ヨーイング痕の見方・ピッチングとローリングとの違い
更新日:2024年11月04日
ヨーイング痕の見方
ヨーイングとは、乗り物など前後左右上下が決まった物体が、上下を軸として回転することです。分かりやすく言えば、車体を真上から見た時に、左右どちらかに旋回する挙動のことをヨーイングと言います。左右を軸にしたものがピッチングで、前後を軸に回転したものがローリングです。
ヨーイング痕とは、交通事故の時、車両が方向性を失ってタイヤ軸方向に滑りを生じた時にできるタイヤの跡を意味します。タイヤが使いこまれてつるつるしていると、この跡がでません。
故意にヨーイング痕を残すと
故意にヨーイング痕などのタイヤ痕を残すと、道路交通法違反だけではなく、器物損壊罪で逮捕されてしまう事もあります。また、意図的に行った場合も処罰の対象になります。しかし、故意や意図的ではなければ、罪に問われる事はありません。スポーツでのドリフトなどは、決められた場所で行いましょう。
自動車事故の際のヨーイング痕
ヨーイング痕は、自動車事故で道路面にスリップ痕が付く際の種類の一つです。どのような痕が残るのかご紹介します。
スキッド痕
スリップの後に残る痕をスリップ痕またはスキッド痕と言います。路面とタイヤの間にすべりを生じ、しかも車輪がほとんど転動しないときのタイヤ痕です。スキッド痕は、3つに分類され、ヨーイング痕もその一つです。
ヨーイング痕
車両が方向性を失って、タイヤが軸方向にすべりを生じて、車輪が転動ときに路面に印象されるタイヤ痕です。ヨーイングは、真っすぐすすんでいたものが途中で旋回する意味があります。
スキップ・スリップ痕
途中で途切れてスキップして、連続性がないものをスキップ・スリップ痕と言います。
狭い意味でのスリップ痕
車輪がほとんど転動しないようなときに、路面に印象されるタイヤ痕ですが、通常は連続性があります。
ヨーイング痕からわかるもの
ヨーイング痕の開始地点が、車両の横滑り開始地点である事や、衝突による衝撃で車両が転動くしている場合には、衝突によるヨーイング痕が路面に印象されて衝突地点が推定できます。
ヨーイング痕が不規則になる地点では、事故再現際、車両の動きを推定できます。また、衝突後の急旋回で生じたヨーイング痕からは、車両の最終停止位置と方向が分かります。
ヨーイング痕以外からわかるもの
事故現場では、ヨーイング痕以外から、状況が判断できるものもあります。
スキップ・スリップ痕からわかるもの
衝突前のスキップ・スキッド痕からは、車両の進行方向や速度、衝突地点が推定できます。衝突前のスキップ・スキッド痕の全長を測定することによって、急性動開始時の速度を推定します。また、進行方向にしたがって徐々に短くなっていきますので、ひき逃げ事故の場合には、スキップの間隔の測定で、車両の進行方向を推定できます。
連続性のあるスリップ痕から分かるもの
衝突前のスキッド痕の開始点を観察すると、急制動開始地点が分かり、スキッド痕の屈曲地点を観察すると、衝突地点を推定できます。衝突地点のスキッド痕の長さの測定で、急性動開始時の速度を推定します。衝突時の衝撃によるスキッド痕を観察すると、衝突地点と衝突直後の進行方向を推定します。
ヨーイング痕とピッチングとローリングの違い
ヨーイング痕とピッチングとローリングはどうちがうのでしょう。それぞれの違いを解説します。
ヨーイング痕
ヨーイング跡は、ヨーマークとも呼ばれ、タイヤが偏走しながら路面に残すスリップ痕です。交通事故の際のタイヤ痕やブレーキ痕の事です。
ピッチング
ピッチングは、車体の左右を軸にした回転運動の事です。ブレーキを踏んだ際に、車体が前のめりになり、ブレーキを離すと反動で車体の後部側が沈み込むシーソーのような挙動を言います。傾いた角度をピッチ角、変化の速さをピッチ角速度と言います。
ローリング
ローリングとは、カーブを曲がる際、車体が片側に傾くような車体の前後を軸にした回転運動の事です。ロールとも呼ばれており、傾いた角度をロール角、変化の速さをロール角速度と言います。
ローリングは、車の運動特性と密接に関係しており、適切に調整する必要があります。ロール角が大きすぎると操縦性が悪くなり、ロール角が小さすぎると曲がりにくくなって、操縦性が低下してしまいます。
ヨーイングの計算方法
ヨーイング痕の元になっているヨーイングの計算方法を解説します。
車
