリンダー内径(ボア《㎜》)をD、ピストンの上死点から下死点までの行程距離(ストローク《㎜》)をS、円周率をπ(3.14)として、
Vs(行程容積《㎤》)=(D²×π/4《0.785》×S)÷1000
となります。また、すきま容積(Vc)について、こちらは計算ではなく、シリンダーヘッドの燃焼室に灯油などを流し込み、その量をメスシリンダーを用いて実測で計ります。
圧縮比の計算例(ヤマハSR400)
では実際に圧縮比を計算する例として、ヤマハSR400の圧縮比を求めてみましょう。SR400は1978年の誕生以来、何と40年近くの長い歴史を持つオートバイで、総排気量399㎤の空冷単気筒エンジン(最高出力26馬力)を搭載しています(2017年をもって生産終了)。
このエンジンのシリンダー内径(ボア:d)は87.0(㎜)、ピストン行程(ストローク:S)は67.2(㎜)です。このためVs(行程容積)はπ=3.14とすると、
(d²《87.0㎜×87.0㎜》×《π×¼》×S《67.2㎜》)÷1000=399.279㎤となります。
また、すきま容量(Vc)は53.3㎤ですので、圧縮比(CR)は、
(Vc《53.3㎤》+Vs《399.279㎤》)÷Vc(53.3㎤)=8.49117988
となり、ヤマハSR400の圧縮比は「8.5」という数字になります。
レシプロエンジンの圧縮比
熱エネルギーを利用して動力源とする熱機関(内燃機関および外燃機関)では、燃料を燃やした際に発生する熱をいかに効率よく利用できるかという、「熱効率(ねつこうりつ)」が重要となります。この熱効率を高めるためには、圧縮比が大きく関係します。
同じ量の燃料および空気を使って、より大きな運動エネルギーを作り出すためには、圧縮比が高い方が理想的となります。それは同じ排気量と燃料量であっても、圧縮比が高ければ高いほど、それだけピストンを押し下げる圧力が大きくなるためです。つまり、一般的に圧縮比の高いエンジンの方が、圧縮比の低いエンジンよりも高出力、高トルクの場合が多いです。
圧縮比が高すぎるとエンジンを破損することも
しかし、高出力を得ようとしてあまり圧縮比を高くしすぎると、シリンダー内の空気の密度が上るために、空気の分子を取り巻く運動エネルギーが大きくなって激しくぶつかり合い、その結果、熱を発生します。
このため燃料と空気が混ざった「混合器(こんごうき)」が圧縮されることで高温になるため、スパークプラグが点火する前に自然発火してしまい「デトネーション」という現象が起こります。
「デトネーション」とはエンジン内の異常燃焼の一つで、ピストンがシリンダーの壁にぶつかってカタカタと金属音がする「ノッキング現象」を起こしたり、またはシリンダー内で音速を超える速度で炎が伝播し、ピストンの表面が溶けるなどしてエンジンに致命的なダメージを与える事もあります。
ノッキングを防ぐ有鉛ハイオクガソリン
このように高すぎる圧縮比は高出力を得られる代わりに、「デトネーション」によるピストンの溶損(ようそん)といった「エンジンブロー(ピストンの焼き付き、コンロッドの折損、シリンダーブロックの破損など、エンジン本体の構造部が破壊されてしまう状態)」の原因となり、エンジンの耐久性を著しく低下させます。
このような現象を防ぐために、かつては鉛(なまり)成分を多く添加して対ノッキング性を高めた、「有鉛ハイオクガソリン(鉛中毒の危険性から1972年3月末より使用禁止)」を使用して、高い圧縮比でも異常燃焼が発生しないようにしていました。
12.5という高圧縮比で550馬力以上を叩き出す驚異のエンジン
1970年代にアメリカのクライスラーが製造した総排気量7000ccのV型8気筒エンジン、「426ヘミ」は、12.5という高い圧縮比から550馬力以上という高出力を実現しています。(これはエンジン単体で馬力を計測した数字《グロス値》で、現在使われている、実際に車両に搭載した状態で計測した数字《ネット値》では、これよりも15~20%低い数字になります)
とはいえ、こちらはレースでの使用を想定して市販された特別仕様のエンジンで、高濃度の鉛を大量に添加した、専用の有鉛ハイオクガソリンを使用することが最低条件でした。このように、当時のアメリカ車にはマッスルカー用の超高性能エンジンとして、まるで象みたいに巨大な大排気量、高圧縮比のハイパフォーマンスエンジンが存在していました。
