【メーカー別】車の慣らし運転の方法・必要なのか|距離
更新日:2024年11月07日
車種別車の慣らし運転の方法
最近は金属の加工精度が良くなっていて、熱処理技術も良くなっているので、自動車の慣らし運転は必要ないという意見もあります。慣らし運転はした方が良いのか、逆に慣らし運転は必要ではないのか、この疑問の答えを考えるために、まずはエンジンに使用される金属の性質と、NA車よりもエンジンが高温、高圧になるターボ車のエンジンについて見てみましょう。
ターボ車とNA車の違いは?
大きな違いとして、NA車(Normal AspirationまたはNatural Aspirationの略)には過給機がありませんが、ターボ車には過給機があります。いずれのエンジンも高温、高圧になることから金属素材が使われていて、加工して熱処理され、研磨技術によって高い精度に仕上げられたた金属部品が使われています。
過給機の役割は?
NA車エンジンは、自然吸気でエンジン内にガソリンなどの燃料混合ガスを吸い込み、ピストンで圧縮された混合ガスが、イグニッション点火によって爆発し、そのエネルギーを排気する力でピストンを動かして回転力(トルク)と馬力を発生します。
一方、ターボ車はインタークーラーによって冷やされた空気をエンジン排気を利用した過給機(ターボチャージャー)を用いて強制的にエンジン内に送り込み、より大量の空気を含んだ混合ガスをエンジン内へと吸気し爆発させます。空気は冷えると体積が減り、より多くの酸素を含んだ空気を吸気でき、良く燃えますので、爆発エネルギーも大きくなります。
大量の空気をエンジンのシリンダー内に詰め込むためには、より高圧となります。ブースト圧は、この詰め込む圧力の大きさを表します。パスカルの原理に示されるように、単位面積あたり均等に力がかかる圧力は、値が高いほど、金属への負担は大きくなります。
ターボ車の慣らし運転
NAエンジンよりもターボ車エンジンは、排熱を使用するのでNA車よりも高温になり、高圧な上に、より高回転で回転するターボチャージャーを搭載しています。金属は、熱により膨張し、冷えると収縮し、これを繰り返すことで疲労するという特性を持ちます。
水冷方式やベアリング技術の向上によって、現在のターボチャージャー部品の品質は良くなっているとは言えますが、金属にとって急加熱や急回転は寿命低下をもたらす原因と考えるのが自然です。また、最初は初期摩耗によって、エンジン内に金属スラッジが発生する可能性があり、1000kmのフィルタ交換までは、3000回転以下で急発進を押さえた慣らし運転が良いでしょう。
エンジンオイルはエンジン内の潤滑油ですが、ターボ車は高温下でも金属保護の性能が要求されます。3000㎞ごとなどのこまめなオイル交換は、スラッジリスクを減らし、オイル劣化を防いでエンジン寿命を延ばすでしょう。
MT車
MT車の多くは、エンジン回転数を知るタコメーターを搭載し、ドライバーの意のままにエンジン回転トルクとパワーのレンジを、アクセルの開度をコントロールすることで操作することができます。これは、自動車好きにとっては至福の機能です。
でも、エンジン素材の金属特性や性質を考えれば、最初の1000kmオイル交換までのスラッジ除去や、素材が熱になじむまでの間は、3000rpm以下での優しい慣らし運転を行うべきでしょう。
トランスミッションやメタルクラッチを含めて、金属などのメカ部品の反応は人間よりも素直で、優しく運転するようにして、オーナーの愛情を与えた分だけ、自動車の寿命や、ミッションのシフトギヤが入りやすいなどの扱いやすさ、あるいはクセが車に表れてきます。最初の慣らし運転は、その自動車の一生を決めることでしょう。
車の慣らし運転は必要なの?
