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【メーカー別】ディーゼルエンジンのある軽自動車・かかる維持費

更新日:2024年01月03日

ディーゼルエンジンの軽自動車について、その魅力や可能性、また、気になる維持費などを解説します。の軽自動車は、現在では排気量や最高出力に規制が設けられ、魅力がスポイルされています。その弱点を克服するアイディア、ディーゼル軽自動車の耳寄りな情報を招介します。

【メーカー別】ディーゼルエンジンのある軽自動車・かかる維持費

メーカー別ディーゼルエンジン搭載の軽自動車

国内の自動車市場では、軽自動車が相変わらずのぶりです。現在、最ものある車はホンダの「N-BOX」で、2017年の年間販売台数は、何と22万3449台にまで達したといいますから、普通車、軽自動車を含めてダントツの1位で、そのぶりには本当に驚かされます。

現在の軽自動車は、道路運送車両法により、エンジンの総排気量が660cc以下、最高出力64馬力以下と定められています。そのため、総排気量1,000cc以上のエンジンを搭載する、普通車のコンパクトカークラスに比べて、走行性能や快適性で大きく見劣りしてしまうという現実があります。

軽自動車は普通車に比べて、税金面などの維持費が格段に安く、経済性の高さから大となっていますが、日本では法による規制があるために、軽自動車の持つせっかくの魅力や、将来への可能性が制限されてしまっています。

軽自動車+ディーゼルエンジンの可能性とは

それでは、現在の法規制のままで、軽自動車の持つ魅力をより高める方法はないでしょうか。そこで、大きな話題となっているのが、ディーゼルエンジンを搭載した軽自動車です。

ディーゼルエンジンは、ガソリンよりも価格の安い「軽油(けいゆ)」を燃料とするエンジンです。その上燃費が良く経済性の高いエンジンとして、近年、注目が高まっています。

またディーゼルはエンジンの力強さを示す「トルク」の大きさで定評があり、その実力は、世界で過酷な自動車競技、ル・マン24時間レースで総合優勝を遂げたレーシングカーにも使われるほど優秀で、軽自動車のパワー不足を補うのに打ってつけのエンジンです。

そのようなディーゼルエンジンの軽自動車について、その魅力や可能性、また、気になる維持費などを解説していきます。

軽油を燃料に使うディーゼルエンジン

セルフのガソリンスタンドへ行くと、給油機には「レギュラー」「ハイオク」「軽油(けいゆ)」と、三種類の給油ノズルが並んでいます。

そこへ、自動車の知識が乏しい軽自動車のユーザーが、「軽油と書いてあるから、軽(自動車)用の油ということですね」と、見たそのままに思い込み、愛車の、ガソリンエンジンを搭載した軽自動車の、燃料タンクに軽油をいれてしまい、おかげで車の調子が大変悪くなってしまったというのは、ただの笑い話ではなく、実際に起こっている話です。

軽油とは、軽自動車ではなくディーゼルエンジンに使われる燃料のことで、ガソリンよりも安く製造できる分、価格は安いですが、軽油はガソリンよりも燃えにくい燃料のため、ガソリン車に軽油を入れるとエンジンがきちんと働かず、エンストなどのトラブルを起こしてしまいます。

ディーゼルエンジンって何?

ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンと比べて使用する燃料の違いだけでなく、構造上に大きな違いがあります。

まず大きな違いは、燃料への着火方式です。ガソリンエンジンでは、燃焼室内でピストンが「燃料と空気(混合気)」を圧縮し、そこへ、点火プラグ(スパークプラグ)が電力により、火花を飛ばして燃料に着火し、燃焼を行います。

しかし、ディーゼルエンジンでは、この点火プラグなどの着火装置がありません。ディーゼルエンジンはガソリンエンジンと異なり、燃焼室内でピストンが「空気のみ」を圧縮します。

ピストンにより圧縮された空気は熱を発生するため、燃焼室内の温度が上昇します。そこへ、シリンダーヘッドに設置された「インジェクター」と呼ばれる噴射ノズルから、燃料の軽油を噴射して、それが燃焼室内の高温高圧によって自然着火することで、エンジンの燃焼を行います。