圧縮比10が一般的なガソリンエンジンの上限
また1970年代後半から、燃料供給装置がそれまでのキャブレターに代わり電子制御燃料噴射装置が普及し始めると、エンジンのノッキングを検知して自動的に点火時期を遅らせる「ノックセンサー」が装備されるようになり、圧縮比を高めてもエンジンの耐久性に影響が出ないように対策が施されました。
しかし、それでも「デトネーション」の発生によるエンジンブローの危険性を完全に防ぐことは難しいため、一般的な自然吸気のガソリンエンジンの場合は圧縮比が10(10:1)以上にまで高くすることはありません。
マツダのSKYACTIVは世界初の14.0という高圧縮比を実現
また現在市販されている車両では、例えばマツダ・デミオに搭載されているSKYACTIV-G1.3では、何と14.0という世界初の高圧縮比を実現したと謳っています。こちらはエンジンの吸気弁を「早閉じ」または「遅閉じ」させるミラーサイクル技術を採用して、圧縮時の混合気の温度上昇を抑えてノッキングを防止しつつ、高い圧縮比を実現させています。
ミラーサイクル方式では、ピストンによる混合器の圧縮時に、吸気バルブが閉じるのをやや遅らせるため、吸い込んだ空気の一部を元に戻す形になり、過度に空気の密度が高まるのを防いでノッキングを予防しますが、しかし、その分圧縮による反発力は実際よりも小さくなってしまうため、従来のエンジンみたいにパワーを出すための高圧縮比とは仕組みが異なります。
低燃費と優れた環境性能を実現する現在の高圧縮技術
このため、マツダのSKYACTIV-G1.3エンジンは出力の向上よりも、主に低燃費と環境性能の向上が目的の高圧縮技術となります。このほかトヨタのハイブリッドカー、プリウスに搭載されている2ZR-FXE型や、ホンダのフィット・ハイブリッドのLEB型も、ミラーサイクル(アトキンソンサイクル)技術を採用したエンジンです。
圧縮比とターボの関係は
ターボとは過給機( turbocharger)のことで、シャフト(軸)の両側に金属製の風車(タービンブレード)をつけ、それを排気側と吸気側という、かたつむりに良く似た二つのハウジングで囲んだ、エンジンの出力を向上させる装置です。
通常のエンジンを「自然吸気(NA:Natural Aspiration)」といって、シリンダー内をピストンが下がる(膨張)ことによる負圧を利用して、エンジン内に燃料と空気を吸い込みます。
これに対しターボ付きエンジンでは、エンジン内の排気ガスの力を利用して、エキゾースト(排気)ハウジング内のタービンを回して空気を取り込み、それをコンプレッサー(圧縮)ハウジング内のタービンで圧縮して、エンジン内に強制的に送り込みます。またこの際ターボによって掛けられる圧力を「ブースト圧」といいます。
ターボでは圧縮比を低めに設定する
このようにターボエンジンの場合は自然吸気エンジンと違って、ターボチャージャーによって「ブースト圧」が掛けられることで、既に圧縮された空気がエンジンに入り込み、ピストンが圧縮を行う場合に混合器がより高温となるため、デトネーションによるノッキング現象や、エンジンブローが起きやすくなります。
ターボ車ではその対策として、自然吸気エンジンよりも低い圧縮比が設定されたり、空燃比を濃くしたりします。(空燃比《A/F》:混合器に含まれる燃料の割合。燃料が濃い方が炎の伝播速度が遅いため、デトネーションの発生を抑えられます)
ターボと自然吸気の圧縮比を比較すると
同じ排気量で、同等の最高出力のエンジンで比較すると、例えば日産の排気量2000ccの直列4気筒DOHC(ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフト。エンジンの吸排気機構方式の一つ)エンジンに、ターボチャージャーを搭載したSR20DET型エンジンと、ホンダの2000cc直列4気筒DOHC自然吸気の、F20Cエンジンでは、圧縮比の数値に大きな違いがあります。
どちらも最高出力250馬力という、2000ccクラスではかなりの高性能エンジンですが、ターボエンジンの日産SR20DETの圧縮比が8.5なのに対して、ホンダF20Cでは何と11.7という高圧縮比となっています。
ターボはブースト圧によってハイパワーを得ている
