排気量の計算方法・排気量と馬力・燃費との関係・単位|cc
更新日:2024年08月14日
自動車の排気量って?
そもそも自動車の排気量とは、エンジン内部にあるシリンダー内のピストンの容積を表します。つまり、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを搭載した自動車のみにある動力源となる部分です。従いまして、100%電気モーターで駆動する電気自動車の場合は排気量はゼロです。また、ほとんどの場合、シリンダーを採用したレシプロエンジンを示します。
また現在のところ、電気自動車の場合は、現在の普通自動車の規定では、1000㏄以下の規定がありませんので、軽自動車660cc以下のボディサイズから外れる電気自動車ならば、普通車の1000cc以下の排気量区分に分類されます。
排気量の計算方法
ガソリン自動車の排気量は、エンジン内部のシリンダー容積を示します。4気筒ならシリンダーは4つですし、6気筒なら6つのシリンダーとなります。
また、エンジン内部は、圧縮された混合ガスの爆発力で動作しますので、高温で高圧になります。ですので高い温度にも強い金属の部品が用いられます。
ところで、四角い筒のシリンダーは見たことがありません。これは圧縮ガスが漏れないようにシールするだけでなく、常温から高温になる金属素材の熱膨張も加味した上で、精度を出しやすいというだけでなく、パスカルの原理で圧力はどの面にも同じ力がかかる特性から、圧力に対して強い形状の円筒形が、ピストンには必然であることがわかります。
つまり、円筒形のシリンダーの直径Dと、ピストンのストロークSが分かれば、排気量が求まることになります。円筒形の容積は半径×半径×円周率×高さですので、(D÷2)×(D÷2)×3.14×Sとなります。
もっと簡単にする公式?
円筒形シリンダは、径(ボア)で表すことはあっても、半径で表すことはあまり聞いたことがありません。ですので、その都度、Dの半分が半径で、と計算すると、ややこしい部分がありまして、電卓をたたくにしても複雑で計算間違いを引き起こしてしまいます。
少し計算を簡単にする方法として、「(D÷2)の2乗」の式から「1/2(2分の1)」の部分を外に出してくくると、(D÷2)×(D÷2)×3.14×S=「(Dの2乗)÷4」、あるいは「Dの2乗/4」となって、長かった公式が短くスッキリします。従いまして、「ピストンのシリンダー容積=((Dの2乗)÷4)×3.14×S」、あるいはシンプルに「(Dの2乗/4)×3.14×S」となります。
手で電卓をたたいて計算する場合は、「(Dの2乗/4)×3.14×S」の計算が便利ですが、㎜やcmなど、排気量を計算する際に、値の単位を統一することを忘れないようにしましょう。
車種別の排気量
cx5
数々のグッドデザイン賞を受賞しているマツダのcx5(20s)を例に、排気量を求めてみましょう。エンジンは4気筒のレシプロタイプですので、4つのシリンダーのピストンエンジンを持つ自動車です。シリンダーのボア(径)は83.5mm、ストロークは91.2mmですので、シリンダ容積=((83.5の2乗)/4)×3.14×91.2mm≒499157.32立方ミリメートルです(①)。
4つのシリンダーですので、①を4倍すると、499157.32×4=1996629.28立方ミリメートル≒1996.62立方センチメートルで、およそ2000ccということがわかります。
4気筒エンジンを搭載するCX5(20S)のボア×ストロークは83.5mm×91.2mmです。
出典: http://www.mazda.co.jp/globalassets/assets/cars/pdf/cx-5/... |
RX8
同じマツダの製造する自動車の中にはロータリーエンジンを搭載したRX8があります。CX5のようなピストンシリンダー型エンジンはレシプロエンジンと呼ばれていますが、ロータリーエンジンは、円筒形のピストンがない特殊なエンジンです。ロータリーの名前は、英語のRotary(回転するという意味)に由来しています。
ロータリーエンジンでは、おにぎりのような形をした部品が回転することで、吸引した混合ガスの容積を変化させて圧縮し、イグニッションによる爆発力で回転エネルギーを生み出します。一見すると、爆発したエネルギーをそのまま回転方向に利用できる効率的なエンジンに思えます。
13B-MSP型エンジンを搭載したRX8のエンジン排気量は、654cc×2です。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%84%E3%83%80... |
レシプロエンジンとロータリーエンジンの違いとは?