自動車を製造する自動車メーカーによっても、慣らし運転に対する考え方は異なります。ハイブリッド車で世界をリードするトヨタから、エンジンの慣らし運転は必要ありませんという言葉を聞いたら驚かれることでしょう。では、慣らし運転について、いくつかの例を見てみましょう。
メーカー別車の慣らし運転の方法
昨年でプリウス誕生から10周年を迎えたトヨタに、ラリーで培った技術と水平対向型独自エンジンを製造、販売するスバル。またマツダは、希少とも言えるロータリーエンジンを製造、販売する高い技術力のあるメーカーです。いずれも日本を代表する国産車メーカですが、それぞれの慣らし運転に関する考え方を見てみましょう。
トヨタ
ハイブリッドエンジンを搭載した自動車ブランドとして、トヨタは世界をリードしています。そのトヨタの慣らし運転の考え方を詳しく見てみましょう。
質問:慣らし運転は必要ですか?
出典: http://toyota.jp/faq/after_service/others/0001.html |
回答:慣らし運転の必要はありません。ごく一般的な安全運転に心がけていただければ、各部品のなじみは自然と出てきます。
お客様が新しい車に慣れられるための期間を慣らし運転の期間と考えてください。
トヨタのエンジンは慣らし運転不要?
部品の製造技術の向上を理由に、現在のトヨタは、エンジン自体の慣らし運転は不要という考えを示しています。しかしながら、一般的な安全運転によって「各部品がなじむ」と記載されています。これは、金属でできた各部品がなじむ前の初期段階では、急加速などの運転は、金属部品にとっては好ましくないという考えを示しています。
「慣らし運転」と「なじむ」という言葉は、双方、自動車に負荷を与えないという意味を示していて、エンジンの慣らし運転は必要なくても、部品が「なじむ」ための慣らし運転はしてくださいとも聞こえます。
自動車の特性に慣れるまでの無理のない運転は、ドライバーのマッチングを高めるのにも有効で、マッチングが合わない「チカラずく」運転は、MT車であれば下手な半クラッチによるクラッチ摩耗をもたらし、急ブレーキはブレーキパッド寿命低下につながります。ドライバーの慣らし運転は車の寿命に大きく影響します。
スバル
スバルが製造するインプレッサはラリーでは有名で、別名ボクサーエンジンとも呼ばれる、水平対向型エンジンを採用しています。水平対向型エンジンは、シリンダーとピストンがフラットに配置され、エンジンが低く設置できて重心が低くなるだけでなく、ピストン動作による振動を互いに打ち消し合う特徴を持ちます。
同じく水平対向型エンジンを搭載したスバルのBRZの取説には、4000rpm以下で1000kmまでの慣らし運転をするようにと記載されています。この文面が意図する点は、急な高負荷や、いきなりの高回転を避けた方が良いという思惑が考えられます。
また、2000㎞から3000㎞と、慣らし運転の距離に1000㎞もの差を含んでいることから、2000㎞の慣らしを終えたからすぐ高負荷というのも避けた方が良いという意図も考えられます。慣らし運転をしない高温、急加速、高回転は金属部品の寿命低減につながると考えられます。
・新車の慣らし運転中(1,000km まで)は 4,000rpm 以下で運転してくださ
出典: https://www.subaru.jp/afterservice/tnst/brz/br01/pdf/A440... |
い。
・慣らし運転後はタコメーター(エンジン回転計)のレッドゾーン未満で運転
してください。
マツダのロータリーエンジン
マツダのRX7、RX8 のロータリーエンジンは、レシプロエンジン以上に慣らし運転に注意を払った方が良いでしょう。コンパクトながら高出力を発揮できるロータリーエンジンは、おにぎりのような形の金属製ローターが回転して動力を生み出します。
自動車の多くに採用されているレシプロエンジンに比べて、1回転で3回も吸気、圧縮、点火、排気を繰り返すロータリーエンジンは、加工し易いレシプロエンジンの円筒形シリンダーとは違い、より難しい金属加工と熱処置の技術が要求されます。つまり、よりデリケートなエンジンだと言えます。
だからこそ、取扱説明書に「空ぶかし」、「高回転」、「急発進」、「急加速」という、金属材料の寿命を縮める要因を禁じた内容が記載されているのでしょう。また、構造的にオイルを消費するエンジンとも記載があります。オイルは高温で摺動する金属の摩耗を防ぐ潤滑剤で、エンジンの血液とも言えます。