こちらはホンダ独自のVTECという可変バルブタイミングリフト機構によって、エンジンの回転域によってバルブの開閉時期やバルブを開く量を調整して、圧縮比をコントロールすることで実現しています。
またSR20DETでは、ターボ過給によって0.5~0.6㎏f/㎠(キログラム平方センチメートル:Kilogram/Square Centimeter)のブースト圧が既に掛かっているため、圧縮比が低く設定されています。
このようにターボ車では圧縮比を下げたり、またはインタークーラーを装着して混合気の温度を下げるなどしてデトネーションの発生を防ぎ、エンジンの耐久性への影響を軽減しています。
ダウンサイジングターボとは
また現在ではエンジンの直噴化技術(Direct injection:高圧で気化したガソリンをエンジン内に直接噴射する装置)が進歩し、エンジンの耐ノッキング性能が向上したことから、小さな排気量のエンジンにターボを装着して、大排気量車並みに出力を高めた「ダウンサイジング・ターボエンジン」が登場し、欧州車を始めとして急速に普及しています。
こちらはターボによるブースト圧をあえて低めに設定し、その分圧縮比を高めて熱効率を上げ、高出力を実現した物で、トヨタの8NR-FTS型ターボエンジンは、1200ccの排気量で10.0という自然吸気並みの高圧縮比を実現し、最高出力116馬力という2000ccクラスと同等の高性能を達成しています。
新技術によってターボの圧縮比も変化した
これまでのターボエンジンでは、圧縮比を下げる代わりに、過給によってブースト圧を掛けることで出力を上げ、高速走行時におけるハイパワーを達成するのが目的でした。
これに対し、トヨタ8NR-FTS型を始めとしたダウンサイジングターボでは、小さな排気量のエンジンに、低ブースト圧で高レスポンスのターボチャージャーを装着することで、低めのブースト圧のままエンジンの圧縮比を自然吸気並に高めて熱効率を上げ、市街地走行など実用域での力強い走りと、低燃費、優れた環境性能を実現した新世代のエンジンとなっています。
このように、時代の流れと共に技術革新が進み、ターボと圧縮比の関係も大きく様変わりしています。
圧縮比と燃費の関係は
圧縮比はエンジンの出力だけでなく燃費にも影響します。それは自動車のレシプロエンジンを始めとした、熱エネルギーを利用した「熱機関」においては、燃料を燃やすことによって発生する熱エネルギーを、いかに効率よくエネルギーに変換できるかという「熱効率(ねつこうりつ)」が重要だからです。
この熱効率は圧縮比と比例し、圧縮比が高いほど熱効率が良い事になります。ですので圧縮比が高ければそれだけ効率よくパワーを引き出せ、同時に燃費も良い事になります。
ディーゼルエンジンの圧縮比について
ディーゼルエンジンはガソリンエンジンとは違って、エンジンの点火にスパークプラグを用いない「圧縮点火機関(あっしゅくてんかきかん)」のため、ガソリンエンジンよりも圧縮比は高めに設定されます。
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンとは違って混合気ではなく、シリンダー内に空気のみを取り入れて圧縮し、高温となった空気に燃料となる「軽油(ガソリンよりも着火性が高い)」を、噴射ポンプによってエンジン内に直接噴射することで自然発火させます。
このため、ガソリンエンジンみたいな早期着火によるノッキングの心配がないため、高圧縮比によって熱効率を向上させ、低燃費と高出力を実現できます。
ディーゼルエンジンでは、一般的に18~20(18:1~20:1)といった、ガソリンエンジンに比べてかなり高い圧縮比が採用されています。
圧縮比の単位
圧縮比とは、エンジンの圧縮行程時に掛かる圧力を示す数値で、数値が高いほど高圧縮のエンジンとなり、熱効率に優れた高出力で燃費の良いエンジンとなります。
圧縮比を表す単位としては、ブースト圧と同じ圧力を示す㎏f/㎠(キログラム平方センチメートル)や、Mpa(ミリパスカル)を用います。
エンジンの圧縮比の異常を測定する方法
エンジンの圧縮比に異常がないかを測定するには、「コンプレッションゲージ」という器具を使用します。これは燃焼室内の圧縮圧力を測定する器具です。走行距離が長い、または年式が古く経年劣化を生じていると考えられるエンジンや、チューニングなどで高負荷が掛かったエンジンでは、摩耗などにより圧縮圧力が低下している場合があります。