CX5(レシプロ)とRX8(ロータリー)の排気量
CX5(20S)が2Lの排気量エンジンで155馬力(6000回転)を生み出すのに対して、RX8は654㏄×2気筒=1.308Lの排気量エンジンで250馬力(8500回転)を生み出します。この差を分かり易く比較するのに、排気量1Lあたりの馬力で比べます。それぞれの最高出力(馬力)をそれぞれの排気量で割ることで、1Lあたりの馬力に換算します。
CX5(20S)は、155馬力÷2Lで、1Lの排気量あたりは77.5馬力です。これに対し、RX8は、250馬力÷1.308Lで、1Lの排気量あたり191馬力のパワーを生み出します。このパワーの差はエンジンの仕組みにあります。またCX5のエンジンに比べて、RX8のエンジンはコンパクトで小さく、軽いという特徴も併せ持ちます。
レシプロエンジンとロータリーエンジンの仕組みの違いは?
CX5(20S)に搭載されたシリンダー型のエンジンはレシプロエンジンと呼ばれ、燃料を含んだガスがシリンダー内に入る(吸気)と、シリンダーがストロークしてガスを圧縮し、イグニッションの点火によって爆発が発生し(膨張)、ピストンを押しのけて燃えたカスを排気します。つまり、1サイクルで吸気→圧縮→膨張→排気を行うのがレシプロエンジンです。
一方、ロータリーエンジンは三角型のおにぎりが回転して、吸気→圧縮→膨張→排出を1回転する間に3回も行うことができ、爆発のエネルギーをそのまま回転エネルギーに利用できるので、小さくてコンパクトなエンジンなのにパワーが出るという特徴を持っています。
ロータリーエンジンと2サイクルエンジン
原動機付バイクなども2008年を境に、燃焼効率の良い4サイクルエンジンに切り替わっています。排気ガス規制に厳しい世の中で、2サイクルエンジンが対応できなくなってしまった背景があります。
一方で、マツダがロータリーエンジンを生産できた理由は、4サイクルエンジンでは厳しい排ガス規制に対し、2サイクルのロータリーエンジンは、比較的排ガス規制が甘いという実態があります。また、圧縮比が低く、排気効率の悪いロータリーエンジンは、燃費が悪いという特徴もあります。
いずれにせよ、ほぼ100%レシプロエンジンが主流の現在、小さくてパワーのあるロータリエンジンを作る高い技術を持ったマツダの存在は貴重だと言えます。ところで、自動車税の話となるとロータリーエンジン車は、1.308Lの1.5倍として計算されます。ですので、1.308×1.5=1.962Lで、2Lクラスの車両として扱われるのも残念な点です。
排気量と馬力の関係
排気量が大きければ馬力は上がる?
自動車が、止まった状態から発進するのには、加速するためのトルクが必要です。自転車のペダルをこぐ際に、ペダルを思い切りこぎ出す必要があるのを思い浮かべると分かり易いでしょう。トルクが必要なので、力の出る1速のギヤの力を使って発進した自動車は、1速のままではエンジンがうなるばかりでスピードが出ません。
速度が出れば、2速、3速、4速と、自動車を小さな力のギヤでも、より速い速度で継続して走行することが可能です。継続してエネルギーを生み出す力が馬力とります。馬力はkwやPSで表され、単位時間当たりの仕事量や効率を表します。
排気量が大きくなると、爆発させるガスの容積も大きくなるので、エンジンの出すエネルギーも大きくなり、理屈の上では馬力が出しやすいということになります。効率を示す馬力が上がるので、排気量は大きい方が良いと思うのですが、排気量の増大に伴って、別のデメリットが生じます。
排気量と燃費の関係
馬力を出すのに、より高い効率で多くの混合ガスを圧縮すると、より強力な圧力や爆発力に耐えるように強度を上げようとして、部品自体が大きく厚くなります。排気量の増大によって、結果的にエンジンは重くなってしまいます。
重いエンジンはまた、エンジン自体の重さを支える駆動系やボディの強度も必要になるので、結果的には自動車全体が重くなってしまいます。重い自動車は、排気量に伴う税金増大や重量税の増加の他、走行するタイヤ摩耗の寿命減少や、自動車は止まるための、より強力なブレーキやブレーキパッドの消耗増大など、その影響は多岐に渡ります。
排気量の増加に伴い、車重が重くなると、ある重要なパラメータにも影響があります。それは燃費性能です。
ニュートンの運動方程式と重さ