最初の1000㎞までは次のことに注意して運転してください。
出典: http://www.mazda.co.jp/globalassets/assets/carlife/owner/... |
・空ぶかしをしない
・エンジン回転数を7000rpm以上にしない
・急発進、急加速をしない。
慣らし運転中の「急」と「高」は禁止
いずれのメーカーも、慣らし運転という言葉には、それぞれメーカー独自の考え方がありますが、どのメーカーのエンジンも共通して金属素材で作られています。同じ金属素材なのですから、「なじませる」という意味においては、急発進や急加速などの「急」激な運転や、いきなりの「高」回転や「高」負荷は避けること主張しています。
これは金属素材そのものが持つ宿命とも言えることで、高温下でオイルで潤滑されたエンジンに限らず、駆動部、ギヤ部、ブレーキなど、高温でも常温でも、潤滑と強度が必要とされる金属部品の、温度に対する耐久寿命を著しく低下させないためには、「急」や「高」のつく運転は避けるべきで、これを慣らし運転と言うのでしょう。
ここまでくると、自動車の慣らし運転は必要だという考えが正しいと思われることでしょう。
車の慣らし運転に距離
何キロ?
慣らし運転の目安として、1000km、3000kmという距離が一般的に耳にする言葉ですが、厳密に1000kmちょうど、3000kmちょうどとは定義されていません。しかしながら、最初の1000km点検までは、エンジン内のスラッジ発生のリスクが考えられますので、1000㎞点検でのオイルフィルタの交換は理にかなった考えだと言えます。
しかも、一定の加工精度で作られた金属ピストンが、金属シリンダー内を、高温のオイルで潤滑されながらも膨張した部品が、高圧、高速のエンジン内で摺動するのですから、いかにオイルが重要であるかがわかります。ですから、メーカーとしては、3000kmごとに交換してほしいという考えにも納得できることでしょう。
ですから、ぴったり1000kmや3000kmという距離にこだわるよりも、負荷をかけたら早めのオイル交換、距離を乗ったらエンジン負担を和らげるなどの気遣いが有効でしょう。
自動車は金属のかたまり
人間の感情は複雑で、予想外の反応を示すからこそ相手のことが分からないのですが、金属のメカ部品でできた自動車が示す反応は、オーナーへと素直に返ってきます。例えば、全くオイル交換しないで、エンジンスタートでいきなり全開の運転を繰り返していたら、燃費が低下するどころか、すぐにエンジンブローで廃車という結果だってあり得ます。
逆に、こまめなオイル交換は燃費の低下を防ぐだけでなく、柔らかくて潤滑性能の高いオイルを入れてあげると、無理なく高回転までスムーズにエンジンが吹き上がるだけでなく、高回転時のエンジン騒音や振動が小さいことを感じることができます。
特にMT車を運転すれば、慣らし運転を行うオーナーの性格を、愛車は素直に受け継ぎます。エンジンを気遣って慣らし運転を行った車と、そうでない車では、金属部品の素直さを継承して、色々な症状として表れます。
慣らし運転と暖機運転の必要性
金属部品にとって、高温に「なじむ」ための慣らし運転は、自動車の寿命に影響することがお分かりいただけたでしょう。でも慣らし運転を終えたからと言って、いきなりの高負荷も避けるべきです。これまで慣らし運転は、エンジンとオイルのみが重要だと思われていたかも知れませんが、それだけではありません。
寒い冬場、エンジンスタートした後、エンジンとオイルは徐々に温まり始めますが、トランスミッションのギヤ内にも冷えたオイルが満たされています。タイヤに動力を伝える駆動軸のベアリングも冷えています。エンジンの暖機と共に、ゆっくりと自動車の駆動系部品の暖機も行うべきです。ゆっくりと走行して温めるべきです。
愛車の暖機が整ったら、エンジンの唸りや駆動系の声を感じて、自動車の運転を楽しみましょう。
初回公開日:2018年02月22日
記載されている内容は2018年02月22日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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