パワフルな秘密は圧縮比が高いため

ディーゼルエンジンはガソリンエンジンとは違って、「気体は圧縮されると熱を発生し、高温になる」という原理を応用して、ピストンにより圧縮され高温になったところへ燃料を噴射して自然発火させるエンジンです。その分、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べて、高い圧縮比が設定されています。

圧縮比とは、ピストンが燃焼室内で空気を圧縮する強さを現す数値で、圧縮比が高いほど、より強い圧縮力を得られるため、その分、燃焼によるエネルギー量も大きくなり、パワーアップになります。

つまり、圧縮比が高いエンジンほど、エンジンの力強さを示すトルクの数値が高くなり、低回転域からパワフルなエンジンとなります。

ターボチャージャーとの相性が抜群

ディーゼルエンジンはピストンが空気のみを圧縮し、燃料を自然着火するその仕組みから、圧縮熱による燃料の異常燃焼が原因の、ノッキング現象などの問題が少ないことから、より高い圧縮比の設定が可能です。

それは同時に、ターボチャージャーなどの過給機を装着した場合に、ブースト圧(過給圧)のかけすぎによるエンジンブローの心配が少ないため、シリンダー内により多くの空気を送り込むことができ、パワーアップが期待できることから、ターボチャージャーの効果を十分に引き出すことができます。

最近流行の軽自動車用ターボエンジンでも、ディーゼルエンジンを使用して開発すれば、エンジンの低速域からのトルクアップが期待でき、おそらく軽自動車の欠点である、不十分な走行性能が改善されるでしょう。

燃焼効率がよく燃費に優れる

ディーゼルエンジンは圧縮比が高いために、燃焼効率に優れているというメリットがあります。燃焼効率とは、エンジンにより燃焼された燃料に対して、発生したエネルギー量の割合です。

圧縮比が高いほど、同じ量の燃料でもより大きなエネルギーを発生でき、また逆に、圧縮比が高くエンジンの燃焼効率が優れていると、それだけ少ない燃料で同等のエネルギーを獲得することができるため、結果的に燃費が良いエンジンになります。

さらに、軽油はガソリンよりも価格が安いため、より経済的で、しかも、軽自動車みたいに総排気量の小さなエンジンでは、その優れた経済性がさらに高くなるでしょう。

しかし欠点もあります

このように、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンと比べてパワフルな上、燃費にも優れており、しかも燃料には安い軽油を使うなどメリットが多くあり、現在、市場で大の軽自動車用エンジンとして、素晴らしい可能性を秘めています。

しかし、ディーゼルエンジンにはメリットだけでなく、欠点もあります。

頑丈な造りが必要なためエンジンが重い

ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べて高い圧縮比の設定が可能なために、燃焼効率に優れていますが、逆に考えれば、燃料への着火を点火装置なしに、燃焼室内の圧縮熱によって自然発火させる仕組みにより、燃料が着火するには、ガソリンエンジンの場合よりも、かなりの高圧縮が必要になります。

そのため、ディーゼルエンジンでは、燃焼室内の高圧縮に耐えられるよう、シリンダーブロックや燃焼室などより頑丈な構造が必要で、結果的に重量が増え、エンジンが重くなってしまいます。

環境への影響では課題が多い

次に、高圧縮のディーゼルエンジンは、熱効率に優れる反面、ガソリンエンジンに比べて、燃焼によって発生するNOx(窒素酸化物)や、PM(微粒子状物質)が大量に発生するため、以前より、ディーゼルエンジンの排気ガスによる環境への影響が指摘されています。

ディーゼルエンジンは製造コストが高い?