自動車の重さが燃費に及ぼす影響を知るものとして、地球の重力によって重さを持った物体を、運動方程式で考えてみましょう。
物理法則の一つで、ニュートンの運動方程式「F=ma(F:力、m:重さ、a:加速)」は有名ですが、F=maに見られるように、重さが増えると、発進にも大きな加速が必要になり、より大きな力=大きなパワーが必要なことがわかります。
自動車のエネルギー源は、ガソリンや軽油などの燃料ですから、大きな排気量を持った、大きな自動車は、パワーを出すのにより多くの燃料が必要なことから、結果的に走行燃費が悪いということにつながります。
逆に、軽くて強度のある金属素材を使った自動車、あるいはもともと金属エンジンが必要のない電気自動車は、軽くてパワーのある車であれば、燃費効率が良いということが言えます。排気量が大きいだけでは、せっかく得たパワーを無駄に使用して燃費効率が下がってしまいます。
排気量の単位
排気量は容積ですので、単位はL(リットル)やcc(シーシー)などで表されます。他にも、排気量は容積ですので、例えば1Lの容積は、1辺が10cmの立方体の容積と同じです。つまり1Lは、10cm×10cm×10cm=1000cm3(立方センチメートル)、あるいは1000ccとも表すことができます。
cc
毎年納める自動車税額を決める排気量の単位には「cc」が使用されています。例えば1000㏄以下なら29500円、1500㏄以下なら34500円、2000cc以下なら39500円と定められています(車両により、減税は別途適用される場合があります)。
cc表記を採用している自動車税ですが、特殊なロータリーエンジンの自動車税に、1.5倍のルールがもし適用されていかったら、もともとコンパクトでパワーのあるロータリーエンジンの技術は、もっと世間一般に受け入れられた可能性もあるでしょう。
毎年支払う税金に束縛された減税対象車を選ぶのか、それとも自由なデザインや発想の自動車を選ぶのか、クルマを選ぶ際には維持費という言葉が、排気量に重なって、重くのしかかります。
自動車と排気量と効率
環境を全面に押し出した世の中の流れ
近年のエネルギー環境は、従来のガソリンや石油、LNGガスなどの化石燃料を軸として、原子力エネルギーや風エネルギー、太陽光や地熱を利用したエネルギーなど、その利用効率と環境問題への注目は、より加速して高まっていて、そして広まっています。
自動車業界も、電気とエンジンを共存させるハイブリッドカーや、100%電気自動車など、限られた資源の有効活用と、エネルギー資源の節約思考の波を受けて、その規制も減税という形で、より「お得」な自動車が販売順位を争っています。
ホンダのN-BOXは、軽自動車の排気量で減税100%達成車両ではないにもかかわらず、昨年は販売台数1を獲得しました。その理由の一つは、軽自動車という限られた枠の中で工夫された、クラス最高峰の室内空間の実現でしょう。皮肉なことに、大きく引き離された2以下の軽自動車は、みな減税100%を達成しています。これは何を意味するのでしょう。
消費者が自動車に求めるモノ
自動車に求められる基本性能は「走る」、「曲がる」、「止まる」ですが、環境問題に押された自動車業界に登場する自動車の顔ぶれは、排気量を小さくして自動車税額を抑える傾向や、燃料消費を抑えた低燃費思考の自動車ばかりがひしめき合います。
排気量を含めた自動車のダウンサイジングや、圧縮比を高めることによるエンジン燃料効率の追求とコスト競争の結果生まれた、家電製品のような自動車に欠けているものがあるとしたら、自動車の本能にみられるような「ときめき」でしょう。
それは自動車の燃費以外に求める、移動空間だったり、新しい未来を予感させるものだったり、単純に恰好良いデザインだったり、オーナーとなるドライバーの個性を強調してくれるアイテムでしょう。そうでなければ、色も形も同じデザインの自動車だけで十分なはずです。
モノが溢れる世の中だからこそ、自分らしさを表現する「自由なクルマ」を選びましょう。
初回公開日:2018年02月13日
記載されている内容は2018年02月13日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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