そういった場合はエンジン本来の性能を発揮できず、不調の原因となります。そこで全てのシリンダーの圧縮圧力を測定することで、不調箇所を探り当てて、ピストンリングの交換やオーバーホールなどを行い、本来の性能を取り戻します。
圧縮圧力の測定方法
まずスパークプラグを全て外し、プラグホールにコンプレッションゲージを差し込みます。次にセルモーターを回しながらゲージの目盛を確認して、圧縮圧力を測定します。2気筒エンジンでもでも12気筒エンジンでも、全てのシリンダーの圧力数値は同じですので、ひとつずつ全てのシリンダーを測定して、数値が異常に低い箇所には修理の必要があります。
圧縮比の記号は
圧縮比は英語で Compression Ratioといいます。したがって圧縮比を示す記号は、頭文字を取って「CR」と表記します。
マツダロータリーRXシリーズの圧縮比は
ロータリーエンジンとは、レシプロエンジンみたいなピストンとシリンダーによる往復運動ではなく、おむすび型(三角形)のローターがまゆ型のハウジング内を回転することで、中央のエキセントリックシャフトを回して動力源とする、ガソリンエンジン形式の一つです。
ロータリーエンジンは1957年にドイツのエンジニア、フェリックス・ヴァンケルによって開発され、その後、マツダ(東洋工業)がNSUヴァンケル社から特許を購入し、自動車用エンジンとして量産に成功しました。
ロータリーエンジンの総排気量は、1ローターあたりの内燃室容積×ローターの数で計算します。マツダは2012年を最後にロータリーエンジン車の生産を中止していますが、現在のところ最後のロータリーエンジン搭載車となるRX-8を始め、1990年から2002年まで生産されていたFD3S型RX-7でも、搭載されていたのは13B型ロータリーエンジンでした。
ロータリーエンジンの圧縮比と排気量
13B型ロータリーエンジンは総排気量654cc×2ローターの1,308ccです。レシプロエンジンではシリンダーのボア(内径)を拡大したり、ピストンストロークを延長することで排気量を上げたり、圧縮比を高めたりすることができますが、ロータリーエンジンでは基本的に不可能となります。
ロータリーエンジンの燃焼室は、おむすび型ローターの三辺それぞれの表面に作られたくぼみです。こちらがレシプロエンジンでいうシリンダーヘッドの内壁部で、ロータリーエンジンの圧縮比はこのくぼみの大きさのみで調整することになります。
RX-8
2003年から2012年まで生産されていたRX-8は、大人四人が座ることのできる座席スペースと、「フリースタイルドア」と呼ばれる観音開き(後部座席ドアのヒンジが後ろにあり、前後ドアを開けると観音厨子みたいに真ん中から左右に開く)型のドアを備えた4ドアクーペです。
RX-8は、4つの車輪を強調したフェンダーの盛り上がりが印象的な、実用性を考慮した美しいスタイリングを持つ車ですが、初代RX-7から受け継がれたスポーツカーとしての素性も併せ持ち、軽量コンパクトなロータリーエンジンの利点を生かした理想的な前後重量配分など、大変魅力的なスポーツカーとしてがあります。
自然吸気としたことでロータリーの魅力を存分に味わえる
注目すべきはそのエンジンで、FD3S型RX-7と同じ13Bロータリーですが、何と自然吸気のエンジンとなっています。RENESISと呼ばれるこのエンジンは、6速のマニュアルトランスミッション仕様で最高出力は250馬力、圧縮比は歴代の13B型ロータリーでは最高の10.0となり、レシプロ高性能エンジンと同等の圧縮比を実現しています。
これによってロータリーエンジンンの欠点だった燃費の悪さや、低速域での力不足が改善されています。ですが、それよりも自然吸気としたことで、ロータリーエンジンが持つまるで電気モーターみたいにストレスなく回る、あの独特のフィーリングが存分に味わえるエンジンとなったことが、この車の最大の魅力です。
RX-7
世界で唯一のロータリーエンジンを搭載したスポーツカーとして、1978年に登場したRX-7は、2002年に生産中止となるまで日本を代表するスポーツカーの一つとして販売され、現在でも世界中に多くのファンを持つ魅力的なロータリーエンジン車です。