ディーゼルエンジンは、点火装置やスロットルバルブなどが不要のため、ガソリンエンジンに比べて構造が単純で、その分安く作れるかに見えますが、そうではありません。

まず、ディーゼルエンジンでは、圧縮過熱した空気に燃料を噴射して自然発火させるため、ガソリンエンジンに比べて安定した燃焼が難しいという性質から、燃料を噴射するインジェクターに複雑で高度な制御が要求されるため、非常に高価な燃料供給システムが必要となります。

特に、最近では、年々厳しくなる排出ガス規制をクリアするために、排気ガス中のNOxやPMの量を減少させる、コンピューター制御の高圧式多孔インジェクターや、EGR(排気ガス再循環システム)、尿素SCRなどを使用した、「クリーンディーゼル化」が必須となっています。

いずれも、装備するには大変高額なこれらのシステムを、価格の安さがセールスポイントの軽自動車に実現可能かは疑問です。

ダイハツ

ダイハツは、1931年に発売した三輪自動車「ダイハツ號(ごう)」で、発動機メーカーから自動車製造業界へと参入します。そして1957年には軽三輪車の「ミゼット」を登場させ、大ヒットとなります。

ミゼットに搭載されたのは、総排気量249ccの、空冷2サイクル単気筒ガソリンエンジンで、当初は自転車によく似たバーハンドルを採用し、またドアもなく、自動車というよりも囲いのついた自動二輪車といった雰囲気の車でした。

その後ミゼットは、現代風の丸ハンドルを採用したMPA型に進化しましたが、その後最終型まで、空冷2サイクル単気筒のガソリンエンジンが搭載されました。

ダイハツは1966年に、初の四輪乗用車「フェロー」を登場させます。エンジンはミゼットと同じ2サイクルですが、総排気量は360ccで二気筒へと進化し、その後550ccにまでアップされ1980年まで販売されました。

ダイハツではディーゼル軽自動車の販売はない

ダイハツは現在も、乗用車から商用トラックまで、いろいろな軽自動車を販売していますが、いずれもガソリンエンジンで、ディーゼルエンジン車を販売したことはありません。

マツダ

マツダは、過去に「キャロル」「シャンテ」という魅力的な軽自動車を販売していました。

1962年に登場したキャロルは、小さな軽自動車ながら、普通車並みのノッチバックスタイルを持つセダンで、その素晴らしいデザイン性は、車が憧れの存在だった当時の人たちの心を惹きつけました。

キャロルは、1959年に登場したフォード・アングリア(ハリー・ポッターに登場した車です)を参考にした、クリフカットと呼ばれる、垂直に切り立ったリアウインドウが特徴で、高級感のあるデザインの軽自動車です。エンジンは358ccの水冷4ストローク直列4気筒、ガソリンエンジンでした。

シャンテは、1972年に登場した、スポーティーな昆虫っぽいデザインの軽自動車で、何とロータリーエンジンが搭載されると噂された車です。しかし、残念ながらその夢は叶いませんでした。

マツダもディーゼル軽自動車の販売はない

マツダは現在、軽自動車製造から撤退していますが、過去にディーゼルエンジンの軽自動車を販売したことはありません。スカイアクティブディーゼルが話題のマツダだけに、今後の動向が期待されます。

ヤンマー

農業用トラクターや船舶用ディーゼルエンジンでおなじみのヤンマーから、何とディーゼルエンジンの軽自動車が販売されていました。その名も「ヤンマー・ポニー」です。

ポニーは、ヤンマーが1960年に発売した、ディーゼルエンジン搭載の軽トラックで、総排気量360ccのV型2気筒のディーゼルエンジンを搭載し、最高出力はたったの9馬力とかわいらしいものの、燃費は1ℓ当たり、何と35㎞も走行可能という、ハイブリッド車並みの低燃費といいますから驚きです。

ヤンマー・ポニーは、ライバル社に押されて販売は振るわず、わずかに650台を生産したのみで終了しますが、前例のないディーゼル軽自動車を販売した功績は、素晴らしいでしょう。

ポニーは現在、滋賀県長浜市のヤンマー本社に展示されています。

スズキ

軽自動車のスズキから、軽自動車ファンには耳寄りな話があります。何とインドで販売している小型車用に、800ccのディーゼルエンジンを開発し、現在販売中だといいます。