ヨーイングは、車の重心を中心に車体を上下に貫く軸、すなわち、Z軸まわりの回転モーメントの事です。回転モーメントは、出っ張りの重さ×出っ張りの長さで決まります。
出っ張りとは回転軸の中心であるZ軸から離れているものなので、エンジンなどの重量物はできるだけ車体中心に集めた方が小さなきっかけでヨーが発生し、小さな力でヨーが収束しますので、アジリティが高く運動性能に優れます。
バイク
バイクのヨーイングは、エンジンから真上に伸びるZ軸を中心とした回転挙動になります。
バイクのその他の振動モード
バイクには、ヨーイング以外の振動モードがあります。
ピッチング
バイクのエンジンから、前輪の手前あたりまでの軸を中心とした前後回転挙動です。
ローリング
バイクのエンジンから、後輪の中心を走る軸を中心にした、左右回転挙動です。
バウンジング
ヨーイングと同じ軸方向の上下の動きのことです。
ウォブル
高速走行時に発生するステアリング廻りの振れです。
ウイーブ
ヨーイングとローリングの連性挙動です。
シミー
ステアリングが細かく揺れ、スロットルを絞り、惰性で走る場合に発生します。
チャタリング
フロントタイヤが細かく跳ねる振動です。断続的にグリップを失っている状態です。
キックバック
連続ギャップで蓄積されたエネルギーが開放され、けり返される事象です。
自動車やバイク以外のヨーイング
自動車やバイク以外でも、ヨーイングが起こる乗り物があります。
飛行機
飛行機がヨーイングを制御するには、方向舵を使います。方向舵のみで旋回を行うと、横滑りの危険が生じるため、実際に飛行機が旋回を行う場合は、旋回方向のローリング、機体が傾いた状態からのピッチングを併せて行います。
そのため、飛行機の旋回には、ローリング、ヨーイング、ピッチングの3動作がすべて関わります。
船のヨーイング
船の場合、主に航行中にヨーイングする場合があります。ヨーイングは、船の剛性や波に対する向きなど、構造的、人的な要素が多くなります。また、船の大きさに比べて、人間は圧倒的に小さいので、船全体ではヨーイングでも、局所的な人には縦揺れのピッチングと横揺れのロールに感じられてしまいます。海に浮かんでいるので、揺れが皆無になることはありません。
鉄道のヨーイング
鉄道におけるヨーイングは、蛇行動といいます。鉄道車両における振動運動で、主に直線部を高速で走行する時に、車体や台車、車軸などが垂直軸まわりの回転振動を起こします。上から見て蛇がくねって進むような運動をするからです。
発生した場合、乗り心地の悪化、軌道や台車・車体への損傷、影響が大きい場合は脱線事故を引き起こすこともあり、高速化の場合は、対策が重要になります。
ヨーイング痕について
交通事故のイメージが強いヨーイング痕ですが、自動車レーサーにとって花形テクニックと言われているドリフトを得るためには、なくてはなりません。
一般に姿勢制御ですべてが決まるのがドリフトです。車体の細やかな挙動一つ一つに気を配らなければいけません。少しでも均衡が崩れてしまえば、ドリフトは完成しないからです。
ヨーイング、ローリング、ピッチングの三つの回転挙動は、重要な役割を占めています。ドリフトしたままコーナーへと突入するロール角とヨー角、そして突入時の加速減におけるピッチ角を完璧に制御できて初めて、完璧なドリフトになります。
ドリフトの練習
ドリフトの練習は、広くてフラットな路面のクローズドコースで行いましょう。ショップの貸し切りなどで、ドリフトの練習会が行なわれている地域もあります。交通事故と関連が強いヨーイング痕のイメージを払拭する良い場所になるでしょう。
練習は、行動では絶対に行わないでください。危険走行で検挙されることもあります。
ヨーイングはレーサードライバーに必須の技術
道路についたヨーイング痕は、事故現場やアウトロー的な人が、わざとつけている印象があります。しかし、ヨーイング痕の元になるヨーイングの技術は、プロのレーサードライバーにはドリフトを得るために、なくてはならない技術です。公共の道路で行うのはいけませんが、行ってもいい場所もありますので、未来のプロドライバーを目指す人は、練習しましょう。
初回公開日:2018年05月19日
記載されている内容は2018年05月19日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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