初代のSA22C型では12A型ロータリーエンジン(573cc×2ローターで1,146cc。最後期型ではターボが装着された)が搭載されましたが、後継モデルとなるFC3S型以降は全て13B型ロータリーでターボ付きエンジンが搭載されています。
走りの楽しさと実用性を兼ね備えたFC3S型
1985年登場のFC3S型は、当時クラスの性能を誇っていたスポーツカー、ポルシェ944ターボをお手本にした、優れたコーナリング性能と非常に実用的な室内スペースを持つ、万能型ともいえる魅力的なスポーツカーです。また電動ソフトを備えた、優雅な「カブリオレ」もラインナップされました。
初代から受け継ぐ前後50:50の理想的な前後重量配分は、軽量コンパクトなロータリーエンジンだからこそ実現できた物で、まるでレールの上を走っているかのようにナチュラルで、なおかつ限界域ではエキサイティングなハンドリング特性は、製造中止から25年以上経過した現在も多くのファンが存在しています。
13B-Tエンジンの圧縮比は9.0
エンジンは13B型ロータリーに空冷式インタークーラーを備えたターボを装着しています。こちらはターボのエキゾーストハウジング内への燃焼ガス流入路を二つに分け、その入り口に開閉バルブを設けた、国産車初の「ツインスクロールターボ」で、当時ターボ車の弱点とされた低速域でのレスポンスを向上させています。
この13B-T型エンジンは、1989年に登場した後期型の高出力仕様で、最高出力215馬力、圧縮比は9.0となっています。
美しいスタイリングとハイパフォーマンスが魅力のFD3S型
その後継モデルで、現在のところRX-7としては最後のモデルとなるFD3S型は、まるで60年代のイタリアン・レーシングスポーツを思わせる、艶めかしいエキゾティックなスタイリングが特徴の車で、前後共にレーシングカーに採用されるダブルウィッシュボーン式サスペンションを装備した、ハイパフォーマンス・スポーツカーとして登場しました。
搭載されるエンジンは、何と総生産台数が283台の伝説の名車、ポルシェ959と同じシーケンシャル・ツインターボを装備したロータリーエンジン13B-REW型です。こちらは二つのターボを低中速域では1基のみ、高速域では2基と、速度域に応じて使い分けることで、低中速域での俊敏なレスポンスと、高速域でのハイパワーを両立させた高度なシステムです。
13B-REW型の圧縮比は9.0
最高出力は1998年に登場した最終仕様で、最高出力280馬力、圧縮比は9.0となっています。FD3S型RX-7は、その非常に美しいスタイリングとエンジンの高度なメカニズム、スーパーGTを始めとしたレースでも活躍した優れた走行性能など、製造中止から15年以上経過した現在も、世界中で高いを誇るスポーツカーです。
マツダは2020年までにRX-7の次期モデルを発表するとアナウンスしており、新型では全く新しい新開発のロータリーエンジン「16X」型を搭載する予定だといいます。「16X」は13B型よりもさらに排気量を拡大した、新世代のロータリーエンジンとのことで、一体どんな走りをするのか、多くのファンたちが登場を待ち望んでいます。
圧縮比はエンジンの性質を決める大切な要素
圧縮比について、その意味や計算方法、エンジンの種類ごとの圧縮比の数値と、その特徴などを例を挙げて解説しました。
ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの熱機関は、燃料を燃やすことで生じる熱エネルギーを、いかに効率よく動力源に転換できるかという「熱効率」が重要で、その「熱効率」の高さを表すのがエンジンの圧縮比です。
圧縮比が高ければ高いほど大きなパワーを得られ、また熱効率の良さは燃料を無駄なく消費し、燃焼状態も良好なため、燃費や環境性能にも優れたエンジンとなります。
圧縮比の意味を良く理解して、あなたも車選びの参考にしたり、自動車趣味の幅をさらに広げて、充実したカーライフを楽しみましょう。
初回公開日:2018年02月18日
記載されている内容は2018年02月18日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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