注目の小型ディーゼルは、総排気量793ccの直列2気筒、何とターボチャージャー付きで、最高出力46.6馬力、最大トルク12.7㎏・mとなっており、あと140ccだけ排気量を下げれば、軽自動車にも採用可能で、これは大いに期待したいところです。

しかし、スズキによると、国内市場への導入予定はないとの事です。

ディーゼルエンジン軽自動車の維持費について

軽自動車は普通車に比べて、自動車税などの維持費が格段に安くなっています。

普通車で自動車税が最も安い、エンジンの総排気量が1000cc以下の車では、年間の税額が2万9,500円です。これに対し、軽自動車では7,200円で、なんと2万2,300円もの価格差があり、その安さが魅力で、現在、国内市場で大です。

これにディーゼルエンジンの燃費の良さと、パワフルな走りがプラスされれば、ますます経済的でお得感の強い車となるでしょう。

ディーゼルエンジン軽自動車の燃費について

現在までに、市場で販売された軽自動車のうち、ディーゼルエンジンを搭載した車は、1960年に登場した「ヤンマー・ポニー」ただ1台のみで、その燃費性能は、驚愕の1ℓ当たり35㎞です。

現在、軽自動車の中で最も燃費が良い、スズキアルトが29.6㎞/ℓですから、しかも1960年代に販売されていた車がこの数値とは、ディーゼルエンジンの燃費には本当に驚かされます。

軽自動車ファンなら、ヤンマー・ポニーに一度乗ってみたいでしょう。

ディーゼルエンジンの軽自動車は存在しない?

ディーゼルエンジンの軽自動車がなぜ登場しないのかは、いくつか理由があります。

小排気量ではディーゼルのメリットがない

現在の軽自動車用エンジンは、総排気量660ccの3気筒、つまり1気筒あたり220ccのエンジンとなっています。ディーゼルエンジンでは、この小さな排気量が大きな課題となります。

ディーゼルエンジンでは、1気筒あたりの排気量が小さいと燃焼室の温度が下がりやすく、
圧縮比を上げても燃焼効率が下がってしまい、結果的にパワーも燃費も下がり、ディーゼルエンジンのメリットが無くなってしまいます。

エンジンからの振動が大きい

それでは、3気筒ではなく2気筒にすれば1気筒あたり330ccですので、熱効率が良くなりますが、2気筒エンジンは振動が大きいため、快適性が大きく損なわれるため、車選びに目の肥えた、日本のユーザーにはとても受け入れられません。スズキがインドで販売している、2気筒の800ccディーゼルエンジンを日本で販売しないのはそのためです。

コスト面で価格との折り合いが着かない

その他に、製造コストの問題があります。ディーゼルエンジンはその仕組みから、排気ガスに含まれる有害物質の量が多いため、厳しい排気ガス規制をクリアさせる「クリーン化」が必須です。そのために必要な、ピエゾ式高圧インジェクターやEGR、尿素SCRといった装置はどれも高価なため、軽自動車に装備するには、価格面での折り合いがとても着きません。

ディーゼル軽自動車の実用化は難しい?

ディーゼルエンジンの軽自動車について、その魅力や可能性、また、気になる維持費などを紹介しました。

その経済性の高さから、軽自動車が大ですが、現在では、法律による規制のため、走行性能や快適性が低く、魅力が半減しています。そのような、軽自動車の弱点を克服するアイディアが、ディーゼルエンジンです。

ディーゼルエンジンはハイパワーと燃費の良さが売りで、軽自動車の魅力を確実に高める方法といえます。しかし、現在まで、ディーゼルエンジン軽自動車が販売された事例は、わずかに1車種のみです。

その理由は、ディーゼルエンジンが小排気量には合わないこと、振動が大きい、さらに環境基準をクリアするにはコストが高すぎることなどです。

ディーゼル軽自動車には課題が多いですが、近年の自動車技術の進歩にはめざましい物があります。あなたも軽自動車ディーゼルの未来に、ぜひ注目しましょう。

初回公開日:2018年04月16日

記載されている内容は2018年04月16日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

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